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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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レインの勇者育成スパルタ指導?⑩

 リウに転移してもらったレインは、天界に降り立ちきょろきょろと周囲を見回した。

 落ち着いた、シックな家具が置かれたその場所は、とうに見慣れたディライトの部屋だ。

 机の上には既にコップが二つと、果実酒の入った酒瓶がいくつか、果物類やディライトが作ったのであろうおつまみになりそうなお菓子やちょっとした料理が置かれている。


「やった、至れり尽くせりだ。食べていい? お酒注ぐよ」

「喜んでくれて何よりだけど〜……食べていいか聞くより先に、言うことがあるんじゃない?」

「あっ、ごめん、美味しそうでつい……ふふ、わざわざありがとう! 僕のこと見てたの? それでこんな準備を?」

「そこそこ深刻そうな顔してたからね〜。レインくんが変に暴走して困るの、レインくんだけじゃないし〜。早めに対応するに越したことはないでしょ〜?」


 ディライトはそう言って笑うと、レインの背中を軽く押してソファーに座らせた。

 暴走されても困るし、とりあえず話してみろということらしい。

 なんだかんだ、友達としていつも気に掛けてくれるディライトに、レインは嬉しそうにしながらコップにお酒を注ぐ。


「乾杯。……ん、おいし……なんか前より美味しくなってない?」

「ちょこちょこ改良してるからね〜。それで? 深刻そうな顔してたのは……」

「あっ、そうそう! なんか最近、昔に戻ってる感じがしてちょっと気持ち悪いんだよ。自分を追い詰めすぎる……のかなぁ。暴走とかするほど理性がないわけじゃないんだけど、疲れてるのかどうにもね……しかも、鈍ってるし。いや力が鈍るのは別にいいんだけど……気の緩みは大問題だよね」


 はぁ、とレインが溜息を吐いてコップに口を付けた。

 ディライトは静かな表情でそれを眺め、首を傾げる。


「気の緩みねぇ〜……そんなの、気付いたなら後は気を引き締めるだけじゃない〜?」

「そうなんだけど、なんか……変だなぁって。同居人ができて、気を引き締めないわけないのに……」

「え〜? 変な精神干渉とかは無いけど〜……」

「とにかく昔に戻ってる感じがほんっとうに気持ち悪い。気味が悪い……精神干渉じゃないんだ……もしかしたら、ディライト関係で変な神に狙われてたりするのかなぁって思ったんだけど」

「疲れてるんじゃない〜? 異世界から勇者になっちゃった子来て、慎重に接してるのにそれを悟られないようにしたりとか〜……ず〜っと気配ってるよね〜」


 ディライトにそんな指摘をされて、レインが口を噤んだ。

 直接言いはしないが、そこまでしなくても、と思ってくることがありありと伝わってくる声音をしていて、レインは困った表情になる。

 そうは言っても、ユウはまだ幼い少年で、こんなことに巻き込まれるべきではなかったと、レインは思うのだ。

 だから、大人として、〝勇者〟の先輩として、ユウが苦難の道を歩かないようにレインは道を整えてあげなれば。


「……不満に思ってる顔してるけど、ボクはそれがダメなんて言ってないよ。ただ、やりすぎって言ってるだけ」

「やりすぎ? ……やりすぎかなぁ……そんな自覚は無いんだけど……」

「自覚が無いからこうなってるんじゃないの〜? ……えっとね〜……異世界から来た子どもだし、慎重に対応しなきゃっていうのはわかるよ〜? 色々気を張って、気を配って……慣れない環境の中で、少しでも負担を減らそうっていうのは、凄く良いことだよね〜」


 ディライトは少し軽い口調でレインの行動を肯定してから、そっと目を眇めた。

 深刻そうなレインの表情は気に掛かっていたから、これまでずっと観察していたのだ。

 それは、そうした行動により気付いたこと。


「でも、レインくんはそれを意識してばっかりで、自分を蔑ろにしてる。自分のことは後回しに、なんて次元じゃないくらいに」

「……ね、ねぇ、ディライト? これ、怒られる流れじゃ……」

「レインくん、誰とでも友好的に接するけど、誰にでも心を開くかって言ったらそうでもないでしょ? むしろ、表に出さないだけでその辺りのラインは、結構はっきりしてるタイプだと思うんだよね〜」

「ねぇ、僕、ただ愚痴とか聞いてもらおうと思って……」

「レインくん、あの子ども以上に心開いてないでしょ」


 しどろもどろになりながらディライトを止めようとしていたレインが、その言葉にぴたりと口を閉ざした。

 レイン自身が、ユウに対して心を開いていない。

 そんな風に指摘をされたレインは、少し俯き、目を伏せる。


「……そう……なの、かな。心を開いてない……でも、僕は大人で……そんなことは置いておいて、子どもに対しては優しく……」

「心を開いてないのに、大人としてっていう範疇を超えるくらい気を遣ってるってこと。……心を開いてないどころか、警戒してるんじゃないかってボクは疑ってるよ〜……疲れるのはしょうがないけど、その辺改善しないとすぐこうだよ〜?」

「警戒……うーん、幼すぎて恋敵になりそうにないし、勇者同士だから敵なわけないし……自分で自分がわからないよ……」


 心を開いていない、というのはわかる。

 レイン自身、これまでの長い人生の中で、人の悪意にはたくさん触れてきたから、ちゃんと心を開くのに時間がある節はあるからだ。

 リウに関わる人たちならその限りではないが、ユウはその例外には適用されない。

 だが、警戒というのは、レインにはよくわからなかった。


「単純な話……将来的に絶対にリウちゃんと戦うことになるからじゃないの〜? そのせいで無意識に、変にピリピリしてるんじゃないかな〜」

「……ねぇ、ディライト? もしかして……僕の自覚してない感情まで全部見抜いてて、知らないふりして話してた……? だとしたら、やっぱりこれ怒られ……」

「……。……だって〜、自分で気付けるならそれが一番でしょ〜? 残念ながら、レインくんはできなかったけど。くふふっ……仕方の無い部分に言及するつもりはないけど、それらぜ〜んぶ気の緩みと疲労で片付けようとしてたことに関しては、ちょっとお話しないとね〜。いくらなんでも、自分に目を向けなさすぎだね〜。ご褒美はいくらでもあるから、ちゃ〜んとボクの話聞いてね〜」


 ディライトはゆったりとした声でそう言うと、笑顔でレインへのお叱りを開始した。

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