表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/21

黒の処刑人ー1


1



ガルディアン第3支部基地内ー第2格納庫。



ここに格納されているのは、ポストル、タージュ、サラリエ、ミソンプが搭乗する量産型エグゼキュシオンだ。



朝から第2格納庫にいるポストルは、タージュと一緒に業務を行なっている。



コックピット座席に腰掛け、自身に与えられたエグゼキュシオンのシステムチェックを行う。



時間や手が空いている時は、こうしてパイロットたちがセルフチェックを行うことが多々ある。



もちろん最終的な仕上げは基地内で働く技術兵が行う。



「さてと」



専用のタブレット端末とコックピットディスプレイを通信線で接続し、タブレット端末の液晶画面に表示されるデータにエラーがないか確認する。



「自分の言うのも変だけど俺は戦闘より技術向きだって感じるよ」



どちらかと言えばポストルは、エグゼキュシオンの操縦よりもこうした作業の方が得意だ。



エグゼキュシオンのパイロットを引退する時が来たら技術兵として働こうと前向きに検討している。



最初は大企業であるレアシオン社に就職しようと考えていたポストル。



しかし、レアシオン社が裏で反政府勢力と繋がっている噂を聞くようになり、今ではその志望意欲が薄まってしまった。



理由がどうであれテロリズムな組織と裏で繋がるなど繊細なポストルには納得できないのだ。



「パイロットを引退したらガルディアンの技術兵として働くのも悪くない」



「マジかよ。オレなら1日で辞職しそうだぜ」



ポストルとは真逆でタージュは、このような仕事が得意でもなければ好きでもない。



長時間黙って何かに取り組んだり、頭を使う作業が苦手であり、体を動かす事柄が得意だ。



訓練兵時代、タージュは勉強嫌い故に同期の中で常に最下位だった。



その反面、実技は優秀でエグゼキュシオンのシミュレーションでも好成績であった。



つまり、エグゼキュシオンに乗って戦う方がタージュの性格に合っているのだ。



「人にはそれぞれ得意と不向きがあるから仕方ないよ」



「オレはパイロットを引退したらどうすっかな。職員として働くのも性に合わないしな」



「だからってガルディアンの給付金をあてにしていたらいつ廃止されるか分からないし」



「だよな。やっぱりオレはお前みたいに先の未来なんて考えられないぜ」



エグゼキュシオンのパイロットは、年齢による衰えから大体35歳頃までにパイロットを引退することになる。



引退後は、技術兵または職員としてガルディアンに優先して雇ってもらえる。



また、横の繋がりでレアシオン社に就職することも可能だ。



ガルディアンが推薦状を用意してくれるため、一般の人よりもレアシオン社に就職しやすい。



他の選択肢としてガルディアンから給付金を受け、武装搭載型防護壁内部の居住区で暮らす選択肢もある。



しかし、年々ガルディアンからの給付額が減少しており、いずれ廃止されるのではないかと周囲から懸念されている。



それを考慮した場合、何処か働いていた方が安定した生活を送れるだろう。



だからポストルは、パイロットを引退したら働きながら生活する道を今から視野に入れている。



働く場所が大企業じゃなくても自分の得意分野を活かし、安定した生活を送れるなら本望だろう。



「システムに異常なし」



ポストルは、エグゼキュシオンのシステムに異常がないかの確認を終え、コックピットディスプレイに繋がっていた通信線を取り外す。



その時、彼の側で仕事を手伝っていたタージュが、作業を進めながら唐突に疑問を口にする。



「そういえばシレディア特尉やユノ中尉のエグゼキュシオンってカラーリングと見た目がオレたちのエグゼキュシオンと違うんだっけか?」



「唐突だね」



「エグゼキュシオンのデータを見てたらふと気になってよ」



ポストルは、第1格納庫に格納されているシレディアの黒いエグゼキュシオンを思い浮かべた。



「まず2人の機体には新型のエグゼ・リアクターが2基搭載されてるんだよ」



エグゼキュシオンの動力原『エグゼ・リアクター』。



その内部には『エクゼニウム』と呼ばれる特殊合成された鉱石を搭載しており、1基だけ機体運用に十分な出力を持つ。



エクゼニウムは、侵略者アントリューズの亡骸を分解・解析した際、侵略者アントリューズの体内から偶然発見された未知の鉱石だ。



