第79話.果実
「流通している食料品の中には果物が入ってないね」
「スグルさん、果物というのは?」
いま、領主の屋敷で、レシカさんとアンナさん、俺とティファ、あと姉妹が食卓を囲んでいる。
今回は姉妹快気祝いだ。
「果物は木に実をつけるんだけど、ここの気候的に何が適しているのかなと思ってさ」
『色々ありますよ』
「どんなのがあるのー?」
妹のほうが好奇心が高いようだ
名前は、こちらの妹がレイネ、姉がネイラ…のはず。
「たとえば、えーと、俺の居た国では、リンゴ、ミカン、ナシ、ブドウ、モモ、サクランボ、レモン、カキ、スモモがあったかな。これが今言った“果実”だ」
「わー、色も綺麗ですね」
「おねえちゃん、ねぇ、ちいさくてかわいいよ」
「本当だね、でも食べても良いんですか?」
「食べ方を教えて下さいますか」
『では簡単な方でお教えしますね』
「果物にも栄養があるからね、作付できれば生産したいところだね」
「育たない物もあるのですか?」
「うん、年間の気温や日照、雨量によって変わってくるんだ。あと、人の手間を要するからね」
「そうなんですか」
「だから、これらの苗を植えて、数年かけて確かめないといけないんだ。他の国で作っているのなら取り寄せでも良いし」
「ところでスグルさん、今どこから果実を出したのですか?」
「ん?、あぁ、俺の間道具からだよ。レシカさんは以前パンを食べたことあるだろう?」
「あれも間道具からだったんですか?!、じゃ、じゃあ、スグルさんは毎日間道具から食べ物を出して食事を…?」
「うん、そうだね」
「じゃぁ、その、今スグルさんとティファさんにお世話になってるネイラさんとレイネちゃんも…?」
「まぁ栄養摂らないといけないし」
「ズルいです!」ビシッと指向けないで
「いやいや、レシカさんやアンナさん、セバスさんも食べてるからね!」
「え?、あ…」
「俺はこの世界とは別のところから来たというのは、レシカさんとアンナさんは知ってると思うけど、だからと言って、全てを変えていくのは無理があるよ」
「今あるものを良くしていく、ということですね」
「スグルさん、別の世界の人?」
「そうだよ。アテラさんに導かれたんだ」
「へぇ、あの婆さんに…!、あ、何でもない。そうなんだ」
「どうしたの?おねえちゃん。これ、おいしいね!」
「まぁ、農工組合の所とも話し合って、進めて見るよ」
「時間掛かりそう?」
「そうだな、俺の国の言葉で、桃栗3年、柿8年ていうのがあるから、長丁場になるだろうな。あー、そこがっかりしない!。野菜の方なら一年毎に食べられると思うから」
「野菜は嫌ですー」
「んじゃ、レシカさんは野菜無しということで、さて、これが野菜の仲間だ。トマト、メロン、スイカ、イチゴ、どう?」
『メロンとスイカは、包丁で割ります。スプーン掬って食べてください』
「わー、いいにおい。あまいー」
「スグルさんの国はすごいのね」
「本当に美味しいですね」
「す、スグルさん、私野菜好きです!好きですから私にもー」
とりあえず甘味となる果物や野菜が好評でなにより。
農工組合に打診してみるかな。
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