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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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リアとヴェルジアの結婚式㉒

 ぺらり、ぺらり、リアが天界にて、たくさんの写真を一枚一枚丁寧に捲りながら眺める。

 先日の結婚式で撮影した、大切な大切な思い出たちを見返しているのである。


「……リア? 何してるの?」

「この前の結婚式の写真を見返していました。ヴェルジアもどうですか?」

「ああ……ふふ、そんなに気に入ったんだね。昨日も見返してなかった?」

「……なんですか。ダメならそう言ってもいいんですよ」

「きゅ、急に喧嘩腰にならないで……ただ、微笑ましく思っただけだよ。思い出を、頭の中だけじゃなくて……ちゃんと思い返せることが、そんなに嬉しかったんだなって。……ちょっと、今……後悔もしたけど」

「後悔?」


 後悔することなんて何も思い当たらなかったので、リアは不思議そうに首を傾げた。

 ヴェルジアはゆったりとした動きでリアの隣に腰掛けると、小さく苦笑いする。


「いやね、言ったってしょうがないことなんだけど……こんなに喜んでくれるなら、もっと早くに提案しておけばなぁって。結婚式もそうだし……写真も。……こんな技術、ずっと前から使えたのに……僕はそれを残してこなかった」

「……。……ヴェルジア。形に残らない思い出も、素敵だと思いませんか?」


 リアはそう言って微笑むと、優しくヴェルジアの手を取った。

 ヴェルジアはよくわからないと言いたげに少しだけ眉を寄せ、説明を求めてリアを見る。

 リアは、とても嬉しそうな顔をしていた。


「写真があれば、誰かに思い出を共有できます。それは、喜ばしいことです。……でも……なんでもかんでもこんな風に写真に残してしまえば、二人だけの宝物にしておきたい思い出も、他の人に知られてしまう可能性が生まれます。私たちが見せなくても、事故はあり得ますから。……共有したい思い出もあります。でも……独占したい思い出は、誰にも知られたくありません。だから……後悔しなくても、大丈夫ですよ」

「……でも、共有したい思い出も、これまでにもたくさんあったでしょ?」

「……折角私が慰めてあげているのに、面倒な人ですね。私が大切だからそんなにも気を遣っているのでしょうけど……私の愛を舐めてもらっては困ります。大切な思い出をそう簡単に忘れるわけがないでしょう。ヴェルジアやお姉さまには及びませんが、それができる程度には私も優秀なんですよ?」


 少し怒った顔でリアはそう言い、すっとヴェルジアの唇に人差し指を当てた。

 そして、もぞもぞとヴェルジアの膝の上に乗ると、蠱惑的な笑みを浮かべてみせる。


「ぜんぶ、覚えています。貴方との思い出を、ぜんぶ」

「…………わ、わかった。わかったから、降りて……危ないよ」

「デートの最中にやらかしたヴェルジアの恥ずかしいミスとか、ぜーんぶ覚えていますからね。覚悟してください、私を怒らせたらとんでもないことになりますからね。今までは恥ずかしくて言ってきませんでしたが……白状した今、存分にあれらの材料を使って貴方を叱ることができます」

「お、怒らせないから! ソファーの上で乗らないでって、せめてもうちょっとちゃんと膝に座って!」

「えっ、なっ、す、座るとかそんな恥ずかしっ――ぎゃっ!?」


 ヴェルジアが心配でちゃんと座るか退くようリアに言ったが、言葉の選択ミスによりリアが照れてしまい、案の定バランスを崩して頭から床に落ちていった。

 ぶつかると怪我をしてしまうので、ヴェルジアは焦りながらリアの手を引っ張り、少し引き上げると背中に腕を回し、リアを抱き上げてソファーに座らせた。

 ぶつかる前にソファーに戻されたリアは、真っ赤な顔になってぷるぷると震えており。


「……わ、忘れてください」

「えぇ? 忘れるって……なんか嫌なことしたかな……」

「だ、だって! あんな……その、濁った、汚い声を……」

「そう? ……うーん、可愛かったと思うけど……まぁ、我儘お姫様がそう言うなら」

「……お姫様なんて歳ではありません。うぅ……あんなはしたない声……」

「声よりあの行動の方がはしたないでしょ。あんなことして怪我しかけたんだから、反省はしてね。僕も忘れる努力はするから」


 普通に叱られて、リアはしょんぼりと肩を落とした。

 そして、小さく頷きつつも、ぺしんと軽く、弱くその腕を叩く。

 自分が悪いのはちゃんとわかっているのだが、ヴェルジアにあの悲鳴を可愛いと言われたり、お姫様と呼ばれたりと冷静になると恥ずかしいことばかりだったので、素直に受け止めることができなかったのだ。


「……素直かと思ったら、すぐにツンツンし出しちゃったな。残念……」

「だ……っ、誰の、せいだと思って……結婚式が終わったばかりだから、頑張っていたのに……」

「ふふ、伝わってるよ。少し恥ずかしくても、近付いてきたり照れ隠しの暴力が出そうなのを必死に堪えてくれたり……一度目の結婚式の時とは随分変わったけど、変わらず愛してるよ」

「……ぁ、……あ、あい……わ、私も、あい……あいし……私も同じです……ッ」


 愛してる、とは言えずにリアがそう返すと、ヴェルジアが満足そうに微笑んだ。

 その頬を撫で、ヴェルジアがゆっくりと、いつでもリアが逃げられるようにしながら顔を近付けていく。


「――父様と母様がイチャイチャしっんむぅーーー!!」

「そういう茶々を入れない! 妹ちゃんにこっぴどく叱られたくなければ勉強に戻ろうね〜!? ヴェルくん、こっち見てないで妹ちゃんどうにかして!」


 勉強中のはずのリテアに茶々を入れられ、リアは羞恥心が爆発し、悲鳴を上げながらヴェルジアに殴りかかった。

 そして、ヴェルジアはディライトがリテアを本気で叱る声をBGMに、リアからの攻撃を躱すのだった。


 なお、拳がヴェルジアに当たる直前でなんとかリアは正気に戻ったものの、恥ずかしがって素直にはなってくれなくなったし、リテアは変な茶々を入れた罰として一週間のおやつ禁止と追加の勉強を言い渡されるのだった。

これにて『リアとヴェルジアの結婚式』は終了です、ありがとうございました!

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