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意味編ー4

4


ガルディアン第3支部管轄内ー廃都市ナオラッカ


シレディアが操縦する黒いエグゼキュシオンと銀色の騎士を思わせるシュヴァがぶつかり合う。


シュヴァの外見から武装が見当たらないため、主に打撃を用いた原始的な戦闘に特化した侵略者アントリューズの可能性が高い。


攻撃速度や移動速度は、エグゼキュシオンとほぼ同じであり、特出した点がないシンプルな侵略者アントリューズだ。


「決める」


シレディアは、機体を前進させ、距離を詰めるのに対し、シュヴァは、真っ向から彼女の機体を迎え撃つ。


しかし、シュヴァの考えとは裏腹にシレディア機が進路を変え、立ち並ぶ廃墟と化した建物に紛れ込む。


シレディア機を見失ったシュヴァは、慎重に移動しながら周囲を見渡し、妙な緊張感と静けさが漂う。


シレディア機を見つけられないシュヴァは、標的をポストル機に切り替えようとした瞬間、背後から殺気を感じ取って振り返る。


シュヴァが防御しても間に合わない距離まで接近していたシレディア機は、勢いのままエグゼツインブレードを振るう。


シュヴァの腕が刃を防御しようと反射的に動くも間に合わず、エグゼツインブレードで首と腹部を切り裂かれた。


切り口から青黒い血液を噴き出し、シュヴァの生首が宙を舞った後、鈍い音を立てて瓦礫の上に落下する。


頭部を失った胴体は、力尽きたかのように膝から崩れ落ち、青黒い血液の水溜りを作る。


「や、やった!」


呆気ない勝利ではあったが、無事に侵略者アントリューズを討伐したことに喜ぶポストル。


一方のシレディアは、確かな手応えはあったものの何処か違和感を抱き、沈黙したまま動かない。


「……」


いつまで経っても動かないシレディア機に疑問を抱いたポストルは、機体の通信回線を使って彼女の名前を呼ぶ。


「シレディア?」


ポストルの呼びかけに答えず、シレディアは、コックピットモニター越しにシュヴァの亡骸を睨む。


その時、瓦礫の上に落下したシュヴァの青黒い瞳が不気味に光りが灯る。


「っ!?」


シレディアが異変に気付いた瞬間、切り離された下半身がまるで溶けた金属のように液状化し、自我を持ったかのように不気味に動き出す。


「まだ生きてる!」


シレディアは、慌ててコントロールグリップを動かし、自身の機体が持つエグゼツインブレードをシュヴァの頭部へ突き刺そうとする。


しかし、液状化したシュヴァの腕が伸び、エグゼツインブレードを飲み込んでいく。


「くっ!」


このままでは機体ごと飲み込まれると危険を察知したシレディアは、機体の手をエグゼツインブレードから離させ、一旦安全な距離まで退いた。


そんな彼女の機体の傍にポストル機が駆け寄り、ポストルが、通信回線でシレディアの無事を確認する。


「大丈夫シレディア!?」


「うん」


シレディアの無事に安堵する暇もなく、液状化したシュヴァの胴体や頭部などが再構築を始める。


瞬く間に再生を完了したシュヴァは、不気味に青黒い瞳を輝かせ、刃状に変化した左腕を2機のエグゼキュシオンに向けた。


「あの腕……まさか取り込んだエグゼツインブレードをコピーしたのか!?」


ポストルは、シュヴァの形状変化と学習能力の高さに驚きと動揺を隠せない。


シュヴァは、取り込んだエグゼツインブレードの特徴や性能を把握し、自身の腕をエグゼツインブレードに似せて変化させたのだ。


「それに首を切ったのに死なない」


シレディアがこれまで倒してきた侵略者アントリューズは、首を切断するか大脳を破壊、または心臓を突き刺せば必ず力尽きた。


しかし、シュヴァは、シレディア機に首を切り落とされたにも関わらず、何事もなかったかのように復活した。


つまり、シュヴァは、首を切り落としただけでは倒せないということ。


(首がダメなら頭か心臓……それかその両方の可能性も)


シュヴァの大脳を破壊するか難易度は高いが心臓を貫くか、或いはその両方を同時に実行する必要があるのだろうか。


様々な思考がシレディアとポストルの中に渦巻き、すぐに動き出すことができない。


しかし、このまま考え込んでいても仕方がない。


「やってみるしかない」


そう言って先陣を切ったシレディアは、自身の機体を前進させ、復活したシュヴァと激しく刃を交え、火花を飛び散らせる。


両者とも譲らない攻防戦を見守ることしかできないポストル機は、バレットアサルトライフルを構えたまま棒立ちになる。


(速すぎて援護できない!)


