3羽:すくすくと育っ⋯たなかったウサギさん
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
あれから5年ほどの時が流れた。
僕達兄弟姉妹はすくすくと育・・・つことも無く、何とサイズはそのままだった。
兎獣人は小学生くらいが大人サイズらしい。
そしてそんな中で、何故か僕だけが中学生サイズに成長した。なんでやねん。
もしかしたら僕だけフレミッシュジャイアントの兎だったのかもしれん。
それはさておき、僕だって5年間ただ何もせず草食ってたわけじゃない。
あれからちゃんと巣の外に出たし、辺りを色々と調べた。
草だけじゃない、果物だったり、小動物だったりを獲り仲間の食事情改善に取り組んだりしたし、小物を作って生活の質を向上させたりもした。
そんな事をしていたからだろう、何か知らん間にリーダー的存在になってた。
世紀末リーダー伝イナバちゃんの誕生だ。
あ、そうそう。僕の名前は『イナバ』ね。
本名だぞ、別に兎だからそう付けたわけじゃない。どちらかというと、その名前だったから兎に生まれ変わった気がする。
どちらにしても酷い話だ、遺憾の意を表する!
さて、この5年間コイツ等と一緒に過ごして色々分かった事がある。
これが驚きなんだけど、僕最初「育児放棄かーっ!」って怒ってたじゃん? あれ、僕の勘違いだったわ。
親ね、居たのよ最初から。そうこの子供たちの中になっ!
見た目が幼すぎて見分けつかねーの、ビックリだわ。
んで、そんな僕達ファミリーが今何羽居るのかというと、なんと驚きの100羽オーバー。
増えてんじゃん、増え過ぎじゃね?
実はこの子達、地球の兎と同じく多重妊娠が出来る。
そして一回に3〜5羽産むもんだから、どんどん増える。
しかもその子供たちがなんと二ヶ月で大人になって、更に産んで増える。
スゴイネー。
兎が今までどうやってこの場所で生き残れたか、分かった気がした。
僕達が居るこの場所、『魔境』って呼んでるけど、この場所はとても過酷な場所だ。
周りが凶暴な生き物だらけで僅かな水や食料を得るだけでも命懸け、とてもじゃないけど兎が生きていける環境じゃない。
だから地上での生存戦略を早々に諦めた僕は、地面の下に巨大な居住空間とインフラを作り上げた。
だってこの世界のどこに安全圏があるのかさっぱりだし。
あと、どうやらこの魔境には僕たち以外にも結構あちこちで兎達が生き残っているみたいで、家を拡張しているとたまにお隣さん(?)と家が繋がっちゃうんだよね。
コイツ等は仲間を見付けたら合流する習性でもあるらしく、その持ち前の耳で土の中からでも仲間を探して土を掘ってくる。で、繋がった瞬間「あ、やっぱり居た」みたいな顔で嬉しそうに混ざってくんのよ。
放っとくと死んじゃうかもしれないし、仕方なく一緒に面倒見てやってたら気付けばこの状態。
僕もどの子がどのグループだったか分かんなくなった。
ちなみに、魔境の土ってクッソ固いんだけど、みんな土の魔法が使えるみたいでウニョウニョーって家が大きくなっていく。
耐荷重大丈夫かって心配した時もあったんだけど、それも魔法で固めているらしくてウニョウニョした後は元より固くなる。ガッチガチです、イヤン。
ただ新しいものを探しに行く時など、どうしても地上を歩かなきゃいけない時があって、その時に犠牲が出ることがある。
でも一度移動してしまえば地下を掘り進めて、次回からは犠牲も無く食べ物や水を得られる。
そうやって僕が色々対策したことで犠牲は最小限になりここまで数が増えた。
ただ最近思う事がある。
この世界って本当に全部がこうなんだろうか? 文明圏あるんじゃない?
