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嫉妬編ー2


2


ガルディアン第3支部基地内ー2階廊下。


昼食を食べ終えたサラリエは、2階の廊下を1人で歩いている。


ふと窓ガラスに視線を向けたサラリエは、思わず足を止め、窓ガラスに近づき、窓ガラス越しから1階の中庭を見下ろす。


サラリエの瞳には、桜が存在感を放つ中庭で、ポストルとシレディアが木製ベンチに座り、楽しそうに会話している光景が映っている。


ポストルが積極的にシレディアと交流し、順調に仲を深める光景が、サラリエの胸を締め付ける。


「ポストル……」


窓ガラスに手をかざし、愛おしそうにポストルの名前を呟くが、中庭にいる彼には届かない。


笑顔を浮かべてシレディアと会話するポストルを見つめるサラリエは、意図せず脳内で昔の記憶を思い出す。


サラリエは、家族と一緒にとあるガルディアン支部基地が管轄していた領土内で、名家として裕福な暮らしを送っていた。


ある日、異空間の狭間から侵略者アントリューズが出現し、いつものようにガルディアンは、侵略者アントリューズ討伐のため、基地から数機のエグゼキュシオンを出撃させた。


しかし、出撃したエグゼキュシオンは、侵略者アントリューズの前に敗北し、基地内で待機していたエグゼキュシオンも侵略者アントリューズと交戦したが全滅した。


ガルディアン支部基地が保有する全てのエグゼキュシオンを退いた侵略者アントリューズは、領土を囲む武装搭載型防護壁を破壊した。


人類の生活圏に侵入した侵略者アントリューズは、無我夢中で逃げ惑う人々を踏み潰し、本能のまま容赦なく人々を殺していった。


幼いサラリエは、家族と一緒に避難していたが、その最中、避難する人の波に流されてしまい、家族と離れ離れになってしまった。


彼女は、そのまま人の波に流され、避難用地下シェルターの中に運良く入り込み、生き残ることができた。


それから数時間後、他のガルディアン支部基地から派遣されたエグゼキュシオン部隊によって侵略者アントリューズは討伐された。


ガルディアン職員に誘導され、避難用地下シェルターから出たサラリエの瞳に侵略者アントリューズに蹂躙され、焦土と化した領土内の風景が映り込む。


ガルディアンの捜索により、サラリエの家族は、非難に間に合わず、領土内で侵略者アントリューズに踏み潰され、全員死亡しているところが発見された。


家族を失い、孤児となったサラリエは、名家の1人娘という観点からガルディアンに保護され、幼い頃から兵士として厳しい教育を施された。


そんな日々を送る中、侵略者アントリューズと戦わなければいずれガルディアンに捨てられてしまうと思わせる出来事を目撃することになる。


その頃はまだ人工適合者や擬似人工適合者に対する非人道的な扱いが横行し、使い物にならないと判断した人工適合者や擬似人工適合者を処分していた。


偶然それを目撃してしまったサラリエは、戦力にならないと判断されればいずれ自分も処分されるのではないかという恐怖や不安に襲われ、エグゼキュシオンのパイロットとして、侵略者アントリューズと戦う道を選択した。


家族を奪った侵略者アントリューズへの復讐心よりも人工適合者や擬似人工適合者のように処分されるという恐怖が上回り、それがサラリエを支配し、毎日強制的に繰り返される厳しい訓練に耐えた。


正式に訓練兵となってからは、より訓練が厳しくなり、成績が伸び悩んでいたサラリエは、何度も逃げ出しそうになった。


そんな彼女をいつも隣で励まし、支えてくれたのがポストルだった。


自分と似た境遇にも関わらず、どんな時も前向きに厳しい訓練に取り組む、周りに純粋な優しさを振り撒くポストルに自然と惹かれた。


しかし、自分の気持ちを上手くポストルに伝えられず、進展しない現状に悩んでいたサラリエにとって、瞳に映る光景は焦りや嫉妬という負の感情を募らせる。


「なにボケっとしてんだよサラリエ」


突然、背後からタージュに右肩を叩かれ、驚いたサラリエの体が反射的に跳ね上がる。


顔を赤くし、慌てて振り返ったサラリエは、明らかに動揺した様子でタージュに言葉を放つ。


「い、いきなり何ですか!?」


「そんな驚くことねぇだろ」


顔を真っ赤にして大袈裟なまでの驚きを見せるサラリエにタージュは、その理由を心中で察しながらもあえて質問する。


「何かあったのか?」


「べ、別に何でもありません!」


そう強く言い放ったサラリエは、その場から逃げるようにロボット歩きで去っていく。


明らかに動揺しているサラリエの背中を呆れ顔で見送り、1人になったタージュは、その場で溜め息混じりに独り言を呟く。


「ったく、相変わらずサラリエは分かりやすいな」


そう言い終えたタージュは、窓ガラスから見える中庭の光景を横目で見る。


常にポストルやサラリエと行動を共にしていたタージュは、サラリエの気持ちに気づいている。


直接サラリエ本人から聞いた訳ではないが、サラリエがポストルに見せる表情や仕草から彼女の気持ちを察した。


「肝心の鈍感モテ男は、シレディア特尉に夢中か」


中庭で桜を見つめるシレディアを目撃して以来、ポストルは、何かあればシレディアの名前を頻繁に口にしている。


ポストルとシレディアが互いに名前で呼び合うようになってからタージュやサラリエと行動するよりもシレディアと一緒に行動している頻度が多い。


証拠に以前からシレディアと仲が良く、常に彼女の隣にいて特別な感情を抱くユノが嫉妬を露わにするくらいだ。


「ったく……」


その時、恐怖を駆り立てる警報が鳴り響き、続いてオペレーターの慌てた声が流れる。


『異空間の狭間から侵略者アントリューズが出現!パイロットは直ちに出撃してください!』

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― 新着の感想 ―
[良い点] 明らかに動揺している。感情豊かですね
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