下手に援護射撃すればシレディア機に命中する恐れがあるから動けない。


(くそ!俺は考えていてもどうしようもないことを考えて何もできないのか!?)


ポストルは、自身の戦う意味が揺らいだことで照準を上手く合わせることができない。


(戦っても意味はないかもしれない。俺にはシレディアたちのような強い意思もない。何もできないかもしれないけど俺は!)


自身の中に芽生えた迷いを何とか振り払おうとする一方、シレディアはシュヴァと何度も刃を交える。


「さっきよりも速い」


首を切り落とす前と比べ、戦闘力が高まていると実感したシレディアは、自身の操縦技術と剣捌きを駆使し、シュヴァに斬撃を繰り出すも防がれてしまう。


「ちっ!」


シュヴァの斬撃を寸前のところで避けたが、シレディア機の頬にかすり傷が生まれる。


間髪入れずシュヴァは、容赦なく刃を振り下ろし、シレディア機の右腕を切り落とす。


「しまった!」


切断面からまるで血液のようにオイルが噴き出し、辺りの草木に飛び散った。


幸い武器を持っていた方の腕ではなかったが、久方ぶりの強敵にシレディアの額から嫌な汗が流れ出す。


「シレディア!」


シレディアを助けるため、動き出したポストル機は、両腕部から超高周波ブレードを展開する。


それに気付いたシュヴァは、素早く方向転換し、ポストル機の未熟な斬撃を余裕だと言わんばかりに防ぐ。


「ポストル!?」


戦意を失い、もう戦いに参加しないと思っていたシレディアは、ポストルが加勢したことに驚く。


しかし、新兵のポストルが戦って勝てる相手ではないため、シレディアは慌ててポストルに退避を促す。


「こいつは強いから逃げて!」


「嫌だ!俺はシレディアを1人にできない!シレディアを1人で戦わせたくない!シレディアが戦うなら俺も一緒に戦うよ!」


憎しみやガルディアンの使命に囚われず、シレディアの純粋な戦う意味が、迷っていたポストルを動かしたのだ。


「ポストル」


ポストルが自分と一緒に戦ってくれることを決意したことにシレディアの表情が緩み、コックピット内で微笑みを浮かべた。


「シレディアと一緒に帰るんだ!」


ポストルを未熟だと油断し、手を抜いたシュヴァの刃を強引に押し返し、攻撃の隙を作る。


シレディアの行動は、既に学習済みだが、ポストルと刃を交えたのは、今が初めてであり、彼の行動パターンや動きを把握できなかった。


そのため、ポストル機の動きに翻弄され、意図せずシレディア機への注意が手薄になる。


「わたしも!」


隙を逃さなかったシレディアは、自身の機体を素早く動かし、シュヴァの背中をエグゼツインブレードで貫く。


背中を貫いたエグゼツインブレードの青黒い血に染まった刃が、シュヴァの胸部から顔を出す。


シレディアは、シュヴァが人型であることから人間と同じ位置に心臓があるのではないかと考え、その位置を狙ってエグゼツインブレードを突き刺した。


しかし、一瞬瞳の輝きが消え、動きが止まったものの絶命させるまでには至らず、ポストル機から視線を逸らし、横目でシレディア機を睨む。


「死なない!?」


「まだだ!」


そう言葉を返したポストルは、自身の機体を動かし、超高周波ブレードでシュヴァの額を突き刺し、頭蓋骨だけでなく脳まで貫く。


脳を貫かれたシュヴァは、まるで壊れたブリキ人形のように激しく痙攣する。


「これで……っ!?」


勝利を確信したポストルの顔が、一瞬で青ざめる。


何故なら、虫の息のシュヴァが、弱々しく青黒い瞳を点滅させ、ポストル機だけでも道ずれにしようと刃状の左腕を振り下ろそうとしているからだ。


「させない」


シレディア機は、シュヴァの心臓を貫いていたエグゼツインブレードを素早く引き抜き、紫色のツインアイカメラを輝かせ、シュヴァの首を切り裂く。


切断面から噴水のように青黒い血が噴き出し、頭部を失った胴体は、鈍い音を立てコンクリートの力無く地面に倒れた。


シュヴァの瞳から輝きが完全に消えたのを確認したポストルは、自身の機体の腕を動かし、頭部から超高周波ブレードを引き抜いた。


「「討伐完了」」


ポストルとシレディアの息が合った討伐完了報告により、強敵シュヴァとの戦いは幕を閉じた。

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