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黒の処刑人ー4


4



ガルディアン第3支部基地管轄内ー廃都市ベツマデフ。



2体に増えたベムイトを1人で相手にするシレディア。



幸いと言うべきか頭部がないベムイトは、比較的動きが鈍く単調で対応しやすい。



しかし、どれだけ攻撃を与えても再生し、執拗にシレディアを襲う。



「どうしたら」



シレディアは、ベムイトの弱点を見出せずにいた。



「また首を切って増えられたら厄介になる」



首があるベムイトの剣撃をエグゼツインブレードで防いだ黒いエグゼキュシオンは、すぐベムイトの腹部を蹴り飛ばして突き放す。



そのタイミングで今度は首がないベムイトの蹴りが襲ってくる。



「邪魔」



シレディアが操る黒いエグゼキュシオンは、上手くベムイトの蹴りを避け、逆に回し蹴りを浴びせた。



数で勝っているにも関わらず、引けを取らないシレディアにベムイト2体も痺れを切らしているようだ。



「このままだと不利」



2体に増えようとも冷静さを崩さず、適切な立ち回りを披露するシレディア。



ベムイトとの戦闘が開始してから約30分が経過した。



エグゼキュシオンの操縦限界時間までまだ余裕があるとは言え、有効打を見出せずにいれば負ける。



これまで討伐してきた侵略者《アントリューズ》同様、弱点と思われる箇所を的確に攻撃している。



しかし、一向に弱る気配もなければ活動停止になることもない。



「っ!?」



首のないベムイトが、両腕をバレットアサルトライフルに変化させ、黒いエグゼキュシオンに弾丸を放つ。



事前に危険を察知したシレディアは、コントロールグリップを素早く動かす。



連動した黒いエグゼキュシオンは、素早い身のこなしで弾丸を避けつつ建物の後ろに隠れる。



それを見抜いていた首のあるベムイトが先回りしており、黒いエグゼキュシオンに銀色の刃を振う。



シレディアの反応速度と対応能力が高いお陰でベムイトの攻撃をエグゼツインブレードで受け止めることができた。



「簡単にやられない」



銀色の刃を弾き、連続で剣撃を浴びせた後、ベムイトを後方に蹴り飛ばす。



後方に蹴り飛ばされたベムイトは、体勢を崩してコンクリートの地面に背中から倒れる。



丁度そこは球体型だったベムイトがミサイルで撃墜され、落下した地点だった。



それを見たシレディアは、思い出したかのように疑問を口にする。



「あの時、どうしてすぐ反撃しなかったんだろう。それに一時的に生体反応もなかった」



生体反応がなかったベムイトが復活するとは思わず、深く考えもしなかった。



黒いエグゼキュシオンが近づいても少しの間、全く動かなかった。



どうしてあんなタイミングで動き出したのかシレディアは、脳内でその理由を考える。



「何か理由が……」



起き上がったベムイトは、身震いで埃を払うと目の前にいる黒いエグゼキュシオンに切りかかる。



シレディアは、コントロールグリップを動かし、黒いエグゼキュシオンに防御させる。



「いくら切ってもダメなのにあの時だけ」



救援に駆けつけるかのように首なしベムイトが、黒いエグゼキュシオンに迫る。



黒いエグゼキュシオンは、もう片方の手で掴んでいたエグゼツインブレードで対応する。



「まさかミサイルが弱点!?」



確実にミサイルが弱点だとは言い切れないが、このままでは埒があかない。



「確証はないけど」



可能性があるなら試すしかないと思ったシレディアは、離れて待機する戦闘機に対し、通信回線を繋ぐ。



「各機、わたしが攻撃を止めている隙にベムイトに対してミサイル攻撃を」



通信回線を通して聞こえたシレディアの命令に慌てた声で男性パイロットが返す。



『し、しかしそれではシレディア特尉まで巻き込まれて』



「わたしのことはいいから早く撃って」



『りょ、了解』



シレディアの命令に思わずたじろいでしまいながら命令に従う。



待機していた戦闘機が一斉にベムイト2体に照準を合わせる。



そして、シレディアが乗る黒いエグゼキュシオンを巻き込んでしまうと分かっていながらも引き金を引く。



各戦闘機のミサイル発射口から侵略者《アントリューズ》用のミサイルが数発放たれる。



「今!」



寸前までベムイト2体の動きを封じていたシレディアが、コントロールグリップを素早く手前に引く。



ミサイルの爆発に巻き込まれる前にその場から黒いエグゼキュシオンを退避させる。



その場に残されたベムイト2体は、何もできず降り注ぐミサイルを浴び、爆風と爆炎が巻き上がる。



「どう?」



舞い上がった黒煙の中から火だるまになったベムイト2体が苦しみながら現れる。



首なしベムイトは、火だるまの肉体が溶け始め、原型を維持できなくなり、バランスを崩して正面から倒れた。



やがて微動だにすることもなくなり、見る影もなく溶けて灰となって散る。



「ミサイル……いや、この侵略者《アントリューズ》は熱に弱い」



残ったベムイトも高熱に苦しみ、火だるまの体をどうにか鎮火しようと激しく暴れ回る。



シレディアが見抜いた通り、どうやらベムイトは高熱に弱いようだ。



体全体が氷のように溶け始めるベムイトだが、唯一無事な箇所があることにシレディアは気付いた。



「頭だけ無事。そこがあいつの急所」



黒いエグゼキュシオンは、紫色のカメラアイを禍々しく発光させ、ベムイトの頭部に狙いを定める。



「終わらせる」



一気に黒いエグゼキュシオンが前進し、素早くベムイトの懐に入り込む。



熱のダメージで追い詰められたベムイトの瞳に獲物を睨む黒いエグゼキュシオンが映る。



ベムイトの瞳には『黒の処刑人』と呼ぶに相応しい姿に見えた。



「切り裂く」



エグゼツインブレードの刃がベムイトの単眼を容赦なく貫く。



黒いエグゼキュシオンは、紫の瞳を輝かせ、貫いた刃を上に持ち上げると顔面を真っ二つに切り裂いた。



急所を破壊されたベムイトは、千鳥足で数歩後退した後、力無くコンクリートの地面に倒れ込む。



侵略者《アントリューズ》固有の生体反応が消えたことを確認したシレディアは、基地に通信回線を繋ぐ。



「討伐完了。これより帰還する」



シレディアとベムイトの戦いは、弱点を見抜いたシレディアの勝利で幕を下ろしたのであった。

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