実力ー4
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ガルディアン第3支部基地内ー食堂。
着替えを終えたポストルは、約束通りタージュやサラリエと合流した。
食堂に入るなり近くに置いてあるアルミ製トレイをそれぞれ手に持つ。
それをカウンターに持っていくと食堂の職員が、料理を盛り付けてくれる。
食堂と言っても自分の食べたい料理を好き勝手に選んで注文できる訳ではない。
大抵内容が決まった食事が朝昼晩の3食提供される。
主菜はポレンタ、副菜に豆とコーンのサラダ、薄味のコーンスープ。
変化があるとすればスープが、薄味のオニオンスープになるか副菜がマッシュポテトになるかくらいだ。
変わり映えしない料理が盛り付けられたトレイを慎重に両手で運び、空いている席に座る。
「今日も同じ料理かよ」
「仕方ないですよタージュ」
このように大抵決まった食事しか提供できないのには理由がある。
1つ目は、侵略者の出現により、食料自給率が極端に低下したこと。
2つ目は、武装搭載型防護壁内部や外部居住区で暮らす人々を優先して食料を供給していること。
最後に武装搭載型防護壁の限られた領地では、十分な食料を確保できないからだ。
皮肉にも侵略者のお陰で復元された自然環境下は、食料が豊富に存在する。
各ガルディアン支部基地の許可さえあれば誰でも定められた範囲内で漁や狩りを行える。
獲った魚や肉をガルディアンに売ることもでき、相応の値でガルディアンが買い取る制度もある。
しかし、いつ侵略者が出現し、危険に陥るか分からない状況下で、好き好んで漁や狩りを行う者は数少ない。
そのため、流通している肉や魚の約7割が、人造や養殖のものであり、天然のものはあまり出回らない。
食べれるだけありがたいご時世だと分かっていても不満を抱いてしまうのが人の心だろう。
「あんたたちもこれからご飯?」
食事を始めようとしていた3人に三つ編みの髪をした少女が声をかける。
「おっ!ミソンプじゃねぇか!」
彼女の名前はミソンプ・ジャンティー。
シレディアに似たクールな印象を抱かせる雰囲気だ。
「ミソンプも一緒にどうかな?」
「ポストルが良いなら」
「もちろん構わないよ」
ポストルが快く承諾してくれたのを機に同じテーブルに座る。
ミソンプはポストルたちと同期であるため、この場にいる3人とは既に顔見知りだ。
新兵ながらベテランパイロット並みの高い実力を持ち、トップで訓練兵を卒業した逸材である。
そんな彼女の隣で料理を一口食べたポストルが、思わず本音を漏らしてしまう。
「流石に食べ飽きた」
ポストルは、他のテーブルで食事をするガルディアン職員たちに聞こえないように小声で不満を口にした。
恐らく他のガルディアン職員たちもポストルと同じく不満を抱いているだろう。
だからと言って堂々と大声で不満を口にするような者はいない。
実際、満足に食事すらできない人々が数多くおり、食事ができるだけでも有難いことだからだ。
「気持ちは分かるわ」
思わず出たポストルの本音を隣で聞いたミソンプは、彼に同意しつつスープを飲む。
「そういえば輸送中だった試作機2機が『クリミネル』に強奪されたって聞いた?」
食事しながらポストルは、いつものように世間話を振る。
「えぇ、さっきニュースで聞いたわ」
ポストルが口にした『クリミネル』とは、ガルディアンが最も危険視している反政府勢力だ。
今のところクリミネルの明確な目的は不明。
ガルディアンに反旗を翻す行動から恐らくガルディアンを崩壊させ、世界支配を企んでいると推測される。
クリミネルは、行き場のない人々や現体制に不満を抱く者を言葉巧みに自らの陣営へ取り込んでいる。
そうすることで戦力を拡大させ、壊滅したガルディアン支部基地跡地や廃都市内を自らの拠点としている。
その拠点内にはわざとクリミネルの構成員ではない無関係の者を住まわせている。
無関係の民間人を巻き込むことで迂闊にガルディアンが手出しできないようにするためだ。
一部の間ではガルディアンに匹敵する戦力を保有しているのではないかと言われている。
そんな組織が、昨日ガルディアン第14支部基地へ輸送中だった試作機2機を強奪した。
幸い負傷者はおらず、被害は試作機2機を奪われただけで済んだ。
「レアシオン社の人や護衛してた人たちが無事だったのは良かったけど」
レアシオン社とは、ガルディアン第10支部基地領土内に本社と大規模な工房を構える大企業だ。
エグゼキュシオンや侵略者用の兵器、ダイレクトスーツの開発及び生産を行っている。
また、ガルディアン第4支部基地とガルディアン第8支部基地に支社もある。
ガルディアンとは切っても切り離せない重要な関係性だ。
「噂では護衛がいつもより手薄だったらしいけど」
ポストルは、意図的にレアシオン社がクリミネルへ試作機2機を渡したのではないかと考察している。
実際に現場を見た訳ではないため、根拠もなければ確証もないただの噂話でしかない。
だが、噂ではレアシオン社が派遣した護衛がいつもより手薄だったらしい。
また、今回の襲撃には不自然な点がある。
突然クリミネルが襲撃してきたにも関わらず、交戦した痕跡が見当たらない点だ。
ニュースでもその点について報道されており、試作機を無傷で手に入れたかったからではないかと見ている。
しかし、普通ならいきなり自社の製品が奪われそうになれば何かしら抵抗するだろう。
相手が過激な反政府組織ともあれば尚更だ。
もし噂通り譲渡であれば色々と辻褄が合う。
レアシオン社からしたら輸送中にクリミネルの襲撃を受け、奪われたことにすれば都合が良い。
クリミネルと対立関係にあるガルディアンからの追及を逃れられ、自社製品のシェアも広げられる。
「もしそうならただの注意不足なだけ」
憶測をあれこれ議論しても意味がないと考えるミソンプは、素っ気ない言葉を返した。
そして、左手に持つ銀色のスプーンでポレンタを掬い上げて自身の口に運ぶ。
「そうかもしれないけど裏でクリミネルとレアシオン社が繋がってるって噂を信じたくなるよ」
「確かにポストルがそう考えるのも分かるぜ」
「怪しい点がありますからね」
今回の事件前からクリミネルとレアシオン社が裏で繋がっているのではないかという噂がある。
根拠として、クリミネルが所有する機体や武器がレアシオン社製のものばかりだからだ。
もちろんレアシオン社側は、クリミネルとの繋がりを否定し続けている。
侵略者が戦闘した際、廃都市などに破棄された武器などをクリミネルが回収して再利用していると主張。
それに加え、ガルディアン側が裏でクリミネルにエグゼキュシオンや武器などを横流しているのではないかと逆に疑いの目を向けている。
ガルディアン側は、レアシオン社に依存しており、レアシオン社との関係悪化を恐れ、強く主張できない。
また、ガルディアン側にもクリミネルを支持している人が少なからずいるの事実。
その者たちが裏で協力している可能性も否定できない。
真実は闇の中である。




