似た者ー3
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ガルディアン第3支部基地内ー第2格納庫
昼食を終えたポストルとミソンプは、1時間の休憩を挟み、第2格納庫を訪れていた。
エグゼキュシオンの戦闘シミュレーション機能を使い、パイロットとしての腕を磨くためだ。
ポストルに誘われたミソンプは、彼に付き合う形でシミュレーションを一緒に行う。
過去のデータを元にコンピューターが生成したシミュレーション用の侵略者を2人で討伐。
その後、エグゼキュシオン同士による対人戦モードで腕を磨いた。
このモードは主に教官が生徒に対し、エグゼキュシオンの基礎的な操縦技術を教えるのに使われる。
本来は、組織内で裏切りが発生した場合や反政府勢力との戦闘を考慮して組み込まれたものだ。
特に後者を意識したものだが、そのような意味合いで組み込まれているものだと知る人は少ない。
「改めてミソンプの操縦を見たけど本当に凄い」
ミソンプから戦い方を指導してもらったポストルは、機体の電源をシャットダウンする。
コックピットディスプレイが一斉に暗くなり、明るかったコックピット内が薄暗く静寂に包まれる。
「ミソンプには永遠に勝てる気がしないよ」
今のポストルが対人戦でミソンプに挑んだところで勝てる確率は無に等しいだろう。
訓練兵でありながらベテランパイロット並みの実力を持ち、訓練兵をトップで卒業した逸材。
その実力はガルディアン上層部も高く評価し、ガルディアン本部の精鋭部隊に推薦される程だ。
人工適合者でも疑似人工適合者でもない一般の訓練兵が、ガルディアン本部の精鋭部隊に推薦されたのは8年振りのこと。
「凄過ぎて参考になったようなならなかったような」
手足のようにエグゼキュシオンを動かす見事なミソンプの操縦技術。
間近で見て参考になる点はあったが、早速実戦でそれを活かせるかは別の話だ。
操縦が不慣れなポストルが、ミソンプと同じ次元に立つには相当な特訓が必要だろう。
それに加え、ポストルには侵略者を前にすると精神病を発症し、上手く戦えなくなる。
実戦では呑気に侵略者が待ってくれる訳でもなければ手加減をしてくれる訳でもない。
「ミソンプの動き……シレディア特尉の動きを見たから分かるけどシレディア特尉に似ていたな」
先日シレディアの戦い方を実際に見たポストルは、彼女とミソンプの戦い方に何処となく近いものを感じた。
偶然にもシレディアとミソンプの性格や雰囲気が似ており、それで戦い方も似ているのかもしれない。
「あんな風にエグゼキュシオンを動かせるなんて羨ましいな」
人工適合者や疑似人工適合者でもないのに彼ら並みの操縦ができるミソンプが羨ましくて仕方がない。
「体を強化すれば侵略者に怯えず、ミソンプのようにエグゼキュシオンを自由自在に操れるのかな」
無力過ぎる自分に落胆し、思わず国際法で禁じられている肉体強化に手を出したくなる。
もちろんガルディアン側に肉体強化を受けたいと申し出たところで承認されることは決してない。
反政府勢力の中には違法だと知りつつパイロットや一般人に肉体強化を施しているという噂がある。
例え、噂通りでも非道な反政府勢力に加わってまで強化を受けたいとポストルは思わない。
「出てくるの遅い」
エグゼキュシオンのコックピットハッチを開け、外に出ると特訓を付き合ってくれたミソンプが出待ちしていた。
大人びた体に控えめで発展途上な胸を女性用の白いダイレクトスーツが隙間なく包み込んでいる。
ダイレクトスーツが密着しているお陰で縦長の綺麗な形をした臍まではっきり見える。
シミュレーション中に侵略者が出現してもすぐ対応できるようダイレクトスーツの着用が義務付けられている。
「ごめん。ちょっと考え事をしたから」
「考え事?」
ポストルの言葉に興味を持ったミソンプは、首を軽く傾げ、隣で肩を並べて立つ彼を見つめる。
「どうしたらミソンプみたいになるのかなって」
「私みたいに?」
「あんな風にエグゼキュシオンを動かせるなんてミソンプの才能が羨ましいよ」
それを聞いたミソンプは、自分のことを心から羨ましがるポストルから視線を逸らす。
「羨ましがられるような才能じゃない」
「そんなことはないと思うけど。少なくても俺は羨ましいよ」
「こんな才能、わたしは望んでいない」
あまり自身の才能を他者から羨ましがられるのが嫌なのかミソンプは、珍しく表情に影を落とす。
感情を表にほとんど出さない彼女の声には微かに怒りが混じっているように聞こえる。
流石のポストルも彼女が気分を害したと瞬時に察し、慌てて謝罪する。
「気分を悪くさせてごめんよ」
「別に」
ミソンプの態度から生まれ持った才能故に辛い経験をしてきたのではないかとポストルは考えた。
何故なら、生まれ持って並外れた能力を持つ人工適合者や疑似人工適合者への扱いが頭を過ったからだ。
ミソンプの力を最大限に利用しようと何かしらガルディアンが手を回してもおかしくない。
(きっとミソンプはガルディアンから嫌がらせでも受けたんだろ)
聞いた話によればガルディアン本部からの推薦を断るのに相当苦労したらしい。
何度断ってもその度に好待遇を提示し、それを餌にミソンプを精鋭部隊に引き込もうとした。
時には脅しとも捉えられるような勧誘もあった。
強力な戦力を自分たちの監視下に置き、その者を掌握する。
時代が変わっても所詮パイロットを単なる兵力としてしか考えていないガルディアンらしいやり方だ。
それに屈することなく、断固としてガルディアンの誘いを断り、こうしてガルディアン第3支部基地所属になった。
(ガルディアン第3支部に相当思い入れが強いんだろうな。聞いても理由は教えてくれないけど)
ポストルがミソンプにいくら理由を聞いても『鈍感』と返され、明確な理由は教えてくれない。
今でもポストルは、ミソンプがガルディアン第3支部基地所属に拘った理由を知らない。
(まぁ、もし本部から勧誘されても所属したいとは俺も思わないな)
ガルディアン本部からの執拗な勧誘を受ければ本部に所属したいとは思わないだろう。
噂ではガルディアン第3支部司令に対し、シレディアを本部に異動させるよう催促しているらしい。
人工適合者を今でも兵器としてしか見ていない連中が、ガルディアン本部に山程いる証拠だ。
時代が変わっても古き者たちは、自分たちの狭い常識に囚われ、一向に新しい考え方に切り替わらない。
「今日は付き合ってくれてありがとうミソンプ」
「あんたにならいつでも付き合う」
「また時間がある時にお願いするよ」
突然、ガルディアン第3支部基地内に侵略者の出現を知らせる警報が鳴り響く。
「侵略者!?」
警報と共に慌てた声のアナウンスが聞こえる。
『異空間の狭間から侵略者が出現しました!』




