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【悲報】光の国が滅びたので、最後の【輝石】を持って脱出します~薪ではなく【善き心】で輝く石と、滅びかけた世界の挽回劇~  作者: 風風風


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第1部(1) 第2話【 漆黒の追撃と泥の少女 】(下)

(恐れるな。憎むな。今、

俺の前にある『善きこと』をなせ!)


覚悟を決めた瞬間、

ランタンの中でくすんでいた鉱石が、

まばゆいばかりの黄金の光を吹き返した。


「だれだ!?」

ヴァルツが素早く振り返る。


闇を切り裂いて躍り出たカイは、

一足飛びに少女の前へと降り立った。


「少女から離れろ、

ソーレムの鉄のイヌども!」


「……ほう」

ヴァルツの狭いかぶとの隙間から、

細められた目がカイを、

そして

その胸でまぶしく輝く小ランタンをとらえた。


「その奇妙な光……お前か。

王都から『輝石きせき欠片かけら』を持ち出したという

邪教の残党は」


「邪教じゃない!

この石は、人間が『善き心』を持つ限り、

絶対に消えない真理の光だ!」


カイはランタンを左手で高く掲げ、

右手で腰の短剣を抜いた。


「小さな子供を痛めつけて

勝利を誇るのが、

お前たちの『法』か! 恥を知れ!」


カイの言葉に呼応するように、

輝石から放たれた光の波動が

波紋のように広がる。


光を浴びた兵士たちの甲冑かっちゅうから、

黒い煙が立ち上った。


彼らのよろいに付与されていた

「不浄の強化術」が、

聖なる光によって解かれ、

甲冑の重量が一気に

兵士たちの身体に重くのしかかる。


「ぐっ……なんという不快な光だ……!」


「隊長、体が重い……!」


兵士たちがひるんだ隙を、

カイは見逃さなかった。


素早く身を屈めると、

恐怖で固まっている少女を抱え上げた。


「走れるか!?」


「あ……うんっ!」


「俺の光から離れるな! いくぞ!」


カイは少女の手を強く握り締め、

ソーレム兵の脇をすり抜けて

森の奥へと駆け出した。


「追うな」


兵が追撃しようとしたのを、

ヴァルツの手が制した。


ヴァルツは

煙を吐く自らの篭手こてを見つめながら、

暗闇に消えていく黄金の光の軌跡を

静かに見送っていた。


「……燃料も魔法陣も介さず、

人間の『意志』のみに反応して

不浄を無力化する光か。

法秩序を乱す、まことに危険な代物だ」


ヴァルツは長剣をさやに納めると、

低い声で命令を下した。


竜脊りゅうせき山脈への全関門へ打電せよ。

『光をたずさえる者』が向かっている。

一粒の灰ものこさず、山の中でつぶせ」


漆黒の森を抜け、

開けた小高き丘の上に辿たどり着いた頃、

東の空がうっすらと白み始めていた。


「はぁ……はぁ……ここまで来れば、

追っては来ないはずだ」


カイは少女を優しく地面に降ろした。


少女は涙と泥で汚れた顔を拭うと、

カイの手の中にあるランタンを、

うっとりと見つめた。


「お兄ちゃん……これ、なぁに?

すっごく……あったかい」


「これは……『原初輝石げんしょきせき』の欠片かけらだよ」


カイは少し照れくさそうに微笑み、

膝をついて少女と目線を合わせた。


「君の家族は……?」


「……お父さんもお母さんも、

黒いよろいの人たちに……」


少女の瞳から

ポロポロと大きな涙がこぼれ落ちる。


カイは胸が締め付けられる思いだった。


自分と同じだ。

この幼い少女もまた、

一夜にしてすべてを奪われたのだ。


「名前は?」


「……ミーナ」


「そうか。ミーナ、俺はカイだ」


カイはそっとミーナの頭をでた。


「俺は東の……

遠い山を超えた国へ行かなきゃならない。

そこへ行けば、

この光で世界を元に戻す方法が

わかるかもしれないんだ。……

一緒に来るか?」


ミーナは鼻をすすりながら、カイの顔と、

胸で優しく脈動する黄金の石を

交互に見つめた。


そして、小さな手でしっかりと

カイの服のすそつかんだ。


「行く……! お兄ちゃんと、

そのきれいな光と一緒にいく!」


「よし」


カイがミーナの手を握り直すと、

ランタンの中の輝石が、

まるで祝福するかのように、

一際ひときわあたたかくまばゆい光を放った。


見上げれば、遠く東の地平線に、

雲を突き破る

巨大な山々の影がそびえ立っている。


竜脊りゅうせき山脈】。


アシャニアとヴァルナ神国をへだてる、

死の天険てんげんだ。


守るべき仲間を得た青年と、一粒の光。


彼らの往く手には、更なる過酷な試練と、

ソーレム帝国の容赦なき罠が待ち受けていた。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

標高が上がるにつれ、

緑豊かな森林は姿を消し、

ゴツゴツとした黒泥こくでいの岩肌と、

鋭い吹雪が

カイとミーナの肌を打ち叩くようになった。


明朝、6:30 に、第3話(上)を投稿します。

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