17羽:全員集合だよウサギさん
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
さて、小さい魔獣が片付いたわけだが、やっぱり僕の感じた事は間違っていなかった。
この魔獣達、『超弱い』。魔境じゃまず有り得ない弱さだ。
熊とか鹿とか色々居たみたいだし、彼等にも強い弱いの差はあったんだろうと思う。でも僕等にとってはそれが、ドングリの背比べにすらならない差でしかなかった。
バーゲスト一匹の方が余程面倒、魔獣が居るのに警戒しないとかウサギ的にあり得ないからね。
たぶん弱過ぎて、子供達は彼等を『遊び相手』と捉えたんだろう。集められた魔獣達が哀れ過ぎる。
なお、魔獣達が倒されたのを見てさぞ歓声でも上がるかと思いきや、皆「えぇ・・・」みたいな声を出して唖然としていた。
なんだよ、せっかく頑張ったのに。もちょっと喜んでくれても良いと思う、言っとくけど喋ってること全部聞こえてるからな。今「魔獣が可哀想」とか言った奴、あとでウサキックだからな。
まったく、大変遺憾である。
ちなみに、魔獣の落ちた穴は綺麗に埋め立ててやった。
小型の後を追うように大型魔獣が森から顔を見せた。
大型魔獣と言っても大きさはまちまちで、人の背を少し超える程度のものから、象の大きさを遥かに凌ぐものまで居る。
ただまぁ後ろにベヒモスが居るせいで、全部小さく見えるんだけどね。あれデカすぎだわ。
とにかく、ベヒモスが走り出す様子は無い。なら大型を叩く隙は今しか無いでしょう。
ただ相手が大型魔獣となると、先程とは勝手が異なる。流石にアレらが上がって来られないほどの大穴は空けられないし、沼だってそこまで深くできない。
僕達ウサギは嫌がらせや邪魔は得意でも、結局相手を倒す技は持ち合わせていない。
そして、いくらめのまえの魔獣が魔境の化け物に比べ幾分弱いと言っても、所詮僕達はウサギ。この体格差で蹴られでもしたら死んでしまう。だから先程のように真っ向から相手にしちゃいけない。でもまだ兵の集まりきっていない門に行かせるわけにもいかない。
・・・面倒だなぁ。っていうかバーニィさん達は何処行ったの? 居てくれたらもうちょっと楽だったのに!
ボヤいても仕方ないな。振り返れば城壁の方でも皆が動いているから、何やら作戦でもあるんでしょう。
僕はそれに期待して時間稼ぎだ。
「とことん足を引っ張ってやるしかないね!」
「ぷぷ〜!」
「ぷぷ? ぷぅぷぷぷぅ!」
でっかい魔獣達が地鳴りを響かせながら、駆けてくる。それに対して僕はひとり、魔獣の前に立った。
象やキリンを想像してもらえれば分かると思うけど、大型魔獣はその殆どが足だけで僕の身長を超える。沼で沈められる大きさじゃないな、深ければ深いほど作るのに時間がかかるのだ。
じゃあ土壁で動きを止めるか? いや、広く散られても面倒だ。それに万が一北西にでも動かれたら目も当てられない。
だから僕は魔獣達の道を妨げないことにした。
「そりゃっ!」
僕は「ダンッ!」と地面を踏み付ける。すると爆発するように土が巻き上がり、地面から巨大な土壁が幾つも生えてくる。
ただ生えてきた土壁は縦向きで、魔獣の進行を妨げられるようなものでは無い。そもそも当たらない様な位置に出した、僕が土壁を生やしたのは奴等が走っている左右側面側である。
魔獣達は勢いを落とさず、真っ直ぐに走ってくる。正直超怖い、ビルが迫ってくるような気分だ。でも泣き言を言ってる暇はないので、次の手に出る。
僕は魔獣達の足元を、すぐに出来る一番深い《沼》を作った。でも少し速度が落ちるくらいの効果しかない。そしてそんなに泥を被ってないから《硬化》も効果が薄い。
一番近い魔獣が《沼》を乗り越えて来る。そして地面を踏み締め駆け出そうとした瞬間、その足元にピンポイントで穴が空く。
「ガッッッ!?」
