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【悲報】光の国が滅びたので、最後の【輝石】を持って脱出します~薪ではなく【善き心】で輝く石と、滅びかけた世界の挽回劇~  作者: 風風風


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第1部(2) 第3話【 第4補給廠(ほきゅうしょう)の影と鉄の律法 】

荒野の向こうで、

帝国の補給廠が吐き出す黒い煙が、

茜色の空をどす黒く染め上げていた。


新たな協力者を得て、

カイたちの西への旅は、より深く、

危険な帝国の懐へと進んでいく。

灰塵かいじんの荒野の

地平線を埋め尽くすのは、

巨大な黒い鉄の砦だった。


ソーレム帝国第4補給廠ほきゅうしょう


無数の巨大な煙突から吐き出される

黒煙が空を遮り、

周囲には酸っぱい鉄と油の匂いが

充満している。


砦を取り囲む高さ十メートルの鉄柵には、

不気味な赤光を放つ「律法呪印りっぽうじゅいん」が

ぎっしりと刻み込まれ、

侵入しようとする生き物を

内側から腐敗させる

不浄の結界を展開していた。


「見ろ、あの結界だ。

生き身の人間があの柵に触れれば、

3秒で肉が腐り落ちて

『不浄の奴隷ドラグ』に変えられる」


砦を見下ろす岩陰で、

元帝国の魔導技師レノが、

鋼鉄の義足の関節を

カタカタと鳴らしながら指差した。


「ですがレノさん、あの門からは

ひっきりなしに馬車が入っていきますよ?」


カイが手提げランタンを抱えながらたずねる。


「ああ。あそこを通過できるのは、

帝国の『通過許可印(ID)』を

持った商人か、捕縛された

『資源(精霊や他国の捕虜)』だけだ。

正攻法じゃあ、お前さんのような

『アシャニアの生き残り』は

一瞬で蜂の巣にされる」


「キュイ、キュイ!」


カイのランタンの

取っ手にしがみついていた小精霊が、

小さく羽を震わせて西側の鉄壁を指差した。


「……小精霊が言いたいのは、

排水排煙のルートだな」


レノが不敵に笑い、

ポケットからすすけた設計図を広げた。


「砦の西側に、

精霊の力を絞り尽くした後の

『廃液』を流し出す巨大な排水口がある。

俺が技師だった頃に

設計を手掛けた場所だ。

あそこなら結界の密度が薄い。

お前さんの輝石の光で

不浄の廃液を中和しながら進めば、

内部へ潜り込める」


「……わかりました。行きましょう」


カイはミーナの手を握り締め、

意を決して身を起こした。


排水口の内部は、

呼吸をするのも躊躇ためらわれるほどの

ドブ泥と

ドロドロとした黒い廃液で満ちていた。


不浄の冷気が

カイたちの肌を削ろうと迫る。


だが、カイが静かに

「善き意志」を胸に宿すと、

ランタンの原初輝石が

澄んだ琥珀色の光を放ち、

三人を取り囲むように

直径2メートルほどの

「清廉な空気の領域」を作り出した。


黒い廃液が光に触れた瞬間、

ジュッと音を立てて透明な水へと戻り、

周囲の毒気が消え去っていく。


「……へっ、何度見ても大したもんだ」


背後を進むレノが、

自らの鋼鉄の義手を見つめながら呟いた。


「俺のこの右腕も、

帝国にいた頃に

不浄の廃液を浴びて腐りかけた時に、

生き残るために義肢に変えたのさ。

不浄ってのは、人の命も精神も

『効率のいい部品』に変えちまう。

……お前さんの光は、その真逆だな」


「部品……?」


ミーナが不安そうに見上げる。


「そうさ。帝国にとって、

人間も精霊もただの

『数字』と『燃料』に過ぎん。

……ほら、着いたぞ」


レノが古い鉄格子を

義手で力任せにこじ開けると、

三人は補給廠ほきゅうしょうの内部——巨大な

精霊抽出せいれいちゅうしゅつ区」へと躍り出た。


そこに広がっていたのは、

言葉を失うような惨状だった。


吹き抜けの巨大なドーム状の空間に、

幾重もの

巨大なガラス管が立ち並んでいる。


その内部には、ヴァルナの樹海や

各地で捕らえられた無数の小精霊や

異国の精霊たちが閉じ込められ、

胸に打ち込まれた「律法呪印」によって、

自らの生命力エーテルを絞り出されていた。


絞り出された光は、

黒いチューブを通って

巨大な魔導機関へと送られ、

帝国の兵器を動かす

「不浄の燃料」へと変換されていく。


「そんな……! 精霊さんたちが……!」


ミーナが口を押さえ、涙を浮かべた。


「キュイイイッ! キュイッ!」

カイの肩にいた小精霊が、

ガラス管の中の仲間たちに向かって

必死に羽を羽ばたかせる。


「これが、帝国の言う『効率』か……!」


カイの胸に、

激しい怒りといきどおりが燃え上がった。


自らの利益と秩序のために、

生き物の命と意思を奪い、

燃料として消費する。


アシャニアの聖火を打ち砕いた理由も、

これだったのだ。


「怒るな、カイ!

感情に呑まれると光が濁るぞ!」


レノがカイの肩を強く掴んだ。


言われた通り、

カイの怒りに応じるように、

ランタンの中の輝石が

どろりと赤黒く濁りかけていた。


不浄の気配が漏れ出し、

警報の鈴が鳴りかける。


(落ち着け……!

怒りに身を任せちゃダメだ。


俺がなすべき『善』は、

怒ることじゃない。

この子たちを救うことだ……!)


カイは深く呼吸をし、目を閉じた。


絶望や怒りを払い、

目の前の命を救うという

純粋な「覚悟」に精神を統一する。


輝石が瞬時に澄み渡り、

痛烈なほどの純白色の光を吹き返した。


「よし……! レノさん、

このガラス管の制御弁はどこですか!?」


「あっちの集中制御台だ!

だが気をつけろ、あそこには——」


レノの言葉が完成する前に、

天井の鉄骨からドスンと重い衝撃音が響いた。


「——ネズミが迷い込んだかと思えば、

『アシャニアの生き残り』と裏切り者のレノか」


黒煙の中から歩み出てきたのは、

重厚な漆黒の甲冑を纏った男——

ソーレム軍追撃隊長、ヴァルツだった。


その身に纏う黒い甲冑には、

竜脊山脈の時とは

比べものにならないほど不気味な

「律法呪印」が刻まれ、

周囲の空間を歪めるほどの

圧倒的な不浄の圧力を放っている。


「ヴァルツ……!」


「久しいな、小僧。……。


本日、18:30 に、

第2部 第4話(上)を投稿します。

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