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異世界ウサキック物語  作者: 草食丸
2章:人助け、悪徳ギルドにウサキックの巻
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14羽:警報を鳴らすウサギさん

ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)

『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』

 ・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい


『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』

 ・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい


『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』

 ・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい

「ぅ゙〜〜ん・・・むにゃ?」



 僕は胸の上が妙に重くて、あまりの寝苦しさに目を覚ました。

 ぬっ、重い・・・腕が全く動かないっ、何だ? 金縛りか? 異世界で金縛りとか、マジで怖いからやめて欲しいんだけど・・・やけに暗いな、まだ遅い時間帯なのかな?


 突然身に降りかかったホラーに戦々恐々としていると、僕のうさ耳が聞き覚えのある音を拾った。



「ぷひゅ〜〜、ぷひゅ〜〜」

「ぷぴ〜〜・・・」

「ぷぅ・・・ぷぅ・・・」



 うむ、どうやら僕は愛しい息子娘に埋まっているらしい。なんでかな?

 子供達が僕の傍で寝ているのなんていつもの事だけど、こんなにも密集しているのは何かがあった時だ。その証拠に何羽か不寝番をしている気配がある、こんなのこの街に来て初めてじゃないかな?


 僕が目を覚ましたことで子供達も次々と目を覚ましていく。ちょうど傍に御馴染みセミボブ君がいたので、何があったのか聞いてみるとしよう。Hey,何があったか言ってみそ?

 ふんふん、微かに変な音が聞こえて近付いて来ていると? 気配も大きいと? だから集まって寝てたのか。そういえば僕の近くに居るの、全員幼年組の子ばっかりだ。どうやら幼い弟妹を守る体制をとっていたらしい。

 え、どうして僕が気付いてないのかって? どうも僕は子供達に比べて野生の勘が鈍いみたいなんだよね。


 それよりも、僕達ウサギは本気を出せば5キロくらい先の音もハッキリ聞き分けることが出来る。ロリキョメデス曰く身体強化の一つらしいんだけど・・・まぁそれは置いといて。そんな子供達が“微かに”と言ってるってことは、本当に遠くから聞こえてるんだろう。まぁ地下にいるせいかもしれないけど。

 僕は地面にペタリとウサ耳を着けて、音に集中した。



 ──ズ ゥ ン


 ──は──れっ!


 ──メ キ メキッ



 人の声? いや、それよりもこの音は木が倒れる音と・・・足音? 重い、あと大きい。そして沢山の何かが駆けてくる音。少しづつ大きくなってる・・・近付いてきてる? あれ、これヤバくない?

 僕は急いで《共有》で、うさぎ警報を流した。



『うさぎ警報(アラート)っ、バーニィさん達とモヒカン’sを起こしてっ!』

「「「ぷぷぅい!」」」



 僕の勘違いじゃなければ、これは──『スタンピード』だ。





 兎御殿に居る限り、龍の翼にも獣耳理想郷(アルカディア)にも必ずウチの子が着いている。今頃、警報を聞いた子供達が、家の何処かに居る彼等を叩き起こして・・・いや、ウチの子達は絶対そんな事しないな。きっとお手々の肉球でぷにぷにと優しく起こしているはず。ちなみにこれを別名『ウサ目覚まし』と言う。

 それから僕は、地上一階の広間に全員集まったのを確認して情報共有をした。



「イナバ殿、ヒヤ達から少し聞きましたが、確かな話ですか?」

「僕も見たわけじゃ無いから絶対じゃない、でも前の襲撃を大きく超える数の何かが街に向かってきてる。あと大きな何かも、それを追ってこっちに近付いてる」

「大きな何かですかい、大型魔獣でしょうかね?」

「いやアーベ、魔獣じゃあそこまでヒャッハーにならねぇ。たぶん魔物だろうぜ」

「まままま魔物・・・、まさかっ!?」



 たぶん全員が同じものを想像しただろう。



「イナバちゃんっ、距離は!?」

「此処と反対の東側だし、正確には・・・。でも、僕の耳でも微かにしか聞こえなかったから10キロくらい向こうかも」

「真っ直ぐ向かってきてるならそんなに時間は無いっすね」

「俺は急ぎ領主様の所へ行く、イナバ殿もお願いしますっ。マリアは目視で確認してくれ、ヒヤ達は可能なら動物から情報収集。後は衛兵に連絡、避難の手伝いだ!」

「分かった!」

「「「了解(でですっ!)(っす!)」」」

「「「「「「ヒャッハーッ!」」」」」」



 僕は幼年・年少組だけを連れて急ぎ領主邸へ、年中・年長組はバーニィさんに着いて行って貰った。

 子供達が見たものを僕が《共有》で確認出来るから、領主邸に居つつ最新の情報をディアスさんに伝える事ができる。そしてヒヤ達が居れば分散して行動も出来るから、こういう時僕達が分散して情報収集することが、最も人の命を救う事に繋がるってわけだ。それに調べて何も無ければ、僕がビビりだったって話で終わるしね・・・まぁ絶対何か来てるけど。


