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異世界ウサキック物語  作者: 草食丸
2章:人助け、悪徳ギルドにウサキックの巻
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7羽:100倍返しするウサギさん

ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)

『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』

 ・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい


『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』

 ・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい


『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』

 ・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい

 ドスの街の中心に建つ領主邸。そこからほど近い位置に建つ領主邸よりも大きな城かと見紛う建物の塔の上から、一人の男が街を、治療院を見下ろしていた。


 男の名はエセイシ・カマセーヌ。

 派閥争いに負け、ドスの街に左遷された元枢機卿。現治術ギルド長である。


 この男は金に取り憑かれた亡者であり、治療院に人が訪れるたび男には金貨の音が聞こえていた。



「今日も沢山の金が私の財布に流れ込んでくる、愉快で仕方ないな──だが・・・」



 エセイシにとって患者は金、治療院は財布、病は権力。

 全ての癒しの術を掌握している教会のバックアップ、そして何よりも領主の妻であるミラにかけた呪い。

 妻の命を盾に取られ領主すら強く出られない今、ドスの街の金と権力は全てエセイシのものであった──そう先日までは。


 つい数日前の事、エセイシの耳に彼の権力と金を脅かしかねない情報が入ってきた。言わずもがな、イナバの事である。


 強力な癒しの術を持つ子供200人、それも彼の大嫌いな獣人。

 教会は人族至上主義であり、亜人獣人その全てが人族に奉仕するべく生まれてきた人族のまがい物であると信じて疑わない者達の集団である。

 そんな獣人がよりにもよって神の御業たる癒しの力を持っている、彼はそれが許せなかった。

 ましてや、それが大切な財布である治療院に影響を与える存在であれば尚の事。



「獣人が癒しの術を使うだけでも腹立たしいのに、それが200匹だとっ!? 巫山戯やがってっ!!」



 聞けばその兎が使う魔法は回復能力に際限がなく、魔力酔いもせず、本人が居なくとも発動し続けるという。更には魔力も回復するらしい。

 聞けば聞くほどに巫山戯た力である、しかし逆にこれは好機だとエセイシは考えた。


 何とかしてその兎を奴隷にしてしまえば、例えその力が兎のものであったとしても振るうのは自分。

 そう自分は2つと無い癒しの力を手に入れることが出来る。

 200匹も居るんだ、国のあちこちに送り込もう。そうすれば自分は感謝され、敬われ、 聖人として扱われるだろう。

 そうすれば王族も教会も思いのままだと、エセイシは考えた。


 既にイナバを捕まえた気でいるエセイシは笑いが止まらなかった──そんな簡単に兎が捕まる筈もないのに。

 兎は逃げること、隠れることにかけては超一流である。

 何より地球より降り立ったこの兎は、彼が想像し得ないほど狡賢く、そして凶暴。


 そんな兎の反撃は、ある一報から始まった。



「ギルド長っ、元気な患者が爆発的に増えていますっ!?」

「・・・は?」



 破滅の足音が、ウサ耳を揺らしながら近付いてきた。





 ◆◇◆◇





 ミラさんが回復した翌日、無事元の姿に戻った僕はまた冒険者ギルドで月光華の花畑を咲かせていた。

 とは言ってもミラさんの治療中全く来なかった訳じゃないよ。ただミラさんからあまり離れられないので、朝に一回花畑と料理を作って昼と夕方は子供達に任せていただけだ。


 自分で言うのもなんだけど、僕の料理は何故か人気なんだよね。

 でもミラさんの解呪中は朝しか作りにいけない。だから無くなったらギルドの料理人さんに追加して貰う形をとっていたんだけど、僕のご飯を食べ損ねた冒険者さんから不満があがってちょっと面倒だったとヘレンさんに教えてもらった。


 当然、その冒険者さん達は見つけ次第すぐに正座&お説教コースです。ほらっ、並びなさい!



「いい、みんな。人は『足るを知る』って考え方が大切でね・・・こらっ、君らなんでちょっと嬉しそうなのさっ。僕は怒っているんだよ、そもそも遠慮しなさいって言ってたでしょっ、めっ!」

「「「は〜い、反省してまーす!」」」



 まったく、もぅ!

