表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ウサキック物語  作者: 草食丸
2章:人助け、悪徳ギルドにウサキックの巻
PR
42/44

19羽:大量生産するウサギさん

ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)

『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』

 ・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい


『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』

 ・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい


『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』

 ・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい

 遂にベヒモスが動き出した。

 その動きは非常に緩慢だが、あの巨体だ。ただの一歩が人間の全力疾走すらも超える。

 様子見なんてしていたら、今ある距離くらいあっという間に詰められるだろう。とにかく城壁に取り付かせるわけにはいかない、騎士さんと冒険者さんは左右に分かれベヒモスへと駆け出していく。

 そしてベヒモスはというと、そんな彼等を一瞥(いちべつ)もせず真っ直ぐに城門に──いや、僕に向かって来た。


 やっぱり僕を見ている、なんでだろう? 僕はあのベヒモスと初めましての筈なんだが・・・。

 卑怯なやり方が気に入らなかったのかな? でも仲間意識とか無さそうだしなぁ・・・白いからか? でも此処には子供達も居るし、何なら白髪の人も、白い鎧の人も居る。僕だけを見る理由は無いよね?


 理由が分からなくて気持ち悪いが、ひとまず子供達達が狙われるよりはマシかと考え、僕も皆から遅れて戦場に駆け出すのだった。





 ベヒモスはまるで、重厚な鎧を着た騎士のような魔物だった。

 一本一本が針金・・・いや、鋼のような毛で覆い尽くされた筋肉質の体。そしてゴリラを彷彿とさせる太く長い腕に、取ってつけたような尻尾。

 腕の一振りで数人を軽く吹き飛ばす剛腕だけど、反面無茶苦茶に暴れるような事はしない。

 一定以上のダメージを与えられる者にしか意識を向けもしない。言い換えれば、弱者には手を出さない。

 まぁ、僕に集中してるからかも知れないけど。

 狙いを定めたら、まるで一騎打ちでもするようにその人とだけ戦う。その様子は正しく僕イメージする騎士そのもの。


 現状あの毛皮の鎧を超えられる人は居なくて、仕方なく皆は毛皮の無い場所を狙っていた。即ち鼻先と手足先だ。

 でもその場所は弱点でもあると同時に、ベヒモスが最も攻撃しやすいポイントでもある。

 仕返しとばかりに食らった反撃で、冒険者さんが重傷を負って空を舞う。子供達はその人を空中でキャッチして、すぐさま城門へ退避。僕の咲かせた花畑で癒して戦場に戻るという状況が繰り返される。


 《月光華》は何度だって咲かせられるし、僕に治せない傷は後方で待機している治術師部隊が治してくる。だから皆は何度だってベヒモスに立ち向かうだろうけど、装備はそうもいかない。


 皆が一級品の武器を装備してるわけじゃない。

 城門に帰ってくる騎士さん冒険者さんの装備は、その殆どが半壊している。今はまだ予備はあるけど、いずれそれも尽きる。

 僕と同じ最悪の想像をしたんだろう、隣でギルマスが苦々しい顔をしていた。

 その時、ベヒモスから悲鳴が上がる。



「うるさっ!? ・・・一体何?」



 僕はウサ耳を押さえつつベヒモスに視線を向ける。

 そこには、傷を押さえ周囲を威嚇するベヒモスの姿があった。押さえる手の下からは、僅かだが血が滲んでいる。誰かがあの鎧を突破したらしい。


 ベヒモスの威嚇する先を見る・・・って、リドッ!?



