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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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リアとヴェルジアの結婚式㉑

「お姉さま♡ 一緒に撮影しましょう♡」


 猫撫で声でリアにそんなおねだりをされ、リウが思い切り頬を引き攣らせた。

 集合写真を撮影してからしばらくが経ち、リウは一旦リアから離れ、撮影の邪魔をしないようにしようとしていたのだが、その直後にはリアに捕まり、写真撮影に付き合わされていた。

 嫌とは言わないが、面倒ではあるのでそう何度も撮るのは勘弁してほしいところなのだが、リアはどうしてもリウと一緒にたくさんの写真を撮りたいらしく、可愛らしくおねだりをしてくるのである。

 妹のことが大好きなリウは、何度やられてもそれに抗えず、写真撮影に付き合うはめになっていた。


「……ね、ねぇ、リア? そろそろ……私以外とも撮ったら?」

「? 撮っていますよ?」

「私とね。私と一緒にね。そうじゃなくってね……こ、このままじゃ、全ての写真に私が映るはめに……」


 リウが顔色を悪くしながらそう言い、頭を抱えた。

 まぁ、リアと思い出を共有できるのは嬉しい。

 嬉しいが、リアやヴェルジアがこの先思い出を振り返る際、全てにリウが写っているというのは、流石に居た堪れなかった。


「……あ、そ、そうだわ! お父様とお母様とは、まだ撮っていないわよね。一緒に撮るのはどうかしら?」

「ああ、そうですね! ……お父様とお母様ったら、心配性なんですから……みなさんに、丁寧過ぎる挨拶回りを……」

「リアがお転婆娘だからでしょう? 日頃の行いよ、私だって開始前に挨拶回りしたもの」

「お姉さまぁっ! もう……」


 姉にも心配され、関わりのある人たちに挨拶回りをされたと聞いてリアが少しだけ拗ねた顔をした。

 そして、近くで会話を聞いていたヴェルジアがふらりとどこかに行こうとしているのを察知し、ガッとその手首を掴む。


「どこに行くんですか? ヴェルジア」

「……怖……いや、僕は邪魔者かなって……ディライトがちゃんとしてるの珍しいし、からかうついでに記念に残しておこうかなって思っただけなんだけど」

「それは後で一緒に撮りましょう。ヴェルジアが嫌なら、写りませんけど……それより! 今は、お父様とお母様と一緒に写真撮影です! さぁ、行きますよ!」

「僕もなんだ……」


 ヴェルジアはそう呟くと、苦笑いしながらも大人しくリアに付いていった。

 リウも、両親となら違和感も無いからと大人しく同行し、レクスとリーベに声を掛ける。


「お父様、お母様。今、お時間よろしいでしょうか?」

「おや、リウにリア……それから、あ〜……ヴェルジア様も。どうかしたのかい?」

「お父様ったら、鈍いんですから! どうしたも何もありませんよ、写真撮影です。折角ですから、思い出を残したいので……一緒に撮りませんか?」

「まぁ、ふふ……いいわね。ええ、撮りましょうか。……リアちゃんったら……ずぅっと、リウちゃんとヴェルジア様を連れ回しているでしょう? ダメよ、少しは休ませてあげないと。ねぇ、リウちゃん?」


 ずっと写真撮影に付き合わされているリウのことを見ていたのか、そんな風に軽くリアのことを咎めてくれたリーベに、リウはキラキラと目を輝かせた。

 そして、ぶんぶんっと首を縦に振ると、リアの手を取ってこの隙に畳み掛ける。


「お母様の言う通りよ! もちろん、リアと一緒にたくさんの思い出を残せるのは、私としてもとっても嬉しいわ。でもね、あなたの思い出が私一色になることは望んでいないし、私はあなたにたくさんの人との思い出を残してほしいの。それに……こうも何度も、連続で写真撮影をすると……私も流石に、気疲れしてしまうわ。写真に疲れた顔をした私が写るのは、リアも望んでいないでしょう?」

「……はい」

「いい子ね。わかってくれたのなら、この撮影が終わったら、一度お姉さまのことを休ませて頂戴。しっかり休息を取ったら、またリアが付き合ってほしい時に声を掛けてくれたら、そのときは応えるから」

「……えっ」


 休息を取った後なら応える、と言うリウにリアはぱちぱちと目を瞬かせた。

 軽めとはいえ、真面目に叱られて、今日はもうおしまいなんて言われるものだと思っていたから、また応えてくれると聞いて驚いてしまったのだ。

 だってリウは、こういうものに積極的になるタイプではないから。


「……いいんですか? また……付き合わせても」

「付き合わせている自覚はあるようで何よりね。今日の主役はリアとヴェルジアだもの、今日くらいはできる限り我儘も聞いてあげる。……ただし、疲れたら休むからね」

「は、はいっ。気を付けます! それじゃあ、お姉さま! えーっと……こちらに来てください! この辺りで撮りましょう!」


 リアはとても嬉しそうにリウの手を取り、近くの写真映えが良さそうな場所に移動した。

 そして、はしゃぎながら、ヴェルジアと相談しつつ全員の立ち位置を決め、最終的にディライトとリテアも呼んで家族写真を撮った。

 リアはその写真をきらきらとした瞳で見つめると、心底嬉しそうにその写真を抱き締める。

 どうやら、とても写真が気に入ったらしい。


「素敵です! 家族みんなが写っていて、幸せそうで――ぐすっ」

「り、リア……!? な、泣かないで。大丈夫、大丈夫……よしよし」

「お姉さまぁ……いっぱい、思い出を残してきます……うぅ〜……そうすれば、きっと……寂しくない、ですよね」

「……うん。ええ、そうね……たくさん、満足するまで撮りなさい。後悔の無いように。時間さえ置けば、私はきちんと応えるから」


 いつか、遠い未来で、きっと写真に写る誰かはいなくなって、写真の光景は再現できなくなってしまう。

 誰が寂しがるのか……それは、リアかもしれないし、ヴェルジアかもしれない。

 あるいは、リウの可能性だってある。  

 それが誰であれ、後悔の無いように――リアはそう言い、笑顔を向けてリウから離れていった。

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