↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

似た者ー2


2



ガルディアン第3支部基地内ー中庭



季節の移り変わりを感じさせる風を全身で浴びるポストル。



中庭に設置してある木製ベンチに座り、昨日の出来事を振り返って顔を赤く染めていた。



「れ、冷静になると恥ずかし過ぎる」



昨日、夜になるまでミソンプの部屋で過ごした。



異性と2人きりに何も感じないミソンプから『わたしの部屋で寝たら?』と誘われた。



ポストルがミソンプの中で特別な存在だから何も感じないのだ。



彼女の大胆な誘いにポストルの全身が高熱を放ち、冷静さを奪い去った。



流石にそれは駄目だという理性が働き、ミソンプの部屋から逃げるように自分の部屋へ戻った。



お陰でその日の夜は、悪夢を見ず、精神病による症状に悩まさせることもなかった。



しかし、女の子の部屋でほぼ1日2人きりで過ごしたことで高められた心拍数のお陰で一睡もできなかった。



まるで子どものようにミソンプに抱擁された挙句、大胆な誘いを受けたのだから当然かもしれない。



「あんなに積極的なミソンプは初めてだ。相当心配させたんだな」



ポストルは、精神的に疲弊していた自分を気を遣ってくれたと思い込んでいる。



筋金入りの鈍感とタージュが評価するくらいポストルは、他者からの好意に対して鈍い。



自己評価が低く、自分が異性から好かれるなど全く思っていないからだろう。



「男として情けないな」



同期の女の子に心配させ、宥めてもらうなんて男として失格だとポストルは溜息を吐いた。



「しけた顔してんなポストル」



木製ベンチに座って昨日を振り返っているポストルに声をかけてきたのはタージュだ。



「そんな顔してる?」



「あぁ、また悪夢でも見たのか?」



「い、いや今日は大丈夫だったけど」



「けど?」



再び昨日の恥ずかしい光景を思い出し、ポストルの顔が急激に熱くなる。



ミソンプに抱き締められ、頭を撫でられたなんてタージュに話せば玩具にされるに違いない。



そうなればポストルだけでなく、ミソンプにも迷惑をかけることに繋がるだろう。



「いや、何でもない」



怪しむタージュの気を逸らすべく、ポストルは全く関係ない話題を振る。



「そ、そういえばシレディア特尉って今日から不在だったよな?」



どうしてシレディア特尉の話題を出してきたのか不思議に思いつつタージュは話題に乗る。



「確か司令と一緒に第14支部へ行ったんじゃなかったか?」



「そ、そうだったな」



「てか、いつもならオレよりもお前の方が詳しく覚えてるに珍しいな」



「そうかな?」



「シレディア特尉が無愛想だから興味を失ったか?」



「そういう訳じゃないけど。てか、そんな風にシレディア特尉を悪く言うのやめろよ」



「へいへーい」



適当な返事を返したタージュに呆れてポストルは溜息を吐いた後、再び口を開く。



「それにしても第14支部基地か」



「何か第14支部基地にあるのか?」



「大したことじゃないけど司令やシレディア特尉が参加するイベントに1回は参加してみたいなって思っただけだよ」



ガルディアン第3支部司令とシレディアがガルディアン第14支部基地へ向かった理由。



それはとあるイベントの招待状がガルディアン第3支部司令に届いたからだ。



シレディアは全く興味がないが、司令の護衛として同行することになった。



「本当にお前は機械関係が好きだよな」



「レアシオン社以外の企業の兵器とかを見れる機会なんて滅多にないからね」



シレディアとガルディアン第3支部司令が参加するイベントには、兵器開発を主とする様々な企業が参加する。



業界を牛耳るレアシオン社はもちろん普段は表に出ない小さな企業も参加する。



引退後、技術兵志望のポストルにとって、是非とも参加してみたいイベントなのだ。



「オレは侵略者《アントリューズ》を倒せるなら何処の企業が開発したとか気にしないな」



「タージュらしいね」



想像通りのタージュらしい回答にポストルは笑みを浮かべた。



「参加したいなら今度イベントがある時、司令に頼んで参加させてもらったらどうだ?」



「流石にあの強面の司令に頼むのは気が引けるよ。それにそう簡単に話せるような関係でもないし」



「雰囲気からして厳しそうだしな」



ガルディアン第3支部基地司令は、雰囲気からして近寄り難く、強面な顔が余計に他者を怖がらせる。



昔はエグゼキュシオンのパイロットであり、何体もの侵略者《アントリューズ》を討伐してきた凄腕だ。



その成果と高い指揮能力を買われ、ガルディアン第3支部基地司令に任命された経歴を持つ。



「なら、シレディア特尉にお願いすればいいだろ」



「シレディア特尉とも親しい仲じゃないよ」



「第3支部以外に異動したら行けるかもしれないぜ」



最初に配属されたガルディアン基地にずっと所属している者もいればそうでない者もいる。



本人による希望が通り、異動になる場合もあれば上からの指示で異動になる場合もある。



「ここにいたんだポストル」



「おっミソンプか」



「み、ミソンプ!?」



いつもとは違うリアクションを見せるポストルをタージュやミソンプ、彼女に同行していたサラリエが不思議そうに見つめる。



「何かありましたかポストル?」



「べ、別に何でもないよサラリエ!」



明らかに動揺しているポストルは、両手を素早く左右に振り、何でもないことを主張する。



そんな彼にミソンプが接近し、美しく整った顔を覗き込ませる。



「わたしの顔に何かついてる?」



昨日の出来事が頭を過って止まないポストルは、まともにミソンプと目を合わせられない。



「な、何もついてないよ!」



「また気分が悪い?」



「いやいや!今日は元気ですはい!」



明らかに様子がおかしいポストルを見たタージュは、ミソンプとの間に何かあったのではないかと睨む。



「ミソンプとなんかあったのか?」



どうにかして誤魔化そうと思考を張り巡らせようとするポストルだが、高揚のせいで上手く思考が回らない。



迫る危機に変な汗が流れ始めたその時、ミソンプがタージュの質問に答えようと口を開く。



「昨日、ポストルが」



「ぬわぁぁぁぁぁぁ!」



咄嗟にポストルは、ミソンプの言葉を遮るように大声を轟かせる。



タージュやサラリエがいる前で昨日の恥ずかしい出来事を暴露される訳にはいかないからだ。



「ミソンプ!2人で一緒にお昼行こう!」



その場にいる全員が予想外のポストルの発言に目を丸くして驚く。



声量もそうだが、ミソンプだけを食事に誘うという奥手なポストルらしくない行動だ。



誘われたミソンプにとって大変喜ばしいことであり、待ち望んでいたことでもある。



ポストルとしては、ミソンプが昨日の出来事を暴露するのを防ぐため、咄嗟に出た言葉に過ぎない。



「えぇ、喜んで」



「よし!それじゃ行こう!」



感情を表情に出さないものの何処か嬉しそうにポストルと一緒に食事へ向かうミソンプ。



一方、ポストルはこれで昨日のことをタージュやサラリエに知られずに済むと安堵する。



その2人の背中を呆気に取られた表情でタージュとサラリエは見送る。



「一体何があったんだ?」



タージュがあまりの急展開に首を傾げる一方、サラリエは鋭く痛む自身の胸に手を当てていた。



「ポストル」



食事に誘われたミソンプが羨ましくあり、嫉妬のような負の感情がサラリエに突き刺さるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。