この子達の安全は勿論だけど、もっと『生き残る!』以外の事を考えられる様にしてあげたい。
この子達は決して頭は悪くない、言ったことはすぐに覚えてくれるし戦略だって従ってくれる。文明に触れれば人に交じって生きていける筈なんだ。
でもそれにはまず人を探さなきゃいけない。
・・・居るのか、人。
「居ないかもしれないものを探すのは・・・ちょっとリスキーだなぁ。何か切っ掛けでもあれば・・・」
僕は腕を組んでうんうん悩んだ。
組んだ拍子にポヨンと素敵な膨らみが腕に乗る、まぁ素敵も何も自前のおっぱいだが。
「そういえば僕と、他にも何羽か女の子らしい身体つきになってきたよな。これもどうにかしないと」
現状スッポンポンです、これはいけない。
ちなみに僕は他より成長していることもあり、それなりに女の子らしいスタイルだ。だから他の娘には悪いけど一人だけ毛皮の服(らしい何か)を着ている。
しかし着心地が悪すぎる、ゴワゴワだ。早急に布が欲しい。
「課題がいっぱいだ。はぁ・・・」
肩を落とす僕を心配してくれたのか、子供達が集まってきた。
「く〜?」「くぅん?」「くー、くぅー」
「何だ、心配してくれるのか? ありがとうな、大丈夫だぞ」
「「「ぷゅい♪」」」
やべ、めっちゃ可愛い。
この子達は絶対に喧嘩しないし、仲間を受け入れ、自分の身を犠牲にしてでも仲間を守ろうとする。
そして何かの能力なのか仲間の様子が可怪しいと機敏に察知して寄り添い、音が聞こえないくらい遠い場所にいる仲間の状況も把握する。
だから僕が困った顔をしてたりすると、心配してわらわら集まってくるんだ。
そして上目遣いに心配してくれる様子は、鼻血が出そうなほど可愛らしい。
「大丈夫だぞー、でもありがとうな! ほれナデナデしてやろう」
「ぷぃー♪」
「ぐぅっ! ぐゅうっ!」「ぶっ、ぶっ!」「ぐぅ・・・」
「あははっ! 大丈夫、全員撫でてあげるから引っ張るなって! ──って、いっぺんに来んなっ! ぐえぇぇー、つぶれるぅ・・・」
撫でられた子が羨ましかったのか、離れていた子も撫でてもらおうと突撃してきた。
ぐえぇぇー、くるしいっ! ヘルプミー!
◆◇◆◇
ひょこっ!
「右よーし、左よーし、空よーし、音よーし・・・よし出るぞ」
「ぷっぷっ!」「ぷぅっ!」
地上に頭だけを出した僕の合図で、子供達があちこちの穴から飛び出してくる。此処は去年見付けた木の実が自生しているエリアだ。
此処に来る為には羽根の生えた蛇の棲む崖を越えなきゃいけなくて、以前地上を移動した時には少なく無い犠牲が出てしまった。
しかし今では地下に道を開拓済み、最小限の危険で手に入れる事が出来ている。
「よーし、撤退。てったーい! 地下に入った子から順に家に向かっていきなー」
「「「ぷぅー!」」」
木の実を抱えて、子供達が穴に入っていく。
この穴は家までの直通路で、万が一敵が入ってくるとヤバいが普段は蓋を閉じてある。
蓋は勿論例の土魔法でコネコネしたやつで超頑丈、僕たちは安心してあちこちに道を延ばせるって寸法だ。
僕は全員が入り、子供達がそれぞれの穴の蓋を開かないよう接着するのを見届けてから穴に入る。これもリーダーの役目だからね。
「さて、最後の子も入ったし僕も入っ──何だ?」
僕のウサ耳が、かなり遠くで聞き慣れない音を拾った。
微かに聞こえるこの音は・・・金属音?
魔境の化け物の中には、鉄みたいに硬い外皮を持っている奴もいる。でもあくまで“みたい”なのであって、こんな鉄のぶつかり合うような音はしない。
これは間違いなく、金属が硬い何かにぶつかる音だ。
金属はその辺に転がっているもんじゃない、ってことは・・・。
「にん、げん? 人間が近くに居るぞっ!」
「ぷぅ?」
僕の様子が気になったのか何羽か戻って来てしまったようで、穴から僕を見ていた。
「おい、お前ら! 半分は木ノ実持って帰宅、半分は着いてこい。あっちの方の道に行くぞ!」
「「「ぷぅっぷぅー!」」」
子供達が僕の言葉を聞き、敬礼で答えた。
あれっ、そんなん何処で覚えたの?
僕も参加したい、ぷぅぷぅ!
作品を気に入って頂けましたら、★★★★★を頂けると嬉しいです。
宜しくお願いしますm(_ _)m




