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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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レインの勇者育成スパルタ指導?⑤

 三人が屋敷の玄関に足を踏み入れると、ふわりと宙に浮かぶ少女が出迎えてくれた。

 もちろん、レイシェである。


『お帰りなさいませ、お兄様。それから、レアちゃん……ようこそ、我が家へ。貴方様は、噂の異世界から召喚されたというユウ様ですわね。歓迎いたしますわ、これからよろしくお願いいたします! わたくし、お兄様の妹のレイシェと申しますわ! 気軽にレイシェとお呼びくださいまし!』


 最初は丁寧に挨拶をしていたレイシェだが、徐々に耐え切れなくなり、最後には綻ぶような笑顔が溢れ出した。

 とても可愛らしい姿だが、レインは素直に微笑ましいと思うことができず、一瞬言葉を詰まらせる。

 絶対にリウと口裏を合わせている、と。


「……、……ただいま、レイシェ。大丈夫? 変な来客とかなかった?」

『何を言っているんですの、お兄様。変な来客って……心配性が過ぎます。……はぁ、まぁいいですわ……お兄様が変なのはいつものことですわね。ユウ様、どうぞお入りくださいまし。事情は既にお伺いしていますわ。レアちゃんも遠慮せず』

「ねぇ、レイシェ? 今しれっと酷いこと言わなかった? レイシェ??」


 やかましいレインを無視し、レイシェは微笑を浮かべながらレアとユウを屋敷の中に招き入れた。

 騒いでいても無視されるだけのようなので、レインは仕方無くレイシェの隣を歩く。

 レイシェは既に案内を受けているようだが、レインはこの屋敷の存在もついさっき知ったばかりなので、はぐれたら迷ってしまう。


「レイシェ? ねぇ、無視しないで……」

『お客様の前なのですから、もう少しちゃんとした振る舞いをしてください。……さて、ここですわ。お二人は、客室にて少々お待ちくださいましね。お兄様は、わたくしと一緒に。一緒にお茶を淹れてきますわ、すぐに戻ります』


 レイシェは頭を下げてそう言い、二人の反応を確かめてからレインの手を引いて部屋から出た。

 レインは、部屋の扉がしっかりと閉まるのを確認してからレイシェを見て、その手を握り締める。


「レイシェ……ここ何!? 僕何も知らないんだけど……!?」

『ここは……リウが密かに用意してくださっていた、わたくしのお屋敷ですわ。お兄様と喧嘩をした時なんかに使ってもいいし、お兄様のことが鬱陶しくなったら移り住んでもいいと……』

「やめて、引っ越さないで、僕にはレイシェがいないとダメなんだよ……これからも一緒に住もう……? ね……? ちゃんと仕事も家事もするからぁ……」

『まぁ……ふふ、それはそれは……いい言質を頂くことができましたわね。忘れず心に留めておきますわ。それで……あの子をここに住まわせると、そういうお話でよろしいのですわね? 急ぎだったものですから、わたくし、詳細までは存じ上げないのですけれど』


 レイシェが可愛らしく首を傾げてそう訊ねると、レインは苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。

 別に、ユウはいい子のようだから、一緒に住むのは苦ではない。

 だが、問題はリウの方だ。

 何をしようとしているのかはわかる――というか、わかるからこそ、レインは不安なのだ。


「別にリウは、悪いことを企んでるわけじゃないけど……ほんと、たまにやらかすから……楽しんで戦えるかもって思ったら、こう……暴走しかねないというか……ああ、心配でしょうがない。本当に鍛えていいのかな……助けてレイシェ……」

『……確かにリウは……時々、とんでもないことをやらかすお人ですわね。……お兄様から言うと反感を買うでしょうから、わたくしからそれとなくリウに伝えてみます。珍しいことが起きていますが、どうか冷静に……と』

「ありがとう、レイシェ……また今度、一つおねだりを聞くね。何がいいか考えておいて」


 レインはレイシェの頭を撫でながらそう言うと、ちらりと扉の方を見た。

 レアがユウにゆっくりと状況の説明をしてくれているので、あちらは任せて良さそうだ。

 心労が凄まじかったりするかもしれないので、リウにレアにご褒美を、と伝えておくべきか、なんてことを考えつつ、レインはレイシェに視線を戻した。


「……今はあんまり時間を掛けられないな。道中で詳しい説明をするから、紅茶淹れに行こうか」

『わかりましたわ、お兄様。……このお屋敷、落ち着かなかったりはいたしませんか?』

「ん? 大丈夫だよ? ……なんで?」

『お兄様は、色々な経験をしていらっしゃいますし……それに、その……』

「……ああ……アージェストリの屋敷に似てるって? ふふ……大丈夫、懐かしい気持ちになるだけだよ」


 レインは微笑みながらそう言い、そっとレイシェの背中を押した。

 レイシェは安心したように頷くと、お茶を淹れにレインの手を引いて歩き始めた。

 茶葉やティーポットがある部屋に到着すると、二人はてきぱきとお茶を淹れて部屋に戻った。

 レアとユウはソファーに座り、ぽつぽつと話をしていた。

 まだ少し、空気が固いようだ。


『お待たせいたしましたわ、どうぞ。まだ少し熱いので、気を付けてお飲みくださいませ』

「お待たせー。レイシェのお茶美味しいよ、飲んで。本当上手だよねぇ」

『……お兄様……』


 ニッコニコでレイシェのお茶を褒めるレインに、レイシェはじとりとした視線を向けた。

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