 ちなみに《共有》で僕の記憶が覗ける子供達に料理をお願いしてみたこともあるけど、僕と同じものは作れなかったんだって。

 《共有》を持っていても、微妙な力加減や無意識な行動は再現できないみたい。残念。


 さてさて、さっきも言った通り僕は冒険者ギルドに詰めて花畑と料理を作っているわけなんだけど、今回からなんとディアスさんからの指名依頼という扱いになりました!

 しかもギルドで使う食材もディアスさん持ち。凄く助かるけど、結構お金かかるし良いのかなって聞いてみるとジャスパーさんがコソッと教えてくれた。



「ふふふ、これでもあの者に払っていた治療費の半分以下なのですよ。どうぞイナバ様はご心配なさらず存分にお動きになられて下さい」



 え、これでも半分以下なのっ!? あの治術師、どんだけボッタクってたんだろう・・・。

 その時のジャスパーさんの表情はとても晴れ晴れとしていたけど、妙に圧があってちょっと怖かった。


 まぁ何も気にせず動いて良いらしいので、僕は当初の予定通り動く事にしよう。


 現状をおさらいするとこんな感じだ。

 まず治術ギルドから「患者さんが増えすぎて困ったから手伝って!」という依頼が届いた。

 まぁ報酬がちょっとケチだったけど、街の人の為に依頼を受けた。

 ただ感じが悪そうだったから、治術ギルドへの登録はしない方向で子供達に行って貰ったの。そしたら何を考えてるのか、患者さんの治療を止めたうえで退院も拒否。いわゆる人質だね、んで「こっちに来て治せ」って言ってくるわけさ。


 もうさ、やってる事がほぼ犯罪なのよ。でも法的にはセーフで、どうにもならない。

 僕は僕で、依頼でもないのに治療院で回復魔法なんて使ったら「僕、治術ギルドの関係者ですー」って言ってるようなものでしょ? だから行くわけにも行かない。


 しかもヘレンさんから子供達が散々暴言を吐かれたって聞いて、子供達を向かわせちゃった自分と治療院に腹が立っちゃって、ちょっと痛い目に遭わせてやろうって考えた。

 それで計画を開始したところ、治術ギルドは領主夫人のミラさんに呪いを掛けていた事が判明!

 まぁ呪いは返品してやったんだけど、それで完全にキレた僕は治療院──いや、治術ギルドはウサ耳を見たら震え上がるくらいギッタンギタンにしてやろうって思ったわけ。ここが今ね。

 ご清聴、ありがとう御座いました。


 まぁそんなわけで、僕が考えたのは『なんか全員元気なんですけど作戦』だ。


 まずは街の人と冒険者さん達を集めて回復しちゃう(美味しいご飯付き)。

 次に冒険者ギルドに来れない人達の元に出張サービス。これは、冒険者ギルドに来てくれた人達に聞き込みして情報収集した。

 ドスの街って大きい割に冒険者ギルドが一つしかないからね、来たいけど来れないってなると可哀想だし、僕達は人数が多いから人海戦術だ!


 この二つをする事で治療院には新しい傷病者が行かなくなる、つまり治術院は収入が激減しちゃうわけだ。

 いやぁ~困った事になりますねぇ(笑)


 そして最後。これが一番大切なんだけど、今入院している人達を全員治す!

 「治療院へ行かないのにどうやって?」って思うでしょ? 気になるよね? 宜しい、教えてあげよう。それはですね・・・あ、来た来た。


 僕がギルドの入り口に目を向けると、そこにはウチの子達に手を引かれた人達が集まっていた。



「あの、私・・・ここのギルドの職員さんに教えて貰ったんですけど、ここで病気を治して貰えるって」

「大型の魔物に踏まれた足が治るって聞いたんだが、本当か?」

「腰が痛くて敵わんのじゃが、最近は治術の効きが悪くてのぉ」

「いらっしゃーい、待ってたよ!」



 やって来たのは老若男女20名ほど、皆同じ貫頭衣のような服装を着ている。たぶん異世界版患者衣かな?


