↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フィールドの虹をかける。 〜 ep1 リスタート 〜  作者: 河治良幸
リスタート
PR
19/44

18 新宿中央公園で待つ

挿絵(By みてみん)

 週末の静岡行きを翌日に控えた木曜日。

 虹子は学校の授業を終えると、いつもの都電ではなく地下鉄の駅へ向かった。


 陸上部を辞めて以来ずっと帰宅部だった虹子が、学校の鞄とは別にスポーツバッグまで持っている。

 当然、クラスメートから珍しがられた。


 地下鉄の雑司ヶ谷駅へ向かう途中、鬼子母神駅前の「うまいメロンパンの店」へ寄る。



 大好物のメロンパンを一つ。

 本当は二つ欲しい。

「我慢、我慢」

 自分に言い聞かせた。


 雑司ヶ谷から副都心線。

 新宿三丁目で丸ノ内線へ乗り換え、西新宿駅へ。

 駅のトイレで藍色のジャージに着替え、地上へ出る。


 ビルやホテルが並ぶ向かいに、大きな緑が見えてきた。

 新宿中央公園。

 陽子へ目的地を伝えた時、


「40年ぐらい前、そこで殺人事件があったのよ」

 などと物騒なことを言われた。

「えっ?」

「テレビゲームの話だけどね」


 検索すると、本当に昔の探偵ゲームが出てきた。

 虹子は一時期、推理小説にはまったこともある。

 少しだけ探偵気分になりながら公園へ入った。


 もちろん殺人現場などではなく、多目的広場では小学生たちがゴムボールを蹴ったり、キャッチボールをしたりしている。


 凌駕との集合時間は16時30分。

 まだ30分以上ある。

 公園内の「STAR ROCKS CAFE」でアイスラテを買い、店先のベンチへ座った。


虹子:中央公園のスタロ前にいるよ〜

 凌駕にメッセージを送ると、メロンパンをかじり、冷たいラテを流し込む。


 周囲にはそれぞれの生活がある。

 ノートパソコンと睨めっこする会社員。

 高校生のカップル。


挿絵(By みてみん)


 買い物帰りらしい女性。

 何となく眺めていると、


「おーい、虹ねえ!」

 声が聞こえた。

 凌駕だ。


 右手にはボール。

 ただし、公式球ではない。青いゴムボールのようだ。

 そして、その後ろには――


 一、二、三……四人。

 男子が二人。

 女子が二人。

「あっ」

 思わず声が出た。


「虹子〜、元気?」

 風見類だ。

 さらに、巻き毛のツインテール。


星野夕輝ほしのゆうき……」

 まったく想像していなかった組み合わせだった。


挿絵(By みてみん)


 さらに見覚えのない男子が二人。

 一人は見上げるほど長身で体格もいい。

 もう一人は凌駕より小柄で、後ろ向きにベースボールキャップをかぶっている。


 夕輝が先に口を開いた。

「どうも、お久しぶり。セレクション残念だったわね」


 ――久しぶりって、会ったの四日前だろ。

 嫌悪感を顔に出しかける。

 ただ、凌駕から話も聞いている。


「ども。力不足でした」

 淡々と返した。


 類は横でニコニコしている。

 対照的な二人だが、実力者同士。

 きっとヤングシスターズでも良いコンビになるのだろう。


 それにしても――

 仲良くなるの、早くないか?


凌駕「こっちは萩浦雄斗はぎうらゆうと。東京ヤングブラザーズのチームメート。サイドバックで、めちゃめちゃ足が速い」

雄斗「よろしく。凌駕から話は聞いてる。ユウトって呼んで」

 ――どんな話だよ。


凌駕「ハギでいいよ」

雄斗「おいこらっ」

虹子「ハギくん、どうも。朝丘虹子です」


 小柄ではあるが、身体つきはいかにもアスリートだった。

雄斗「一応、俺は二年で凌駕の一つ先輩。でも早生まれだから、代表の活動とか一緒で」

凌駕「ハギ、こう見えてU-16日本代表のキャプテンだから」

類「あはは。ハギくん、すご〜い」

雄斗「そ、そんなことないよ」


 類の反応に、雄斗が分かりやすく照れる。

 虹子は少し眉をひそめた。


凌駕「ハギは見た目によらず、本当に頼りになる男だよ」

雄斗「見た目は余計だろ」

類「可愛いのに頼りになるのね」

雄斗「そんなでも…」


 顔を赤くしている色ボケ童顔男は放っておいて――。

 虹子はもう一人の大柄な男子を見る。

 どこかで見たことがある。

「ええっと〜」


凌駕「こっちのデカいのは志田賢太しだけんた

虹子「えっ、もしかしてシダケン!?」

賢太「おっす。お久です」

虹子「あの鼻たれ小僧が……こんな立派に」

賢太「ハナタレ……」

虹子「あっ、ごめんごめん」

 男性陣でも一際大柄な賢太が、照れたように顔を背けた。


凌駕「こいつさ、小6でも城北ウイングのレギュラー取れなくて、中学でも2年の夏まで補欠だったんだけど――」

賢太「おい、俺のことはいいって……」

凌駕「たまたま出たブルーレッド東京との練習試合で大活躍して、そのままスカウトされたんだ」

賢太「だからいいって!」

凌駕「なんだよ。お前、虹ねえに憧れてたじゃん」

賢太「おいっ、それ今言うか!」


 凌駕は賢太にアームロックを決められながら、

「言っちゃえよ〜、虹子さんが好きだって」

 と叫び、その場に沈没した。


虹子「殺人事件……」

類「あはは」

夕輝「ちょっと、二人とも不謹慎でしょう。リ、リョウくん?」

虹子「大丈夫なの?」

雄斗「まあ、二人はいつもこんな感じだから」


 今度は雄斗まで、

「それにしても、賢太が憧れていた虹子さんが目の前――」

 と言いかけて捕まった。

「グハッ、暴力はんた〜い!」


 まったく、男子ってやつは……

 そういう虹子も、中学の途中まではこんな感じで男子とばかりつるんでいた。

 新鮮でありながら、どこか懐かしい。


 復活した凌駕が、抱えていたゴムボールを指先で回した。

「さて、挨拶も済んだし、そろそろやろうか」

虹子「てかさ、なんでゴムボール?」と虹子。

凌駕「この公園、公式球は禁止だから」

虹子「そっか……」


 都内では、ボール遊びそのものが禁止されている公園も多い。

 虹子も小学生の頃、近所の公園で怒られては別の場所を探し、またボールを蹴った。

 それくらい、サッカーが好きだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。