リアとヴェルジアの結婚式⑰
私でいいのかな、とリウは心の中で呟く。
リウはリアのことを深く愛している自覚があるが、リアはリウのことをどれくらい愛しているのかなんて、はっきりとはわからない。
流石に嫌われていると思うほど感情がわからないわけではないが、両親が話すべきところを、姉であるリウが代わって話して喜ぶのかどうかは、リウにはわからなかった。
だが、他ならぬ両親が言うことである。
二人が言うなら信じてみてもいいだろう、とリウは決めて、口を開いた。
「わかりました。リアに喜んでもらえるのか……わかりませんが。やらせて頂きたいと思います」
「リアなら絶対に喜ぶよ。大丈夫だ」
「ふふ……そうね。後で二人と個人的に話す時間も取るし、リウちゃんは何も心配しなくていいのよ。それに、どうせ表立ったものではないからと、結構好き勝手するつもりみたいよ? なら、迷惑さえ掛けなければ、こちらも好き勝手していいでしょう?」
「……そ、そうでしょうか?」
「そういうものなの。別にいいのよ、リアちゃんはそういうのが好きなのでしょうし。……そうと決まれば……リウちゃんは、話す内容を考えないといけないわね。邪魔をしないよう、少し離れていた方がいいかしら?」
リーベがそう訊ねると、リウはふるふると首を横に振った。
そして、可愛らしい笑みをその顔に浮かべて言う。
「いいえ……お父様とお母様がいらっしゃれば、私の考えにダメ出しもしてくださるでしょう。そしてきっと、褒めてもくれる……子どもの頃のようで、とても懐かしい気持ちになれそうです。ですから……ここにいてくださいませんか?」
少し甘えるように、リウがそう言うとレクスとリーベは顔を見合わせた。
そして、優しい表情を浮かべながら頷くと、会場の隅でこっそりと話し合いが開始されるのであった。
◇
所変わって、天界に設置された衣装室にて。
リアが鏡の前に立ち、何度も何度も繰り返し自分の格好を確認していた。
これからリアは、ヴェルジアと顔合わせをする。
そのために、どこかおかしいところが無いか入念に確かめているのである。
お互い、ドレスとタキシードを着て、会場で顔合わせをすることも考えたが、リアは恥ずかしくなって殴ってしまうかもしれないし、ヴェルジアは見惚れて固まってしまい、数分間動かなくなる可能性もあるので、事前にちゃんと顔合わせをしておこう、という話になったのである。
とはいえ、人前での顔合わせでなくとも、緊張はもちろんする。
リアは部屋から出ることができず、ただただ確認作業を繰り返していた。
「……大丈夫。大丈夫ですよ、リア……お姉さまには、たくさん褒められましたし。絶対に似合っていますし、こんなに確かめたんですから、変なところなんてありません。似合っていますよ……大丈夫、大丈夫……」
リアは自分に言い聞かせると、ようやく扉の前に立った。
そして、最後にもう一度深呼吸をすると、ゆっくりと扉を開け、恐る恐るそこから顔を覗かせる。
「リア」
呼び掛ける声が聞こえて、リアは咄嗟に顔を伏せた。
やっぱり自信を持って前を向くことはできなくて、緊張してしまって、リアは目の前にいるのであろうヴェルジアの方を見れなくなってしまう。
例え似合っていなくても、ヴェルジアは笑ったりしないとわかっている。
だが、それでもリアは、前を向けなくて――
「よく見せて」
顔を伏せるリアに、しょうがないなぁとでも言いたげに笑いながらヴェルジアがそう言い、リアの顔を両手で包み込んで上げさせた。
少し顔を赤くしたリアが確かにヴェルジアを見て、不安そうにする。
だが、ヴェルジアはそんなリアに何も言えなかった。
あまりにもその姿が綺麗で、見惚れてしまって、言葉を失ったのだ。
「……ヴェルジア……あの……似合って、いませんか?」
「いいや似合ってる。なんていうか、その、似合いすぎてて上手く言葉が出てこないんだけど……僕の想像の数倍綺麗だよ。こんなに綺麗な人と結婚してるなんて、信じられないくらい……」
「……んっっ……ぐ……!」
リアは思っていたより褒められてしまって、照れ隠しの拳が出そうになったが、ギリギリで持ち堪えた。
片手で拳を抑えたリアは、ゆっくりと息を吐き出すと、改めてヴェルジアを見た。
普段は絶対にしない格好をしていることと、熱っぽい視線が相まって、リアはドキドキして何も言えなくなる。
しかし、リアはなんとか言葉を絞り出し、消え入りそうな声で言った。
「……ヴェルジアも、素敵です……」
「ふふ、そう? 似合ってるかな? こんなの着るの、本当何年ぶりって話だからね……当時のことは今も覚えてるけど……二回目だろうと、堂々と着こなせはしないや」
「細部は違いますよね。装飾が、凄く……その……ご、豪華に」
「……リアを意識してるってこと。わかってて口にしないんだね。ふふ……リアこそ、翡翠色の宝石がたくさん。髪は……植物で編み込みになってるの? 綺麗だね。痛くない?」
「い、痛くなんてありませんよ。ヴェルジアったら……心配性なんですから」
リアはそう呟くと、嬉しそうに小さく笑った。




