22 おかえり、虹ちゃん
「次は〜浜松、浜松です」
車内アナウンスが流れる。
虹子は荷物を持ち、降車口へ移動した。
午後6時32分。
東海道本線の豊橋行きは46分発。
虹子:浜松着いた。46分発の電車に乗る
華にメッセージを送り、ホームで撮った自撮りも添えた。
すぐ華から写真が返ってくる。
背景は、お互い大して映えていない。
「なんだ、似たようなもんじゃん」
それでも華の顔を見て、目を細める。
「しっかし、美人に成長してるな、華は」
豊橋行きへ乗り換えた。
帰宅時間帯で、座席は埋まっている。
虹子はドア脇に立った。
華:舞阪駅に着いたよ
虹子:すぐ行く
そこからの10分間が、やけに長かった。
車窓から見る夕焼けの色も深くなり、日没が近づいている。
高塚まで6分。
舞阪までは、さらに4分。
たったそれだけ。
なのに鼓動が速くなる。
ジュニア時代、一緒に全国を制した仲間。
大切だったのに、行き違いから疎遠になった友達。
それでも、待っていてくれた。
「もうすぐ華に会える」
電話では、あれだけ話した。
メッセージもたくさん交わした。
なのに、緊張する。
舞阪駅が近づく。
ホームに、オレンジ色のシャツを着た長い髪の少女がいた。
「……色、かぶったわ」
思わず口元が緩む。
ドアが開いた。
虹子はホームへ駆け出した。
「危ないですよ!」
車掌の声が聞こえる。
目の前には華。
虹子も走る。
華も走る。
そして抱き合おうとして――。
ゴツンッ!
華「痛った〜!」
虹子「あたたっ!」
二人そろってしゃがみ込んだ。
電車の乗客も、車掌もこちらを見ている。
でも次の瞬間、
華「うふふ」
華が笑い始めた。
虹子「顔当たらないように、左へズラしたのに」
華「こっちだって右へズラしたんだよ」
虹子「いきなり噛み合わない」
華「うふふ。城北の最強コンビ、完全復活には時間が必要だね」
電車が動き出す。
虹子は車掌へ軽く手を振った。
車掌も笑いながら手を振り返してくれた。
虹子は一度、深呼吸する。
改めて目の前を見る。
電話の向こうでもない。
スマホの画面でもない。
4年前まで毎日のように隣にいた華が、今また目の前にいる。
再会最初の言葉が「あたたっ」になった。
でも、そのおかげで緊張はどこかへ消えていた。
ずっと華に伝えたかった。
虹子「華、ただいま」
華「おかえり、虹ちゃん」




