第26話.有ったけど無かったことに
領主の館にやって来た。
応接室に通された。領主のレギルさんと、お付きのセバスさんを待たせてしまったようだ。
「お待たせしましたか?」
「いや、スグル殿に手間を掛けさせてすまない」
「スグル殿、今後の話しなんだが…」
「俺にギルド長とか話し振るのやめてね?」
「ははは、先に断られてしまったか、残念」
「まぁ、長が牢に入れられたんじゃねぇ…」
「誰か適任者が居れば良いのだが、生憎、この街には居なくてな」
「それなんですがね、あなたの弟さんはどうですか?」
「私の弟?」
「えぇ、クラウドに唆されていたのでしょう?」
「まぁそうなんだが、そのせいで甥を亡くしてしまっている」
「屋敷を大きくするなどの手腕を良いことに使えば、ギルドは成長すると思うんですよ。ここだけの話しなんですが、その甥が亡くなったのって、どれだけの人が知っていますかね」
「まぁ、私の家族とセバスやアンナ、弟の家族と使用人、あとはクラウドだけだな」
「なら呼び戻しますか」
「え?」
「ですから喚びましょう」
「字が違ってないか?」
「字?はて何の事でしょう。それよりも、俺がこの世界に来たときにお世話になった、たぶん神様だな、その神様のところに、魂が居るって聞いたんだ」
「た、魂があっても肉体が無かったら意味が無くないか?、それに喚ぶとなると人ではなくなってしまうんじゃないか?」
「あぁ、そこは大丈夫です。眠った状態で時間を巻き戻すらしいので、気が付いたら治療院のベッドの上という筋書さ。なので、15人ほど収容できる治療院を手配してくれないかな」
「本当にできるのか?」
「借りを作ってしまう形になりますけどね。で、御者とか更正が無理そうならば裁けば良いと思うんだ」
「なるほど……分かった、収容の方は調整しよう。」
「ありがとうございます」
「お礼を言うのはこっちの方だよ。感謝する」
「それじゃ、明日の朝から居なくなるけど、ちゃんと動いてね」
無茶補正の回