第54話.夢?
「アテラさーん、居るー?」
「ア・テ・ラ っさーん」
奥の部屋から話し声が聞こえてくる
「行ってみるか」
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重厚な扉の前に立つ、中が賑やかだな…
コンコン
扉をノックする。
音もなく扉が開かれると、中には───
「よう、スグル殿遅かったじゃないか」
「遅いぞスグル」
え?、なにこれ、え?
「いらっしゃい、スグルさん…て、ちょ、いつぃ痛いたいたい痛いですー」
「あ、ごめん?」
「疑問系で謝らないで下さいよう」
「これは何?」
「これって、この会場ですか?」
「あぁ、俺達は失意と憤怒の中、ここにやって来たのだけど」
「じつは皆さんから、是非スグルさんに挨拶をと懇願されまして」
「そうじゃ、無事に聖堂に運び込まれたようなのでな、それならば、もうあの日常を繰り返さずとも良くなった」
「スグル殿、サンラ領主としてお礼を言わせて貰う。ありがとう」
「え、ここでお礼を言われても、報酬は?、運び損はいやだぞ?」
「スグルさん、貴方には15の貸しgむぐぎぎゅ…、て何するんですか!」はぁはぁはぁはぁ
「どの口が貸しなんていうんだ?え?」
『主、落ち着いて』
「報酬は開業する場所が選び放題じゃろ?」
「誰も居ない場所で開いても意味がないでしょうがー」
「それにお三方も増えて良いじゃろ、ん?」
「別に女性が増えるのは構いませんけど!、なんか嫌じゃないですか、報酬が人っていうのは!。そもそも、この人がキチンとしていれば今回の事は起こらなかったんじゃないんですか?」
バッとアテラさんを指差す
「?」 わたし?
「アテラさんがエステリアに戻りたいと想い続けたのと、送りたいという街の想いが、今回の繰り返される世界が作られたんじゃないんですか?」
「そうなのか?」
「いやワシにはさっぱり」
「そもそもアテラというのは…「「「誰?」」」」
「運んだ石棺に眠ってる人だよ」
「私はここに居ますよ?」
「アテラさんは、あの街で亡くなられてますよね?」
「どこで亡くなったか記憶に無いんですよ?、気付いたらここの管理者になっていたというか…、本当ですよ?」
「スグル殿はどうされたいのだ?」
「え?」
「ワシら万人の魂を救ってくれたことには感謝するが、その人を責めるのは違うんじゃないかの」
「時空を超えて願いが成就されたんだ、それで良いのではないか。それとも、また私らを輪廻の輪から外れた繰り返される日常に戻すのか?」
「95…」
「ん?なんじゃ?」
「この世界に来て、あの街で…、あの街で一月ぐらいしか経ってないのに、95才も年取ったんだよおおお」
「ほほう、つまりあれだな、ワシらは95年も、95回もあの災害と疫病に苦しんだ事になるのう」
「亡くなってはいるが、人生70年とすれば50年ばかしお得だな」
「どうすんだよぉ、ギルド証で120才なんて…俺まだ25なのに………」
「色々あるが、悲観するのはそこか」
「何はともあれ、最後には「「「スグルに救われた」」」それは間違いの無い事実だ」
「そろそろお別れじゃの」
「え?、ちょ、ちょっと待って、ねぇ、レギルさん、レシカさんは?、ねぇネフカさんとミレーヌさんは?」
「彼女らは、人生これからという時に災害に遭った。そしてスグル殿に出会えたお陰でこうして現世を生きていける。どうか、彼女たちを頼む」
「ワシらと一緒に行っても同じ時を過ごせるとは限らんしな」
「転生したら、それこそ人になるのか動物になるのか分からん。ならば人である今を生きて貰いたい」
「「「「達者でなー…」」」」
「スグルさん?」
『主?』
「ハッ、なんか長い夢を見ていたい気分だった」
『現実逃避はいけません』
「見ていた」ではなく「見ていたい」です。
夢オチではありません。