↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フィールドの虹をかける。 〜 ep1 リスタート 〜  作者: 河治良幸
リスタート
PR
20/44

19 スリー・オン・スリー

挿絵(By みてみん)

 新宿中央公園の多目的広場。

 6人で輪を作り、一つのボールを回す。


 男子3人はU-16日本代表。

 夕輝も女子の代表経験者。

 それでも、虹子が一番驚かされたのは類だった。


 ボールを扱う技術は凌駕に引けを取らない。

 むしろ上回っているようにすら見える。


雄斗「風見さん、うますぎるんだけど」

類「ルイでいいよ」

雄斗「お、おう」

凌駕「ハギ、反応分かりやすいな」


 慣れてきたところで、6人のうち2人が鬼になる鳥籠へ。

 遊びとは思えないテンポだ。

 虹子はついていくのがやっと。

 何度もパスを引っかけられた。


 長くサッカーから離れていたブランクが、こういう単純なボール回しにも表れる。

 それでも、このメンバーと蹴っていれば、どんどん上手くなれそうな感覚があった。

 そして、志田賢太のボール奪取力は凄まじかった。


虹子「シダケン、ボール奪うのうますぎない?」

賢太「そ、そんなこと」

凌駕「良かったな〜、シダケン。虹ねえにいいところ見せられて」

賢太「んだと、コラー!」

凌駕「うわ、あっぶねー」


 賢太は昔から身体は大きかった。

 しかし、とても臆病だった。

 ボールが当たっただけで泣き出し、試合に出る姿もほとんど見た記憶がない。

 いじめられそうになった賢太を、虹子が助けたこともある。

 親分肌だった虹子が相手を叱りつけ、それ以来、彼に手を出す者はいなくなった。


 あの賢太が、今はU-16日本代表。

 この数年間で何があったのか。

 虹子には分からない。

 ただ、見違えるほど成長したことだけは確かだった。


凌駕「よし。じゃあ、そろそろ3対3やろうか」

夕輝「どう分けるの?」

凌駕「男子チーム対女子チーム」

夕輝「ちょっとリョウくん。それはひどいでしょ」


 ゴムボールとはいえ、男女の体格差はある。

 夕輝のスピード。

 類のテクニック。

 それでも、ボール回しとゲームは違う。


虹子「夕輝さんの言う通りだと思うけど」

夕輝「そ、そうよね。朝丘さん」

虹子「虹子でいいって」

夕輝「それなら、あなたも“さん”を取りなさいよ」

虹子「えっ……ユ、ユウキ」

夕輝「ほらっ! 言えないじゃないの」

類「わたしなんて最初から夕輝だよ〜」

夕輝「あなたは厚かましすぎるのよ」


 ルールは単純だ。

 女子チームが基本的に攻める。

 男子チームはコンタクトで奪うのは禁止。

 男子側はボールを奪ったら、1本のパスとドリブルだけで目標地点を目指す。

 女子側は何本でもつないでいい。

 どっちもロングキックや浮き球は禁止。


凌駕「あと、男からボディタッチしたら一年間『すけべ野郎』な」

虹子「それ、あんたがやったらどうするの」

凌駕「俺もともと、すけべ野郎だから」

夕輝「ちょっとリョウくん。はしたないわね」


 夕輝が頬を膨らませる。

 虹子は内心、その意外な可愛さに驚いた。


類「へえ、面白そう。りょうちんが考えたの?」

凌駕「ま、まあね……」


「何よ、りょうちんって。馴れ馴れしいわね」と夕輝が割って入る。

「いいじゃん。親友の彼氏なんだから〜」

「か、彼氏……」

「あはは。夕輝、顔が赤い」

「そもそも、あなたを親友にした覚えはないわ」


「ええ〜」

類は大袈裟に泣くフリをした。

「知り合って5日でしょ」と夕輝。

「いっぱい話したでしょ〜。恋話とか」

「ちょ、ちょっと!」と言い返しながら、凌駕をちらちら見る。

 虹子には、それが少し微笑ましかった。


挿絵(By みてみん)


 そして、自分が思っていたほど複雑な気持ちではないことにも気づく。


虹子「やっぱりそうなのね」

凌駕「いや、そんなんじゃ……」


 「ほら、早くやろうぜ。暗くなるから」

 ”ハギ”こと萩原雄斗が話を切った。

 さすが代表のキャプテンだ。


 ゲームは15分×2本。

 両チームの目標は、20メートルほど離れた木と木の間。

 横幅も目分量で決めた。

 遊びのサッカーだ。

 細かく縛りすぎない方がいい。


 虹子は、できるだけ二人のお荷物にならないよう意識した。

 だが――。


 類からパスを受けた瞬間、凌駕が寄せてきた。

 強引にキープしようとして、あっさり奪われる。


凌駕「チャ〜ンス。ハギ!」

 カウンター。

 その後も何度も、虹子のところでボールを失った。


 凌駕。

 雄斗。

 賢太。

 誰にも通用しない。

 開始5分ほどで0―2。


 気持ちばかり焦り、どんどん周囲が見えなくなる。

 夕輝が大きく息を吐いた。


「リョウくん、ちょっとタイム」


 夕輝が凌駕に近づいて何かを伝えると、男子3人は公衆トイレへ向かった。

 くだらない冗談を言い合いながら離れていく。


 夕輝が虹子へ向き直った。

夕輝「あなた、なんでこうなってるか理解してるの?」

 語気は強い。

 類も少し心配そうに見ている。


虹子「あたしが、下手だから」

夕輝「違うわよ!」

 一瞬、虹子の身体が固まった。


夕輝「あなた、私たちのこと全然見てないでしょ」

類「そうだよ、虹子」

虹子「あっ……」


 頭を鈍器で殴られたような感覚だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。