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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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リアとヴェルジアの結婚式⑱

 今回行われる結婚式は、身内だけで行う、とても、とても緩いものである。

 形式的なものは一切無し、主催者である二人がやりたいようにやる、そんな結婚式だ。

 ――故に。


「みなさん、見てください! このドレスはヴェルジアの好みに合わせて仕立てたものなんですよ! サプライズで完全に合わせてみました! 素敵でしょう!」


 今日の主役は、手を繋いでレッドカーペットを駆け抜けながら現れた。

 踊るような軽やかさで、くるりくるりと舞いながら、走りながら、リアが招待客たちに笑顔で手を振る。

 ヴェルジアは半ば引き摺られるようにしながらも、その口元には抑えきれない笑みが刻まれていた。


 二人は会場の一番前まで駆け抜けると、笑顔で顔を見合わせた。

 そして、ヴェルジアが最初に口を開く。


「さて……お集まりの皆様。今日は招待に応じていただき、誠に……」

「もう、ヴェルジア! 堅苦しいですよ、今日はそういうのじゃないってさっきも言ったでしょう!」

「……最初くらい、ちゃんとした方がいいかなって……じゃあ、言い直すよ。コホン……」


 リアに怒られて困った顔をしつつ、ヴェルジアは咳払いをした。

 そして、改めて招待客たちを見回すと、笑顔を浮かべて言う。


「今日はわざわざありがとう! 堅苦しいものにするつもりは無いから、楽にしてていいからね。他の人の迷惑にならなければ、寝転がってもいいよ」

「それでは、私たちの二度目の結婚式の開催を宣言します! それじゃあ、そうですね……緩く開催することは早々に決めたので、段取りは一部を除いて、特に考えていないんですが……じゃあ、お姉さま。私たちを祝う言葉をください」


 リアが無邪気な笑みを湛えてそんなことを言うので、リウはちらりと両親を見た。

 あの短時間で、しかも一緒にいたというのに、リアに変更点を伝えられたとは思えない。

 もしかして、というリウの視線に、レクスとリーベは微笑みで応えた。

 最初からグルだった、ということらしい。

 どういった意図があって二人を介したのかは見当も付かないが、ともあれ最愛の妹からのリクエストである。

 姉として、しっかりと応えてやるべきだろう。


 リウはゆったりとした動きで立ち上がると、静かにリアとヴェルジアの前に立ち、優しく微笑んだ。

 慈愛に溢れる表情をしたリウは、ふと表情を崩すと、口元の笑みだけは崩さないまま少し困ったような顔をする。


「ええと……これは、私も堅苦しくしたら怒られてしまうのかしら?」

「えっ……! ……あっ……ええと、お姉さまは……したいようにしてくださって結構ですが……緩くしてくださると、嬉しいです……」

「ふふっ……では、そうしましょうか」


 楽しそうに笑いながらリウは頷くと、ゆっくりと深呼吸をした。

 そして、気分を落ち着かせると、堅苦しくなりすぎないように意識しながら口を開く。


「先ずは……今日、滞りなく二度目の結婚式が開催されるに至ったこと……心から嬉しく思うわ。そして……これが思い出の焼き直しではなく、二度目の結婚式という新たな思い出となることも、本当に嬉しい」


 リウはそう言って微笑むと、一度言葉を区切ってヴェルジアを見た。

 少し不思議そうにするヴェルジアに、リウは口元をまごつかせると、溜息を吐いて言う。


「……ヴェルジア。あなたは……リアが愛する人。リアの、大切な、大切な家族……リアが家族になると決めた人。……リアの家族は、私の家族。あなたは私の義弟だもの……あなたのことも、家族だと思っているわ。……以前は、私にとっては何もかもが唐突で……何も言えなかったけれど。今更かもしれないけど……今日、この場で、言わせてほしい」


 リウはそう言うと、しっかりとヴェルジアの目を見た。

 そして、姉として、はっきりと言う。


「リアを、お願いね。もちろん、私もちゃんと守るつもりではあるけれど……リアのこと、しっかりと守ってあげて。……リアのことを愛してくれて……ありがとう」


 リアから離れるわけではないけれど、言葉にして、託しておきたいと思ったのだ。

 今更な話ではあるが、二人が結婚してからは、ずっとずっとヴェルジアこそがリアが守っていたのだから。

 だから、リアの姉として、ちゃんと言葉にしておきたかったのだ。


「……最後に……私から、二人に祝福を。――これからの二人の生活が、これまで以上に幸福なものでありますように」


 リウは静かに祝福の言葉を紡ぐと、そっと二人と手を繋いだ。

 しっかりと手を繋ぎ、リウは何も言わずに二人の目を見る。

 数秒間、リウはそのまま手を繋ぎ続け、満足すると二人から離れた。

 そして、元いた場所へ戻っていくリウを見送り、二人は顔を見合わせて笑い合う。

 本当に、本当に、リウはリアとヴェルジアのことを大切にしているのが伝わってきたから。


「……ありがとうございました、お姉さま。ふふ……ヴェルジアにしっかり守ってもらいますね」

「……うん。リウに……お義姉さまに認めてもらえてるのもわかったことだし……リア」


 ヴェルジアは悪戯っぽく笑いながら呼び掛けて、そっとリアの顎を掴んだ。

 そして、目を逸らせないようにしながら、笑って言う。


「改めて誓うよ。僕は、例えどんな時でも、リアがどうなろうとも、変わらず愛し続ける」

「……ぅ……っ。……わ、私も……はい。私も、愛し続けます。これからも、ずっと」


 ヴェルジアはリアの返事に微笑むと、軽く手を振ってその手の中に一輪の花を生み出し、花びらで口元を隠しながら、リアに口付けた。

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