「どぉっすか、痛いっしょ。お前、たぶん毛皮の下にダメージ受けたこと無いんじゃ無いっすか? 予想外に効果ありっす」



 あのリドが、お調子者で飄々としていて何処か雑魚臭のするリドが、ベヒモスに痛打を与えてる。うっそぉ〜・・・。



「何かイナバちゃんから、失礼な視線を感じるっすうううっ!?」



 だって君なんだかボケキャラっぽいんだもん・・・。


 槍を巧みに操るリドは、繰り出される攻撃を横から薙ぎ払うことで反らし直撃を避ける。いや、それどころか、その勢いを利用し攻撃を浴びせていた。

 まるで、槍を使った合気道だ。


 腕や尻尾の一薙ぎで剣が折れ吹き飛ばされ、どんどん退場していく中、ただリドだけが戦場に残り続けた。

 槍にも曲がった様子は無い、なんて耐久性だ。



「この槍、すげぇ頑丈っす! 流石、イナバちゃんの武器っす!」



 ・・・あっ、あれ僕があげたやつか! 流石僕、意図せず伝説の武器を作ってしまったらしい。

 まぁ冗談はさておき、あれが僕の作った武器だってんなら、やる事は決まってる。

 僕は地面に手を着き、武器を作りまくった。


 子供達が僕の下に集まり、武器をどんどん戦場に運んで行く。

 とりあえず騎士さん達優先で配らないといけない。彼らの武器は支給品で品質も均一。決して悪いものじゃないけど、一つ壊れるなら全部壊れると考えた方が良い。

 剣の次は盾、そして槍・・・いや、ハルバードの方が良いか。僕はとにかく必死で作り続けた。

 だから気付かなかった、ベヒモスの視線がまた僕に向いていることに。



「イナバ殿っ、危ない!」

「避けろっっっ!」



 草を薙ぐ様に振るわれたベヒモスの尻尾、地面に手を着いていた僕は反応が一瞬遅れる。

 気付けば、子供達が僕とベヒモスの間に集まっていた──子供達は受け止めるつもりらしい、例え死ぬとしても。



「何やってんだっ!!」



 僕の手が僅かに届かない、脳裏に魔境での地獄の光景が蘇る。


 ──間に合わないっ


 必死に伸ばした僕の手が空を切った時、突風がベヒモスの尻尾を下から打ち上げた。



「──guuuuaaaa!?」

「ぶわっ、何だ!?」



 あらぬ方向に尻尾が向いたベヒモスは、体が振り回され転倒。僕もすぐに子供達を引き寄せて、守るべく直ぐに覆いかぶさった。


 僕は直ぐに子供達の顔を見た。

 怪我は・・・無い、無い、この子も無い、そっちの子も大丈夫。あぁ・・・良かった、良かった・・・。

 どうして危険な事をしたのか、どうして身を守らなかったのか、言いたいことは山程ある。でも僕は何も言わない、言わなくても僕がどれだけ怒ってるか、この子達には伝わっているから。

 それに、それ以上に無事だった事が嬉しくて、涙が止まらなかった。



「くぅ~ん・・・」

「ぷぅぅ」

「良いんだ。良いよ、無事だったから。それだけで十分。うぅ・・・」



 このまま抱き締め続けたいけど、皆がまだ戦ってる。

 僕はベヒモスに視線を向けつつ、先程の風が何だったのか探った。すると後ろから、この場には似合わない朗らかとした声がする。



「ギリギリセーフだったわぁ、皆無事?」

「ミラさんっ!?」



 そこに居たのは、車椅子に乗ってやって来たミラさんだった。どうやら先程の風は彼女の魔法だったらしい。

 っていうか、なんで此処にいるの!? しかも車椅子で! 危ないじゃんっ、ディアスさんは何やってるの!



「貴女に言われてもねぇ、説得力無いわよー。ちなみにディアスは、私が“必死に”お願いしたら折れてくれたのー。私これでも魔導師なのよー、役に立つと思うわぁ」



 ディアスさん、可哀想に。きっと白髪が増えたことだろう。


 ミラさんは流石にベヒモスに向かうつもりではないようで、傍で僕の事を守ってくれるらしい。

 僕は先程肉の壁になろうとした子をミラさんの補助に着ける。勝手に命を捨てようとした罰だよっ、二度としないで!


 とにかくミラさんのお陰で武具作りに集中できるようになった僕は、皆が武器を求めて戻ってくるよりも早く、次々とストックを増やしていった。

 全員にそれが行き渡った頃、漸くベヒモスが傷らしい傷を負うようになってくる。いかな巨大魔物と言えど、500人の人間に攻撃をされ続けると平気とはいかないみたいだ。

 しかし次の瞬間、魔物が“何故生物では無い”と言われるのか、それを目にすることとなる。



「おい、おいおいおいっ。そりゃ無いだろう・・・」

「そんなっ・・・今までは本気どころか、戦いですら無かったってことなの!?」

「あんにゃろう、今迄そんな様子見せたことも無ぇじゃねぇかっ」



 近くに居た冒険者さん達から、悲鳴にも似た愚痴が飛ぶ。


 ベヒモスが突然、傍にあった木や岩を体に突き刺し始めたのだ。

 自棄にでもなったのかと思った僕だけど、その理由はすぐに判明する。刺さった岩や気が変化、腕が四本、そしてまるで鎧でも身に纏ったかのような姿へと変貌した。

 そりゃ無いでしょ・・・、僕だって同じ事言うわ。


 どうやら、そう安々と倒されてはくれないみたいだ。

フルプレートベヒモスに進化

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