第96話.価値
「それでは、次は貨幣の話ですが宜しいですか?」
「あぁ、こっちとしては、その話が重要だ」
「では、こちらが既にサンラ代表から伺っていると思いますが、貨幣の見本です」
そう言って、貨幣セットを一つずつ渡す。
「見本と言っても、額から外すと使用できる本物ですけど」
「これは話に聞いていた通り素晴らしいね、いつからシズタミも含めて貰えるんだい?」
「そうですね…、サンラでは造幣部門を新たに作りました。シズタミにも関連した部門を創設願えればと思っています」
「関連というと造幣部門のかい?」
「どのような仕事内容なのだ?」
「簡単に言うと両替ですね」
「りょうがえ?」
「旧貨幣と新貨幣を1対1で交換するんだけど、交換後の旧貨幣は回収して、市場には戻さないように管理するんだ」
「それは大変な仕事だな」
「しかし、りょうがえというのは、何を指すんだい?」
「俺の居た国で昔行われていた両替、こっちで言う金貨に相当するのが大判や小判と言う貨幣で、単位が両なんだよ。1両を小さい単位のお金に替えること、その逆のことを両替と言っていたんだ」
「なるほど…」
「なので、貨幣はサンラ貨幣部門で発行して、それぞれの地区で両替をして、引き渡した新貨幣と同額の旧貨幣はサンラ貨幣部門で回収することになります。あ、偽造貨幣は含まないよう注意してくださいね」
「偽造貨幣が含まれて居た場合はどうすれば良い?」
「両替窓口で、客の使用が発覚したのなら、まずは、使えない事を説明して、それからどこで入手したのか聞き取り。両替後に発覚したのなら、偽造分は正規の貨幣に置き換えて貰う」
「それだと、うちが損しませんか?」
「両替の段階で除外すれば問題ないでしょ、そもそも偽造貨幣を見たことが無いんで何とも言えないけど」
「偽造貨幣は、こういう感じの物です」
「これは…、エステリア王国以外の国で作られた貨幣で、Enyに似せて作られている………。んー、恐らく10分の1程度の価値しかないぞ?」
「え?、じゅ、10分の1ですか?!」
「あぁ、正確な物価差が分からないので想定だけども、最悪はその差額を覚悟した方が良い。なので、この貨幣に関しては一旦10倍必要なことを周知させといて欲しい」
「そ、それでは民が損をするではありませんか」
「そうだなぁ……、どれくらいの割合で広まっているんだ?」
「商会に届けられている物だと、全体の3割ほどでしょうか」
「それじゃ、両替では1回につき全体の3割までを等価で交換。これは一世帯で1回まで。3割を超えた分は10分の1の価値で交換はどうだろうか」
「なぜ制限を設けるのですか?」
「ふむ…、全体の3割までを等価交換として、回数制限は無くしましょうか」
「その方が良いでしょう」
「そうそう、新貨幣への両替は必ず双方で記録を残してください。それと、この告知を以て、シズタミ内では他国の貨幣で直接の売買を禁止してください」
「それでは他国の者はどうすれば…」
「それこそ商会で両替ですよ、要所に設ければ良いと思いますよ?」
「なるほど…、しかし実際の価値がどのくらいの差が有るのか分からないと揉めませんか?」
「向こうは購入のみですか?」
「売っているのを見たことは無いねぇ」
「新しい貨幣に切り替えたから、そちらの貨幣はこちらの10分の1になる、と伝えれば良いんじゃないですかね」
「ふむ」
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