魔獣はズッコケた。でもそんなものはお構い無しと、後続の魔獣はそれらを踏み潰し迫ってきた。
障害物にもならないみたい。先頭は比較的小柄な個体だし、仕方ないね(それでも人間より大きいけど)。
体格差は能力を越えてくる。コレが数体相手程度なら完封出来る自信があったけど、数十の大型の群れで背水の陣じゃコレが限界みたいだ。
そして魔獣達との距離が残り50メートルを切った時、僕は準備が出来たことを察知し、フッと姿を消した。
『撃てええええーーーーっ!!』
僕の姿が消えると同時に、轟音を響かせ僕の背丈程もある巨大な槍が飛来する。城郭に設置されていたバリスタだ。
矢は大型の魔獣に次々と降り注ぎ刺さる。
そして発射する様子もそうだったけど、どうやら魔法的な何かが付与されているらしく、刺さった先で雷轟を響かせ青白く発光していた。
ダメージと動きの阻害を兼ねた武器みたいだ。僕はその様子を土の中で観察していた。
「ぷぷー」
「皆ありがとね、タイミングバッチリだったよ」
「ぷぅ~♪」
「きゅー♪」
僕が潜った穴の中には、僕の足元まで穴を掘ってきてくれた子供達が居た。
《共有》で知ってはいたけど、全員無傷で一安心。僕は子供達を撫でつつ、上の様子を窺う。
『次弾装填っ。奇数機発射後、偶数機発射。タイミングをズラして、次々撃てっ』
『イナバ殿が壁を作り、奴等は左右に避けられないっ。目を瞑っても当たる筈だ、とにかく発射速度を上げろっ!』
『『『はっ!』』』
うむうむ、僕の壁は上手く機能してるみたいだね。
そう、コレが僕がたった一人で大型魔獣相手に立ち向かった理由である。
魔獣達が姿を見せたタイミングで、僕を残して子供達は全員地面に潜った。そしてヒヤ達を探すよう指示を出していたのだ。
無事彼等を探し出した子供達は10羽一組で6つに分散し、各所に連絡を入れて貰った。ヒヤ達が6人兄弟で助かったよ。
そしてそのうちの一つが、『魔獣が真っ直ぐ動くようにするから、総攻撃をかけて』というお願いをヘイル隊長さんに伝えてもらう事だった。
後は僕がヘイル隊長さんの準備が終わるまで時間稼ぎするだけ、様子は音を拾って把握していたからね。
半数は地面の中から僕の補助。流石の僕でも此処から森までの距離に《土壁》を生やすことは出来ないからね。
そして残りは何処へ行ったかと言うと・・・。
『矢が撃てる人は奴等の目を狙ってっ! 刺さらなくても良い、視界を塞ぐんだよーっ!』
『近接職は掻い潜ってきた奴等を討つぞっ! 盾構えろ、俺らの役目は後ろにコイツらを通さない事だ!』
『俺っちたちは、バーナード達の隙間を縫って攻撃っすよ! 関節を狙うっす!』
『サササ、サンダースコールッ! 皆さんっ、電・水に絞って魔法を撃ってくださいっ! ひぃいいいっ、偉そうに言ってごめんなさいいいいっっっっ』
アルメリアさん・・・あとで精一杯癒してあげるとしよう。
獣耳理想郷という通訳を手に入れた子供達の残り5組には、街中の戦力を掻き集めて貰った。
念の為南門の様子を見に行っていた龍の翼や、避難完了し様子を見ていた騎士さんや冒険者さんだ。
そしてキモいけど頼りになるコイツらも。
『さぁロリ巨乳を崇拝する者達よっ、アルメリア嬢に続けーーー!』
『いやあああっ、キモいですうううーーー!』
『亜人ロリを愛する者達よっ、今こそイナバ様にアピールするチャンスなのでゴザル! 突撃ーーーーっ!』
『無知幼女は世界の宝、小兎様達をお助けするであります!』
『『『うおおおおおおーーー!』』』
やっぱりちょっと要らないかもって思った僕は、決して悪く無いと思う。
というかケモロリウス、魔法職なのに突撃してどうするのか。
こうして戦力の揃った僕達は難なく大型魔獣達を討伐していくのだった。
そしてそれが間もなく終わる頃、遂にそれが姿を現す。
やっぱり戦わないウサギさん