 今ひとつ状況が理解出来ていなさそうな彼等は誰かと言うと・・・なんと彼等は、治療院の患者さん達である。

 さて、退院を断られた彼等がどうやってここへ来たのか。退院の許可が出たのか? いや実は彼等、退院をせずここに居るのだ。


 ヘレンさんから治療院の退院拒否の話を聞いた際、僕は思った。僕は彼等が退院できないから困っていたのか?

 答えはNO、僕が困っていたのは患者さんを治療院で治してあげられないからだ。

 治療院は病状次第で患者さんからの退院要求を断ることが法的に認められている、症状は治術師にしか判断できないからね。そして今回治術院はこのルールを悪用して患者さんを人質にとったわけだ。


 ただ、患者さんの要求全てを治療院が拒否できるかと言うとそんなワケがない。

 当然、治術師よりも患者の意見が優先されるものがいくつかある。その一つがこれ、『お散歩』である。



「治療院から結構離れてるけど、散歩ってこんな所まで来ても良いのかしら?」

「散歩の範囲って、別に法的に決まってるわけじゃないから大丈夫っだてヘレンさんが言ってたよ。何か言われたら僕が謝っとくから大丈夫!」


「ここで治療して貰えるって本当か?」

「あぁ違う違う、僕は皆を綺麗な花畑に連れて行くだけ。まぁ偶然怪我や病気が治ったりすることはあるかもねー(棒)」



 何とも白々しい兎である(笑)

 でもこれは必要な事なので絶対に言っておかないといけない。


 彼等が此処まで来れた理由、それは彼等が『お散歩』で歩いてきてくれたからなんだ。

 治術師は患者さんのお散歩要求を拒否できない。何故ならそれを拒否してしまえば、それは入院ではなく『監禁』になってしまうからなんだって。ヘレンさん、詳しぃぃ〜!


 そして彼等を連れ出したのは患者として潜入した冒険者さんやギルド職員さんなんだけど、連れ出した先で患者さん達を『治療』してはいけないんだ。

 『治療』目的で患者さんを連れ出して、「権利の侵害だ!」とか言われたら面倒だし腹立つしね。だから僕がやっているのは、あくまで『花畑への御招待』であって治療じゃない。


 散歩した先で、たまたま綺麗な花畑があって、休んでいたら何故か病気や怪我が治っていた。ただそれだけなのだ!


 彼等には花畑で存分に休んで貰ったあと栄養のある物を食べて貰い、治療院に戻って貰う。一応入院患者だからね!

 こうすることで傷病人が減り、街の人達は満足。

 治療院は治療の必要がない人達を大勢抱えて大損害、加えて新規入院患者さんも来なくてダブルパンチ。そして僕は仕返しが出来て大満足。

 もう言う事無しだね!






 この(のち)、全回復した冒険者さん達は次々と仕事に復帰。

 怪我をしても月光華ですぐに回復していく為、次々と魔物や素材が運び込まれて結果的にドスの税収が大幅に増加。ギルドで使用した食材費をカバーするどころか、街が大きく潤う結果となった。


 更に元気の有り余っている彼等は普段受注しない雑用クエストを請け負っていき、住民達の問題不満が全て解消。住民達は働きやすくなり、街には笑顔が増えていった。


 そして更に、クエストを通して住民と冒険者さんが接する機会が増え距離が近付く。

 そこに最近協力関係にある魔術ギルドの人達が加わったことで「あれっ、コイツ等気持ち悪いけど良い奴じゃん?」ということに皆が気付き、みんな気軽に冗談を言い合うほどの関係になっていった。

 街の人はよく壊れた魔道具を修理して貰っているらしい。


 お金の余った冒険者さんは街の人と仲良くなったことで、いっぱい街にお金を落としていく。

 ドスの街のことを聞きつけた他の街の冒険者さんがどんどん集まってくる。街ではよく冒険者さんと街の人が一緒に飲んでいるのを見かけるようになった。


 まぁ僕が飲み過ぎを注意して回る手間は増えたかな。ただみんな優しいから、子供達を可愛がってくれるし満足してる。

 こうして、ドスの街には今までに無い活気で溢れていた。


 そして治療院は痛い目を見て懲りたかと思ったんだけど、事態は僕の予想しない方向へ進む。



「えっ、治術ギルドが無くなっちゃったのっ!?」



 なんで?

救う側が人質を取るという、とんでもない事態。

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