 えっ、子供達を危ない所に向かわせても良いのかって? 良いわけ無いじゃん、何言ってんの。

 でも僕は最近色々と考えたわけですよ。実は僕達が来てからこの街は数回魔獣の襲撃を受けてるんだよね、でもってその殆どで僕達は騒動の何かしらに参加してたのよ。防衛とか救護とか避難誘導とかね。つまり、日本に住んでたら想像もできないほど命のやり取りが身近にあるの、避けようが無いじゃん? だから僕は危険に合っても自力で逃れられるよう、実戦を学ばせようって考え直したわけです。

 だから今回も、絶対危ない事をせず危ない時はすぐに逃げるって約束して貰い、泣く泣く送り出した。あの子達は約束を絶対に守るから、これで少しは安心できる。

 僕は子供達の頑張りに報いる為にも、領主邸へ走った──バーニィさんを背負って。








「俺・・・人生でこれ程恥ずかしい思いをしたの、初めてです・・・」

「いや、ゴメンて。確かに女の子に背負われるのって恥ずかしかったよね?」

「違います、途中でお姫様抱っこにされた方です」

「だって背が違うから、背負ったら思った以上に走り辛くてさ。ゴメンね」

「いえ、もう大丈夫です・・・」



 あれから僕達はすぐ領主邸に着き、立哨している騎士さんに取り次ぎをお願いすると、すぐにジャスパーさんが出てきて客間に通してくれた。ただその際、バーニィさんをお姫様抱っこしている姿を見られて、バーニィさんが超凹み中。いやホントにゴメンて。


 それにしても、突然訪ねたのにジャスパーさんはビシッと決まってる、この人寝てるんだろうか?

 ジャスパーさんの凄さをしみじみ感じていると、寝間着にガウンみたいなのを羽織ったディアスさんが、息を切らして部屋に入ってきた。



「ジャスパーから聞いたが、魔獣の大群だと? 規模は? 確実な情報か?」

「僕も音を拾っただけだから。ただ木を踏み潰せるくらいの大きな生き物に追われる形で、数え切れない数の何かが街に向かってきてる。直線距離だと1時間も無いかも」

「もしかして、奴かっ」

「今俺達のメンバーと子兎達が、目視確認の為に東門へ向かっています。情報はすぐに届くかと」



 僕達うさぎは、あまり目が良くない代わりに夜目は人間の数倍も効く。だから日の出前の今なら、子供達のほうが遠くが見えるだろうな。

 そんな事を考えていたら、子供達から情報が伝わって来た。


 子供達の目を通して見えたのは、森の奥の方で上がる土煙。進行方向は多少蛇行しながらも、やはり街だ。

 土煙の元は木々が邪魔でよく見えないが、やはり沢山の異形の獣達が一目散に駆けていた。先頭には何がいるんだ? そして最後尾に居るのは・・・。



「ぅえっ、何だあれ!?」

「どうしたっ」



 最後尾に見えたのは、木々を薙ぎ倒し歩む信じられない程大きな生き物。あまりの大きさに、木がミニチュア模型に見える。しかも僕はあの巨大生物に見覚えがあった。

 全体的には猪感が強いんだけど、熊みたいな手足に捻れた禍々しい角を持った化け物。そう、あれは僕達が魔境で出会ったヤバい生物トップ10に入るモンスターで、僕達が《土壁》という防御手段を持つ切っ掛けになった奴だ。

 もう重機車両としか思えない突進力を持っていて、土壁でギリギリ防げる、でも気を抜けば突破される、そんなレベル奴。そしてこちらに向かってきているのは、僕達が魔境で会った奴の10倍はありそうな巨大猪だった。



「信じられないくらい大きな猪が・・・僕が会った奴の成獣?」

「猪・・・やはり奴か、『ベヒモス』だ」

「ベヒモス・・・またアイツかっ」

「これが『ベヒモス』・・・」



 部屋の空気が一気に重くなる。ディアスさんとジャスパーさんは俯き、メイドさん達は顔を青くしていた。

 そして僕が『猪』と呼んでいたアレの名前が漸く判明。ベヒモスってもっと牛とか熊っぽいと思ってたから、そんなビッグネームだとは思いもしなかった。



「ジャスパー、屋敷の者を全員起こせ。避難準備完了後、各所に連絡を入れろ」

「畏まりました」

「済まない、二人共東門へ向かってくれるか? だが、これはあくまで俺からの願いであって強制では・・・」

「おまかせっ、行ってきまーす!」

「俺もドスの街が好きですから、勿論行きますよ」

「・・・済まない、宜しく頼む」



 僕達はディアスさんと別れ、子供達の待つ東門へ移動した。





 ◆◇◆◇





 

