リアとヴェルジアの結婚式⑯
指の負傷と体調不良などなどで再開が遅れました!
ごめんなさい!
それから、リウはレイシェやリテア、ディライトと別れ、両親のもとへ向かった。
今日の主役はヴェルジアとリアだが、レクスとリーベだって大事な存在である。
忙しくなるかもしれないから、開始前に話をしておきたかったのだ。
「お父様、お母様。到着していたのですね、心配になって、迎えに行こうか考えていたんですよ」
「おや、それはすまないな。張り切りすぎて、私もリーベも準備に時間が掛かってしまってね……リウは、早めに来ていたみたいだね。落ち着かなかったのかい?」
「……そんな、ことは……ありません」
レクスに落ち着かないことを言い当てられたリウは、ふいっと目を逸らして歯切れ悪くその言葉を否定した。
そして、そろりそろりとリーベに近付いていくと、甘えるようにこっそりと手を繋ぐ。
「あら、レクス……リウちゃんを拗ねさせてはいけないわ。こんなところで、こんなにも可愛くなってしまうんだから」
「拗ねていません」
「ああ、そうね。ええ、リウちゃんは拗ねていないものね。ふふ……」
「すまない、リウ。ただ、私が落ち着かなかったから、リウもそうなんじゃないかと思っただけなんだ。許してくれないか?」
「……許す許さないの話ではありませんが……でも、そうですね。許してほしいなら、普段から仕事はサボらないでください。そうしたら、許します」
ぷいっと顔を逸らしながらリウが言えば、レクスは気まずそうな顔になった。
サボり癖のあるレクスは、自分の助けはいらないとわかると、すぐにサボり出してしまうのだ。
必要な時はサボらないだけマシではあるが、そうではなくとも手伝いなんて不要なんてことはないというのに。
「……最近はサボっていないよ。でないと、リウが手伝うことになるからね」
「最近は、そうですね。レインに重要な書類を触れさせるわけにはいきませんし、そうなると極端にレアに負担が行きますから……お父様の助けが必要ですものね。いつもありがとうございます。……ですが、そうではなく。お給料もしっかりと出しているのですから、その分はサボらずに働いてください」
じっとりとした目をしながらリウが軽くレクスにちゃんと働くよう要求すると、レクスはリーベに視線で助けを求めた。
リウの要求は不当なものではないので、そんな視線は無視されてしまったが。
「……善処する。……あ、ああー……大事な話があるんだ。リウ、聞いてくれないか?」
「大事なお話ですか? ……なんでしょう……?」
自分には特に心当たりが無かったので、リウは不思議そうに首を傾げた。
すると、レクスとリーベがお互いに視線を送り、レクスが口を開く。
「私たちは……リアの両親として、少しだけ話をするだろう? それを……もし良ければ、なんだけれど……リウに譲りたいんだ」
「……えっ」
「伝えるのが遅くなってごめんなさい。私たちもリウちゃんも、お互い忙しくしていたでしょう? だから、中々時間が合わなくて……ああ、もしプレッシャーに感じたり、すぐには内容を思い付きそうにないのなら、もちろん断ってくれていいのよ。強制したいわけではないわ。もしも、リウちゃんが望むなら……というお話。どうかしら?」
二人の提案に、リウはどうだなんて言われても、と困った表情になった。
戸惑いながらリウは眉を寄せ、少し俯きながら質問する。
「どうして……でしょう。お父様とお母様は……リアの大切な両親です。不相応だなんてことは、決してありませんよ……?」
「そうではないんだ。ただ……リウは、私たちよりもずっと長くリアのことを見守ってきただろう? 不相応ではないかもしれないが、一番相応しいわけでもないと、お父様とお母様は思ったんだ。だから、リウがそれを望むのなら、私たちよりもリウがその役目を担うべきだと思ったんだ」
「……私が……」
レクスの言葉を反芻するように、リウは小さく呟いて目を伏せた。
嫌では、決してない。
だが、そうしたいかと言われれば、それはそれで返答に迷ってしまう。
だって、リウはリアのことを、見守ってきてなどいないのだ――少なくとも、リウ本人はそう思っている。
別れを恐れるがあまりリアのことすら拒絶していた自分は、リアがこれまでどんな道を歩いてきたのかなんて、知らないのだから。
だから自分は相応しくないと、リウは思うのだ。
「……私は、やっぱり……」
「ねぇ、リウちゃん。もしあなたなら、リアちゃんに……二人に、どんな言葉を贈る?」
「どんな言葉、ですか。……ええと……今回は、二度目の結婚式という特殊な場ですから。よりいっそう幸せな日々を、共に過ごしてほしい……です。……少し無難な答えだったかもしれませんが、これが私の気持ちで……二人に贈ることができる言葉です」
「ええ……素敵な言葉ね。だけれど……その言葉は、私たちには言えないの。だって、私たちは、あの二人の過去の歩みを、ほとんど知らないのだもの」
リーベはそう言って、優しくリウの頭を撫でた。
そして、優しい言葉で、自分は二人の歩みを知らないという認識を否定する。
「二人が歩んだこれまでの道を……あなたは思い浮かべることができるでしょう? 想像ではなく、思い出として」
「……思い出」
「リウ。私たちには、想像することしかできないんだ。だから……そんな言葉は、薄っぺらくなってしまう。……それを踏まえて、どうだろう。リウはどうしたい?」
もう一度レクスが訊ねると、リウは目を丸くして唇を引き結んだ。




