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異世界ウサキック物語  作者: 草食丸
2章:人助け、悪徳ギルドにウサキックの巻
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16羽:得意技を披露するウサギさん

ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)

『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』

 ・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい


『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』

 ・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい


『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』

 ・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい

 さて、諸君に質問だ。

 敵わない敵から逃げる為に、大切な事は何だと思う?


 足が速いこと? まぁそれは当然の答えだよね。

 足が速いだけで、成功率はグッと上がるからね。君には1ウサポイントを差し上げよう。


 他には?


 隠れるのが上手いこと? うん、それもまた大正解だ。

 ただ足が速いだけじゃ、相手が諦めるまで走り続けなきゃいけないからね。君にも1ウサポイントを差し上げよう。


 ベストなのは走ってすぐ隠れて、『体力を温存しつつやり過ごす』。これが捕食者から逃げるのに最も大切な事だ。

 逃げた先で別の捕食者に見つかることだって当然あるし、その時にスタミナ切れだなんて目も当てられないからね。


 しかし魔境で生き残るには、それだけじゃ全然足りないんだ。それで逃げ切れるのは自分の一つ格上の敵くらい。その上にはまだ100も200も怖い奴が待ち受けてる。


 僕達ウサギより足が速い奴は当然居るし、僕達ですら察知できないくらい隠れるのが上手い奴もいる。

 空をジェット機並の速度で飛ぶやつもいるし、逃げられないくらいの範囲攻撃してくる奴もいる。


 だから足りない、全然足りないんだよ。


 そして何より、僕達ウサギは体が弱い。

 これは『逃げる』という機能を求めて進化していった結果、骨が鳥のそれと同じ構造になった為だ。要は“とても折れやすい”。

 実際、僕がバーゲストを蹴飛ばしたら、逆に足が折れたしね。バーゲストって魔境だと超弱い部類なんだよ、信じられないよね。


 蹴ったら折れる、ぶつかったら死ぬ。魔境の化け物相手だと、尻尾で撫でられただけで死ぬかも。

 さて、それを踏まえた上で、僕達の『逃げ隠れ』の成功率を上げるにはどうしたら良いのか。


 僕が出した答えは『囮』を作ることだった。

 あっ、勿論子供達の事じゃないよ?


 当たり前だけど、魔境の化け物達はウサギしか食べないわけじゃない。ウサギが一番食べやすいから狙われてただけ。


 ここで考えて欲しいんだけど、もし自分が肉食獣だったら『逃げるウサギ』と『動かない動物』のどっちを狙う?

 僕だったら当然後者を選ぶ。だって態々足の速いウサギを狙うより楽だし、何よりその方が“ケガをしない”。魔境でケガをする事は、死に繋がるからね。


 だから僕は、僕達を狙ってくる奴等の嫌がる事をとことん実行してやった。

 走ってくる奴は沼に填めてやったし、力自慢は泥を固めて動けなくしてやった。

 突進してくる奴は落とし穴に落としてやったし、飛んでくる奴には泥団子をお見舞いしてやった。


 別に僕達が倒す必要は無い。僕達は狙ってくる奴らを動けなくさせたり、ケガさせるだけで十分だ。後は他の怖い奴らがやってくれる。

 それを毎回繰り返し繰り返し続けていたら、数年経った頃には「ウサギに手を出したらヤベェ」って思われたんだろう、襲われる回数が明らかに減った。ウサギさんの大勝利だ!


 とにかくまぁ何が言いたいかというと、僕達ウサギは逃げ隠れの達人だ。

 そしてそれと同時に、『嫌がらせの達人』でもあったということさ!



「今宵のウサギは、超ウザいぞ! まだ明け方だけどなっっ」





 ◆◇◆◇





 迫る魔獣の群を見て、僕は「さてと・・・」と目下悩みの種に意識を向ける。

 それは先頭を馬で駆けてくる迷惑なおじさん達。まぁ今はもう一人になっちゃったみたいだけど。


 アレって助けたほうが良いんだろうか? 正直、踏み潰されてくれたほうが良い気もするんだけど・・・子供たちの手前、安易なこと考えちゃダメだね。仕方ない、助けよう。

 僕はお母さんだから、子供達の模範にならねばいけないのだ。



「ひとまずお母さんは、あのオジサン助けてくるから。みんなは列を乱さないで待っててね」

「ぷぷぅ」

「ぷぅっ!」

「ぷーぅ」

「うん、可愛くて宜しい!」





 あのオジサンと、続く魔獣との距離はたぶん100メートルも無い。本人としては、猛獣に首筋を舐められているような気分だろう。

 僕としては、オジサンより付き合わされてるお馬さんの方が可哀想だよ。アッチを助けるのじゃダメ? ダメか。


 僕は「はぁ・・・」とため息をしつつグッと足に力を込め、『跳ねる』。

 次の瞬間には、僕は()()()()()()()()()()()()()


「ひぃっ、ひぃっ、死にたくない死にたくない死に──えっ?」

「迷惑おじさんめっ、助けてあげるから感謝してよっ」

「き、貴様何処から──ぶはぁっ!?」



 ウサキックミサイル発射!

