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【悲報】光の国が滅びたので、最後の【輝石】を持って脱出します~薪ではなく【善き心】で輝く石と、滅びかけた世界の挽回劇~  作者: 風風風


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第1部(1) 第5話【 紫水晶の審問と神聖の断層 】(下)

「な……なんだ!?」

武僧長が素早く刀に手をかける。


続いて聞こえてきたのは、

市街地からの人々の悲鳴と、

獣の咆哮のような

おぞましい叫び声だった。


紫水晶の間全体が激しく揺れ、

天井から砂礫がパラパラと落ちてくる。


「審問官様! 大変です!」


部屋の扉が勢いよく開かれ、

血相を変えた神官が飛び込んできた。

「聖都の中央大池で執り行われていた

『神霊降臨の儀』が……!

 降臨された大河の神霊様が

 突如としてお苦しみになり、

 おぞましい『黒き蛇』へと

 姿を変えて暴走をはじめました!

 市街地が破却されています!」


「なに……!? 神霊様が暴走だと!?」

 

サティが立ち上がる。


紫色の瞳に激しい動揺が走る。


「そんなはずはありません!

 神霊様が自ら民を傷つけるなど……!」


「黒い煙です!」


神官が叫ぶ。


「神霊様の肉体から、

 見たこともない黒い煙と、

 鉄の腐ちたような

 不快な匂いが噴き出しています!」


カイの背筋に、氷のような冷気が走った。


(鉄の腐ちた匂い……!?)


「ソーレム帝国……!」


カイは思わず声を上げた。


「ソーレム帝国の『不浄の術』だ!

 奴らは

 王都アシャラドでも同じことをした!

  聖なるものを黒い汚染で塗り潰し、

 中から腐敗させるんだ!」


「な、何を馬鹿なことを!」


武僧長がカイを睨みつける。


「我が聖都の結界を破り、

 ソーレムの工作員が侵入できるはずが——」


「言い争っている場合ではありません!」


サティは毅然とした声で武僧長を制すると、

机の上のランタンを自らの手で抱え上げた。


「地上へ向かいます!

 カイ、あなたも来なさい!」


「え……!?」


「あなたの言う

『不浄の術』とやらに我が国の

 神霊が侵されているのだとすれば……

 確認しなければなりません。

 あなたと、その石の『真実』を!」


サティはカイの腕を強く引くと、

揺れる地下通路を駆け上がっていった。


地上に出たカイたちの目に

飛び込んできたのは、

地獄のような光景だった。


かつて清らかな水で満たされていた

聖都の中央大池は、

泥のように濁った漆黒の液体へと

変貌していた。


その中央から立ち上るのは、

何十メートルもの巨躯を誇る、

黒い異形の巨大な水蛇。


その巨蛇の身体からは、

黒い煙が吐き出され、

触れた建造物を次々と

黒く腐食させていく。


蛇の頭部には、

ソーレム帝国特有の「黒い律法呪印」が、

気味が悪い赤光を放ちながら

深々と刻み込まれていた。


「神霊様……!

 ああ、なんというお姿に……!」


周囲の神官たちが崩れ落ち、

頭を抱えて泣き叫ぶ。


「サティ様! 近づいては危険です!」


武僧たちが刃を構えて庇おうとするが、

巨蛇が放つ「黒い不浄の波動」が広がると、

武僧たちの体が麻痺し、

次々と膝をついて吐血した。


「うぐっ……体力が……抜けていく……!」


神霊の神聖な力と、

ソーレム帝国の不浄な術が混ざり合い、

手に負えない「黒い災厄」となって

聖都を呑み込もうとしていた。


「カイ……!」


サティが振り返り、

抱えていたランタンをカイに差し出した。


「見せてみなさい、アシャニアの少年!

 あなたの言う『真理』が、

 この哀れな神霊様を……

 我が国を救えるのかどうかを!」


カイはサティからランタンを受け取った。


巨蛇の咆哮が響き渡り、

黒い不浄の泥が

カイたちに向かって

津波のように押し寄せてくる。


逃げ場はない。


武僧たちも、神官たちも、ミーナも、

絶望に目を瞑った。


だが、カイの踏み出す足は、

一度も怯まなかった。


(助ける……!

 アシャニアも、ヴァルナも関係ない!

 今、目の前で苦しんでいる神様も、

 人々も……俺が助けるんだ!)


憎悪でも、証明のためでもない。


ただ眼前の命を救いたいという、

純粋で絶対的な「善き意志」。


カイがランタンを高く掲げた瞬間——


ガオオオオオオンッ!!!!


紫結晶の間で蓄えられていた静寂を破り、

天地を揺るがすほどの

「黄金と純白の閃光」が、

ランタンから世界へと解き放たれた。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

天を貫く純白の光柱が、

暗雲に覆われた聖都の空を切り裂いた。


ランタンから放たれた光は、

熱を持たぬまま溢れ出し、

濁り切った中央大池の表面を

激しい波紋となって駆け抜けていく。


明朝、6:30 に、第6話(上)を投稿します。

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