侵略者アントリューズが環境浄化の一環として核物質や汚染物質を吸収。



それらを体内で分解した際に生まれた産物ではないかというのが有力視されている見解だ。



実際どのような経緯で侵略者アントリューズの体内に形成された品物なのかは不明である。



「人工適合者用に新たに開発されたエグゼ・リアクターだったよな?」



「あぁ、量産機よりも高出力なエグゼ・リアクターだよ」



シレディア専用機は、基礎フレームの脇腹部分に人工適合者専用に新規開発されたエグゼ・リアクター2基を装備している。



従来のエグゼ・リアクターよりも遥かに高出力であり、1基だけでも相当な負担が肉体を襲う。



そのため、人工適合者や擬似人工適合者の中でもより強固な肉体を持つ者でなければ耐えられない。



そんなエグゼ・リアクター2基を並列同期稼働させ、従来機を凌駕する機体性能と高出力化を可能にする『ダブルリアクターシステム』を機体に初搭載。



しかし、エグゼ・リアクター2基の並列稼働は、まだ技術的に困難な部分が多く、時間やコスト面から量産化にまで至っていない。



「リアクターを2基搭載した機体にオレたちも乗れたらだいぶ強くなるんじゃねぇか」



「量産化されていない今では俺たちに最新鋭機が回ってくる可能性は低いし、例え乗れてもそう簡単にはいかないと思うよ」



エグゼ・リアクター2基搭載したエグゼキュシオンが量産化されれば今より戦力は増強される。



搭載するエグゼ・リアクター2基を人工適合者用のものにしなければ一般兵でも耐えられるだろう。



しかし、2基ともなれば今よりも体に掛かる負担は大きくなるのは明白だ。



パイロットは今よりも肉体を強固に鍛えることを求められることになる。



「最近ロールアウトしたばかりの新型機は、小型のリアクターを合わせて3基搭載してるって話だよ」



新型次世代機は、小型ではあるが、シレディア専用機よりも1基多くエグゼ・リアクターを背部に装備。



それら3基をを並列同期稼働させるシレディア専用機を超えた『トリプルリアクターシステム』を搭載。



シレディア専用機を超える機体性能と高出力化を実現した新世代機に該当するエグゼキュシオンだ。



「1基だけでも体力持っていかれるのにそれを3基もかよ」



「俺たちの体が薬で強化されているとは言え、俺たちには1基が限界だよ」



薬で肉体を強化したとは言え、ポストルたちのような一般兵が高負荷の機体を操縦できる確率は無に等しい。



もし操縦できても数秒で肉体が悲鳴を上げ、操縦どころではなくなるだろう。



「そもそもあの異空間の狭間とやらを塞げたら楽なのによ」



「それができたら苦労しないさ」



各地の海底にある異空間の狭間は、まるで地球にできた傷口と言える巨大な亀裂だ。



侵略者アントリューズが通る際、異空間の狭間が一時的に大きく広がる。



その際、遠く離れた場所でも探知可能な人間には見えない特殊なエネルギーを発する。



ガルディアンは、それを頼りに侵略者アントリューズの出現を探知している。



異空間の狭間を通る侵略者アントリューズが強力な個体であればあるほど、発せらるエネルギーは高まる。



それが出現した侵略者アントリューズの危険度を示す指数にもなっている。



「見た目からして簡単に通れそうなのによ」



侵略者アントリューズ以外お断りだからね」



人類は、過去に異空間の狭間をあらゆる手段を使って塞ごうと試みた。



しかし、全てことごとく失敗に終わった。



異空間の狭間には常にバリアのような膜が張り巡らされており、侵略者アントリューズ以外を拒絶しているからだ。



異空間の狭間内部に爆弾を投下してもエグゼキュシオンを内部に侵入させようとしても弾かれる。



そのため、人類は異空間の狭間やその内部について、全くと言って良いほど解明できていない。



異空間の狭間が別次元世界へ通じていると言われているのも最も有力視されている仮説だからだ。



異空間の狭間の向こう側がどうなっているのかそこを自由に行き来できる侵略者アントリューズだけが知っているのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ただでさえパイロットや戦闘要員は身体や精神に負荷がかかりますからね。 生涯現役であり続けるのが困難である以上、確かにセカンドキャリアも考えておく必要がありますね。 自身の特技や才能が活かせるセカンドキ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