 投げる様に蹴飛ばされたオジサンは、一直線に子供達の待つ方へ飛んで行った後フワフワにした土に顔から着地、すぐにクレマチスさんに拘束された。僕はまた瞬時に子供達の隣へ移動する。


 そんな僕を見て、騎士や冒険者さん達が口を開けて驚いている。

 もしかすると皆からは、僕が消えた様に見えたかもしれないな。しかし別に手品でも何でも無い、僕はただ走っただけだ。

 兎と僕達ウサギの脚は一歩目からトップスピードが出せる。そして地球の兎は馬より速く、僕達ウサギはそれより更に速い。ただそれだけの話だ。

 まぁこの脚をもってしても、魔境じゃ逃げ切れないわけなんだけど。


 僕が戻った時、魔獣は本当に目前にまで迫っていた。距離はたぶん200メートルくらい、もう表情すら見える距離だ。

 あの『誘引香』とか言うのが関係あるのか、みんな興奮していて歯は剥き出し。涎ダラダラです、可愛げの欠片もない。もう少しウチの子たちを見習って欲しい。

 そしてどうやら、止まるつもりも無いみたいだ。まずはあの勢いを止める必要がある。


 土煙を巻き上げ迫る魔獣達、そんな彼等に僕は右手を翳す。子供達はそれに合わせて地面に手を着いた。

 全員準備が出来ている、目で見なくても僕達には《共有》で分かる。だから僕は手を振り上げるだけで良い。


 次の瞬間には、魔獣の勢いが止まっていた。

 群の最前列が『ズッコケた』のだ。



「グオオオッ!?」

「gyeeeeee!」

「ウキャアアアアッッッ!!」



 全力で走ってくる奴が一番嫌がることって知ってる? 足引っ掛けることだよ!


 ウサギの嫌がらせ、その1『ブービートラップ』。

 自転車で走ってる時、車輪に棒が引っ掛かったら怖いもんねー(笑)だから、足元に小さな《土壁》を出してやった。

 そして前がコケれば、後ろもコケる。そしてそれを踏んで越えてくるのも居る。


 倒れてるそれらを飛び越えて魔獣達が牙を剥いてきたので、その顔に《泥団子》をぶつけてやった。



「《硬化》!」

「ぷぷっ」

「ぷぅ~!」



 ウサギの嫌がらせ、その2『泥んこ目潰し』である。


 ジタバタと魔獣が藻掻く。

 突然視界を奪われたせいもあるだろうけど、何より鼻と口に大量に泥が入ったせい。そこに《硬化》の追い打ちだ。

 突然顔に泥がへばり付いた上に、それは石みたいに固まって剥がれないときた。


 警戒した彼等が「飛び越えられないならっ!」とか何とか考えたかは知らないけど、魔獣は左右に分かれる──が、それも僕の予想のうち。

 魔獣達にはもれなく、子供達の作った沼に沈んで貰った。グッジョブだ。


 更に続いて駆けてくる魔獣達。でも前がつっかえているから広がって進む。しかし、その先々で・・・。



 ひょこっ!

 ひょこっ!

 ひょこっ!



 地面から可愛らしいウサ耳が地面から顔を出し、《土壁》で邪魔をしてくる。あっ、鼻からぶつかった・・・痛そうだ。


 動きを邪魔された魔獣達は、ウサギに阻まれ右へ左へと進む方向を変えていく。

 右を向いてもウサギ、左を向いてもウサギ。近寄れば土壁に阻まれて、躊躇えば泥団子が顔に飛んでくる。

 そうしてウロウロと行き着いた先は、自身と同じく惑う魔獣達で犇めき合う場所だった。

 すし詰め状態の彼等は、一足遅く気付いたことだろう。


 ──自分達が誘導されていたのだということに。



「あでぃお〜す♪」



 ウサギの嫌がらせ、その3『落とし穴』。

 突然足場を失った魔獣の群れは、みんな仲良く大穴に落下していった。

決して直接戦わない、それがウサギスタイル

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