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【悲報】光の国が滅びたので、最後の【輝石】を持って脱出します~薪ではなく【善き心】で輝く石と、滅びかけた世界の挽回劇~  作者: 風風風


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第1部(1) 第4話【 新緑の罠と神霊の矢 】(上)

父の遺志を継ぐのは自分しかいない。


改めて、そう思い定めた。


朝日に照らされながら、

カイとミーナは

宿敵の国へと第一歩を踏み出した。

竜脊山脈の冷涼な空気は、

尾根を下るにつれて急速に熱を帯び、

湿り気を含んだ青くさい風へと

変わっていった。


【ヴァルナ神国】——。


無数の大河と原生林に抱かれた

その国土は、

白亜の岩と乾いた風の街であった

アシャニアとは何もかもが違っていた。


巨木が天井を覆う熱帯の樹海の中、

見上げるほど巨大な石造りの橋や、

色鮮やかな彩色が施された鳥居状の門が

幾重にも立ち塞がっている。


「すごい……お兄ちゃん、

樹が生き物みたいに動いてる……」


ミーナが感嘆の声を漏らしながら、

カイの服の裾を強く引っ張った。


言葉の通り、

足元を覆う太い蔦や色鮮やかな巨花は、

まるで呼吸をしているかのように

ゆっくりと葉を揺らし、

微かに甘い香気を漂わせている。


「油断するな、ミーナ。

ここはもう……敵の領土だ」


カイはランタンを抱える手に力を込めた。


手の中の【原初輝石】は、

澄んだ青白い光を保っている。


山脈の不浄を打ち払ったことで、

カイの心には

確かな「覚悟」が据わっていた。


だが、

この国で自分たちを待ち受けるのは、

ソーレム帝国のようなわかりやすい

「闇」や「破壊」ではない。


数千年間、アシャニアを

「自分たちの神々を悪魔と呼んだ裏切り者」

として憎み続けてきた、異質な信仰の壁だ。


静寂を破ったのは、

風を切り裂く一筋の鋭い音だった。


「——そこまでだ、邪教の残党」


シュッ——ガンッ!


カイの足元、わずか数センチの地面に、

見慣れない意匠の太い矢が

深く突き刺さった。


矢羽には

色鮮やかな孔雀の羽根があしらわれ、

矢身には

金色に輝く細かなルーン文字が

びっしりと刻まれている。


「ミーナ、下がるんだ!」


カイは咄嗟とっさに短剣を抜き、

ミーナをかばうようにやいばを構えた。


頭上の巨木の枝々から、

まるで影が滑り落ちるかのように、

数人の影が無音で地に降り立った。


身に纏うのは、

孔雀や虎を模した鮮やかなシルクの衣と、

身体のラインを際立たせる

しなやかな革甲冑。


顔半分を黄金の仮面で覆ったその者たちは、

古代の弦弓や異形の月形曲刀シャムシール

カイへと向け、

一切の隙なく距離を詰めてくる。


ヴァルナ神国が誇る精鋭国境警備部隊——


神霊武僧アヴァターラ】。


「動くな。

それ以上足を踏み出せば、

その喉笛のどぶえち抜く」


中央に立つ仮面の男が、

低く静かな声で宣告した。


その手にある弓には、

つるを引いていないにもかかわらず、

蒼い光を放つ

霊子れしの矢がすでに生成されている。


「俺たちは戦いに来たんじゃない!

ソーレム帝国に国を追われ、

助けを求めて来たんだ!」


カイは必死に声を張り上げた。


だが、

武僧たちの黄金の仮面の下にある瞳は、

氷のように冷ややかだった。


「ソーレムの侵略など知ったことか。

我らが問うているのは、

お前がその手に抱える

のろわれし石』のことだ」


武僧の視線が、

カイの抱えるランタンへと注がれる。


「……信じがたい。

太古の禁書に記された通りだ。

神々の存在を否定し、

聖なる霊素デーヴァ

悪魔の毒と定義し直した、

不敬極まる『アシャの邪石』。

まさか実在していたとはな」


「邪石じゃない!

これは不浄の闇を払い、

人の『善き心』に反応して輝く

真理の光だ!」


「黙れ、ペルシャのペテン師め!」


武僧のひとりが激昂げきこうし、

曲刀の柄を固く握りしめた。


「我らがまつる神々を

悪魔ダエーワ』とさげすみ、

世界から神聖を追い落とそうとした

奪還の徒が!


その歪んだ石が放つ『偽りの光』は、

この森に息づく聖なる神霊たちの

秩序を乱す毒だ!」


彼らにとって、

カイの輝石が放つ浄化の光は、

自分たちの神々(自然霊や精霊)の

力を押さえつけ、消滅させようとする

「悪魔の呪具じゅぐ」に他ならなかったのだ。


(言葉が……届かない……!)


カイの胸に、焦りと絶望が込み上げる。


ことわりの争い」だ。


どちらが悪でどちらが善かではない。


数千年間積み重ねられてきた

「神々の定義」の相違が、

あまりにも深い断層となって

カイたちの前に横たわっていた。


父の遺した教えが、やがて

ユダヤ教やイスラム教など、

この世のいくつかの宗教の礎になる

ことなど、

カイ自身も想像だに出来ないことだった。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

カイの心が困惑に揺らいだ瞬間、

手の中の輝石がチカチカと不吉に脈動し、

青白い光量を落とした。


「見ろ、不浄に怯えて光が陰った!

やはり邪教の術か!」


「引導を渡せ! 首を撥ねて神々に捧げよ!」


武僧たちが……。


本日、18:30 に、第4話(下)を投稿します。

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