4羽:人助けしたウサギさん
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
僕は音のする場所から少し離れた穴からヒョコっと頭を出した。
かなり近い、土煙でよく見えないけどたぶんあの辺に居るんだろう。
『ちょっ、無理! 無理だって!』
『アンタ盾でしょっ、もっとケツに力入れて踏ん張んなさいよっ!!』
『無茶言うなよっ!?』
『いやああああっ!? 死ぬ、死ぬっすうううう!!』
『ふええええっ、私の魔法が効かないよー!』
何か賑やかだ、声が必死だけど割と余裕ありそうだな?
人数は・・・たぶん4人か、男女二人づつだな。んでもってやっぱり人間か!
念願の人! でも僕はすぐに跳び出さない、相手が良い人間か分からないからだ。
戦っているのは石の鬣に蛇の尻尾を持った、たぶん2メートルくらいある巨大な狼。火を吐いてくるから、僕はあいつをバーゲストって呼んでる。
あいつ火を吐くだけじゃなくて石の弾丸飛ばしてくるし、足がめっちゃ速いし、何よりも群れで行動するからマジ嫌いなんだよな。
「今回も数が多いなー、どうしよう・・・」
そんな事を思ってたら・・・あっ、盾の人がふっ飛ばされた。
戦線崩壊してんじゃん、あーこのままじゃ皆仲良くおまんまコースだな。しゃーない助けてやるか。
「みんなー、準備は良いかー?」
「「「「「ぷぅいー!」」」」」
「一斉に行くぞ、3・2・1っ。《沼》!」
「「「「「ぷぅっ!」」」」」
僕の掛け声に合わせて子供達が魔法を行使する、地面がグニョグニョ動き出しバーゲスト達の足を飲み込んだ。
僕がこの5年間、ただご飯を集めて地面を掘っているだけだったと思うか?
兎は弱い、僕だってそのぐらい知ってるし鍛えて勝てるだなんて思ってない。でも負けたまんまってのも悔しいじゃん? だから僕は考えたのさ、この子達も出来る戦い方ってやつをね!
子供達は伊達に一年中土を掘ってるわけじゃない、土魔法の扱いにかけては一級品だ(と僕は思ってる)。そしてこの発達した聴力と、何かのスキルだろう仲間の状態を察知する能力を使い、僕達は一糸乱れぬ連携が取れる。
この子達が使ったのは土魔法のバリエーションの一つ《沼》、相手の足元を液状化して機動力を落す魔法だ。
ただ今回はバーゲストと奴さんの距離が近すぎる、ってなわけで足止めをもう一つ。
「次、《硬化》!」
「「「「「ぷぅいーっっっ!!」」」」」
どろどろに液状化した泥に足を取られたバーゲスト達は戸惑ったり転んだりしている、その纏わりついた泥を今度は逆にガッチガチに固めた。
過去、馬鹿でかい猪の突撃にだって耐えた硬化魔法だ。犬っころ如きが抜け出せると思うなよーっ、はっはっはー!
バーゲスト達は何が起こっているか理解出来ていないのだろう、でも邪魔された事だけは分かったらしく悔しそうに牙を剥きだしにして唸っていた。
おー怖っ、犬なのに全く可愛くないな。少しはうちの子達を見習いなよ、ほら魔法を使う掛け声ですら可愛い! あー、ホント可愛い。え、マジで可愛いな、一万年に一人の美少女だなこりゃ。まぁ女の子にしか見えないけど男の子も居るし、そもそも100羽もいるけどなー。
おっとと、そんな事を考えている場合じゃなかった。
僕は子供達に急いで彼等を穴に引っ張り込むよう指示を出した。
みんなちゃんと出来たねー、偉いよ。あとでナデナデしてあげよう! その人達は『仲間』、そう『仲間』だから丁寧に運んであげてねー。
子供達が倒れてる人達の近くまで穴を掘り、一人また一人と穴の中に引きずり込んでいった。
そして僕のウサミミはそれを邪魔するやつの音を聞き逃さない。
「ガアアアアアッッッ!!」
「きぃーっ⁉」
一匹、犬っころを捕まえ切れていなかったらしい。
鋭い牙が迫り、うちの子は倒れている人を庇おうと腕を広げてそれを遮る。
──が、僕がそれを許すとでも?