 時は数日遡り、ドスの街の東の森を数人の人影が駆けていた。

 その姿は、追うというより何かから逃げているようである。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

「おい、もっと速く走れないのか」

「う、煩いっ! ぐっ・・・腕が」



 黒装束の男に率いられ走っているのは、全く陽に焼けていない白い肌に不健全に腹の出た中年の男達。

 服装はだいぶ汚れてこそいるが、元は純白で金の刺繍が入った位の高い者が着る法衣であったことが分かる。その正体は元治術ギルド長のエセイシ・カマセーヌ及びその幹部達であった。


 教会より派遣された男の手引きによって牢から逃げ出したエセイシ達であったが、ドスの街に逃げ込む先などあろう筈もなく、仕方なく東の森の中に逃走。追っ手の姿がない事に胸を撫で下ろしていた。

 ──自分達がこれから辿る運命の事など知る由もなく。


 黒装束の男は、周囲に魔物の気配が無いことを確認すると、まだ解けていない呪いに苦しむエセイシに声をかける。



「ひとまず大丈夫だろう。エセイシ元治術ギルド長、貴様が助け出された理由を理解しているか?」



 『助け出した』と言う割には、その声に血が通っていなかった。



「あ、あぁ分かっている、寄付()だな。大丈夫だとも、私は他の街にいる治術ギルドの者に顔が利く。今までの未納分くらい簡単に──」

「違う、ドスの事だ。本部の計画に、あの街とターハント家は邪魔らしい。だから貴様にはあの街を掌握するよう指令が下っていたのだ」

「あぁ、それも分かっているともっ! 私の力を持ってすれば、再びあの街を手中に収めるなど簡単だからな。だがそれには資金が必要だ、だから本部には支援金の準備を・・・」



 返り咲く意欲を見せるエセイシではあるが、その目が、様子がただの負け犬になっている事に黒装束の男は気付いていた。

 しかし男の予定に支障はない、例え負け犬であっても飼い犬には違いないのだから。



「(犬は言うことを聞き、よく吠えれば問題無い。うまく扱えるかは飼い主次第だからな)」

「な、何だっ」

「いや、何でも無い。それよりも、今のお前に大したことは期待していない。教会が入り込む機会を潰したのだ、その程度のことは分かるな?」

「あ、あぁ・・・」

「しかしこのままにしておくことも出来ない、だからもう一度騒ぎを起こす必要がある。これを使って騒動を起こし、可能ならばディアス・ターハント・ドスを殺せ」



 男がエセイシに手渡したのは、30センチ程の円錐状の筒。先端からは短い紐が伸びており、一見するとクラッカーのように見える。



「上手く行けば大勢の怪我人が出る、そうすれば奴等は治術ギルドの手を借りざるを得なくなるだろう」

「し、しかし、これを使えば私は・・・」

「だから“上手くやれ”と言ったのだ。安心しろ、計画通りに進めば貴様をまたギルド長の席に据えてやる──勿論、断らないよな?」



 エセイシにそれを受け取る以外の選択肢は無かった。



「(あとの不安材料は、例の獣人。秘境から()()()()()と聞いているが・・・まぁ利用出来そうなら捕まえ、邪魔なら一緒に始末してしまえば良い。所詮は兎の獣人、何とでもなる)」


「エセイシ様っ、我々はどうすれば・・・」

「実行するしかなかろうっ! 大丈夫だ、これが成功すれば返り咲く事ができる。金も名誉も思いのままだ!!」




 様々な思惑欲望渦巻く中、今日もドスの夜は更けていく。 その毒牙をイナバにかけようとする黒装束の男だが、彼は知らない。魔境のウサギのしぶとさを知らない。


 魔境に居た頃、イナバ達ウサギはひたすら隠れて、とにかく逃げまくっていた。だが言い換えれば、逃げ続ける事が出来ていたとも言える。

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その意味を彼は全く理解出来ていないのだ。


 彼等が長い時間をかけ、命よりも大切なお金を掛け、人脈を威光を掛け、作り上げ進めてきた壮大な計画が、ヒョッコリ現れたウサギさんに粉微塵に破壊される未来は、もうすぐそこである。

次回、遂にうさぎちゃん達の本領発揮。

戦わないうさぎちゃんの戦闘力に刮目せよ!

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