24 虹子とカレーライス
翌日はクライネの練習参加。
今の自分が持っているベストを出すしかない。
虹子は、新宿中央公園で凌駕たちとボールを蹴った時の感覚を思い返していた。
華は、すぐに風呂へ入れるようお湯まで準備してくれていた。
「少し時間経ってるから、適当に追い炊きしてね」
そこまで気を利かせてくれる。
蕾は店の後片付けなどがあり、夜まで二階へ上がってこないらしい。
そして晩ご飯には、華がカレーを作ってくれていた。
虹子が風呂から戻ると、
華「虹子、右手こうしてみて」
虹子「こ、こう?」
華は手のひらへカレー皿を乗せた。
華「インド人の女の人みたい」
虹子「えっ……」
華「こっち向いて」
カシャッ。
「華、それって偏見じゃないの?」
「インド人のお友達いるから」
「え、マジッ!?」
「浜松のインド料理店のマンスーラさん。美味しいカレーの作り方を教えてくれたのも彼女」
「リア友か」
「お姉ちゃんと同じくらい年上だけど、素敵な人だよ。今度食べに行こう」
華は何事もなかったように席へ着く。
二人で手を合わせた。
「いただきます!」
虹子が一口食べる。
「うまっ」
「ほんと?」
「何、この舌触り……生姜?」
「そっ。生姜とすりおろしたリンゴ。ココナッツミルクも少し」
「だからピリッとしてるのに、マイルドなんだ」
「虹ちゃん、辛いの苦手だったでしょ」
「小学生の頃はね。今は克服したけど、ありがとう」
「うふふ」
華がスマホをいじっている。
――この顔、何か企んでるな。
虹子が止めるより、華の行動は早かった。
「クライネのUNITYグループに送っちゃった♪」
「こいつめ」
「何事も掴みが肝心だから」
「な、何て書いたの?」
「『インドから来た謎の練習生、ニジコ・アサオカール3世です』」
「インドから来てないし、謎じゃないし、アサオカールって何だよ。3世も余計」
すぐにリアクションが飛んできた。
あかり:なにっ、インドから謎の練習生だと!
さら:インド代表が助っ人で来るって?
ひなぎく:カレーどうまそう。
みれい:質問! カレーはどうして辛いんですか??
みこ:どんな奴のシュートも私は止めてみせる。守護神の名にかけて!
ともえ:奇遇だな。私もカレーを食べていた。
ひなぎく:ずっこいな。
「はあ〜」
虹子は呆れた。
でも、続々届くメッセージやスタンプを見ていると、笑いをこらえられなくなった。
華もニコニコしている。
「こんな連中だから。明日は気を楽にしていいよ〜」
クライネがどんなチームなのか、少しだけ分かった気がした。
少なくとも――。
「暗いね」ではなさそうだ。
ただ、チームを率いる室崎かぐら監督は厳しい練習で選手たちを鍛えているという。
サッカーを再開して、まだ1か月足らず。
長い帰宅部生活もあった。
一番の不安は体力だ。
与えられた時間は2日間。
その中で、自分がクライネに必要な選手だと認めてもらう。
虹子はもう一口カレーを食べた。
――うん。やっぱり、うまい。
明日のことは、明日考えよう。
今は華のカレーを味わう。
そう思っていたはずなのに、気づけば皿は空になっていた。
「……やっぱ、食べるの早いな。あたし」
「うふふ。おかわり、あるよ」