「うちの子に何すんじゃっ! 死ね、犬っころ!!」
「ギャヒンッ!?」
僕の蹴りがバーゲストの横っ面に炸裂。バーゲストは飛んで行った先で泥を被り、そのまま《硬化》で捕縛した。
あっ、足から変な音した・・・骨が折れたかもしれない、ウサギの骨は弱いからなぁ〜。
僕はズキズキと痛む足を庇いつつ、助けた子に歩み寄った。
「大丈夫だった? あー、よしよし怖かったね。怪我は? 無いね、良かった!」
「くー、くぅん・・・」
僕は全員が穴に入ったのを確認し、最後に穴に入る。
バーゲスト? あー、たぶん誰かのエサにでもなってるんじゃない? 弱肉強食の世界だし、仕方ないよ。
こうして僕達の兎ハウスに初めてのお客さんがやって来たのだった。
助けたのは、どうも人は人でもただの人間じゃ無いっぽかった。
一番頑丈そうな鎧を着ている男の人、あと魔女っぽい女の人はたぶん普通の人間。ただ、槍を持ってた男の人はリザードマンっぽい爬虫類系の人。弓を持ってた女の人は獣耳が生えていた、たぶんネコ系。
猫耳触っちゃダメかな? 僕ネコ派なんだよなー。セクハラになるかな?
僕がまじまじと猫耳を観察していると、さっきバーゲストに襲われた子が凄くしょげていた。
え、どしたん? 僕が怒ってると思ったの? 別に怒って無いよ・・・ってあぁ、何で知らない人の為に体張ったんだろって思っただけだよ。君の方が大事に決まってるじゃん、何でそんなことしたの?
・・・僕が言ったから? 何を・・・って、あぁ! 僕が『仲間』って言ったから守ってくれたのか!
僕はしょげてる子を膝に乗せて優しく撫でた。
「そっか、僕が『仲間』って言ったから守ろうとしてくれたんだね、ありがとう。あと僕の言い方が悪かった、ごめんね」
「くー?」
「うんうん、全然怒って無いよ、それに君は凄く偉いよ、良い子良い子。いっぱい褒めちゃう♪」
「ぷぅぅぅ♪」
「おぉ、甘えんぼさんだねぇ。愛い奴め~」
僕が目いっぱい褒めてあげていると、羨ましがって集まってきた子達とでわちゃわちゃになった。
可愛いのう、此処は天国か──って、いでででっ!? 足の骨があああああっっっ!
その後、みんなで採ってきた木ノ実を食べながらマッタリと過ごしていると、助けた人たちが目を覚ました。
「・・・ここは?」
「あっ、目ぇ覚ました?」
「どぅわああああああっ⁉」
何だよそんなにビックリすることないじゃん、僕ってそんなに顔酷いか? 結構可愛いと思ってるんだけど。
その後彼等が起き、話せるようになるまでしばらくの時間がかかった。
あ、ちなみに足の骨と腫れは、次の日には何故か完治していた。解せん。
◆◇◆◇
(ここは何処だ? 死んだんじゃなかったのか?)
俺が目を覚ますと、そこは薄暗い場所だった。
かなり広い空間のようだがあまり光が無い、どこかに閉じ込められたのか? ──そうだっ、あいつ等は!?
周囲に目をやればすぐ近くに大切な仲間の姿があった、軽く見ただけだが怪我は無さそうだ。
ひとまず俺は胸を撫で下ろした。
(あの状況からどうやって生き延びたんだ? アルメリアの魔法か?)
どう考えたって生き延びれる状況じゃ無かった、となると仲間の魔法で何かをしたのだろうか?
もしかするとここは彼女が作った土壁の中か?
状況が理解できない俺は、暗闇の奥で何かが動いている事に気が付いた。
(あれは・・・誰かいるのか?)
向こうも俺に気がついたらしい。
もしかしてこの者達が助けてくれたのか? まずはお礼を。そう思った次の瞬間、俺は肌が粟立った。
赤、赤、赤
血のような真っ赤な無数の瞳が一斉にこちらを向く。いったいどれほどの数なのか、暗闇の中では把握しきれない。
そして彼等が手にしている物を見て気を失いそうになった。
その手にしている物が何かは分からない、ただ赤く水気のある──そう、まるで肉のような何か。
(まさか、俺達は助けられたわけじゃなく・・・・)
危機は去っていなかった、こんなことになるならどうして目を覚ましてしまったのか。
『きっと俺達はこれから生きたまま食われる』
俺はあまりの恐ろしさに、暫く声を発することが出来なかった。
真っ暗な所でいっぱいの目を向けられたら、誰だって怖い
今日の更新は此処まで。
また明日の19時頃から更新しますので、宜しくお願いしますm(_ _)m




