閑話:謎の組織
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
ある日、夕日も沈みきった時間に裏路地を静かに移動する人影があった。
真っ黒なマントにフードを目深に被った五人の男達は、ある建物の裏扉に到着すると静かにノックする。
──コンコン、ココン、コン、コン
すると合図を聞き、向こう側から返事が返ってきた。声からしてどうやら女性らしい事が伺える。
「合言葉を、『白い?』」
「ウサギ」
「『ウサギは?』」
「最高!」
「『子兎達は?』」
「天使!」
男達が淀みなく答えると扉が開き、そこから同じく黒いマントにフードを目深に被った女性二人が顔を見せた。
二人とも顔が見えないが、一人はフードからは美しい金髪を覗かせ、もう一人はフードの下で獣耳が動いているのが見える。
部屋の奥を見れば、更に数人座っているのが見えた。
「ようこそ同士よ。あの子達には見つかりませんでしたか?」
「当然である、移動中は姿隠しの魔術も使っておった故な!」
「しかし警戒し過ぎではゴザらんか?」
「あの子達の耳と鼻の良さは異常だからねー、警戒するに越したことはないよー」
「それよりも皆様お待ちです、席に着いて下さい」
男達を招き入れた金髪の女性は、部屋の奥にある円卓に彼等を促す。
「ふふっ、やっと来たかい。君達が来るのを待ち侘びていたよ」
「貴方達に来て頂けないと、話が進みませんからねぇー」
「あ、ああああ貴方達は嫌いですけど、それには興味があるのでっ」
そこに座っていたのは、背が高く凛々しい口調の女性。どこか騎士のような雰囲気がある。
同じく背が高くキリっとしているが、やや緩い口調の女性。こちらも同様の雰囲気を持っている。
そして一番奥に座る三人目の女性は、それとは対象的に小柄で小動物の様な雰囲気を持っている。しかし下にはマントを羽織って尚スタイルの良さが隠し切れておらず、大きなそれが揺れていた。
皆フードを目深に被り誰か分からない・・・わけもないと思う。思うが、ひとまずこのまま進めようと思う。
男達が全員部屋に入ると、ふと奥に座る二人に目が行く。
一人は特段特徴の無い、恐らく大人の女性。
そしてもう一人はその女性の膝に座っている、恐らく子供と思われる人物だ。
子供・・・いや、恐らく少女。
少女に男達が反応した。
「そ、そちらの素晴らしいロr・・・お嬢様はどちらの方で?」
「なぜマントを羽織っているのに分かるんですか・・・彼女達も貴方達と同じく今回からの参加です。以前イナバさん達が食べ物が無く困っていた所を助けて下さった功績から参加して頂いています」
「それは素晴らしいっ、イナバ様を助けて下さった事に感謝を!」
「いえいえ、同じく子を持つ母として当然のことですから」
「こんにちわっ、どうしいたしましてー!」
金髪の女性はパンッパンッと手を叩き、男の会話を切る。そして話を進めた。
「さて、報告会を始めます。とはいえ全員名無しというのも話し辛いので呼び名を決めましょう、私のことは『受付嬢』とお呼び下さい」
「じゃあアタシは『猫娘』ねー!」
「では私は『騎士1号』にしよう」
「私は『騎士2号』にしますぅー!」
「わわわ私は『魔女』でっ」
「私は『女将』にしますね」
「じゃあアンナは『ウサギ大好きっ子』にするー!」
「では私はロリ巨乳大すk(ギロッ!)──ごほんっ、私達のことは『ロリスキー1号〜6号』とお呼び下され」
お前等隠す気無いだろう?
とにかく『ロリスキー』という名称は受付嬢的にギリギリOKだったようで、そのまま報告会は進んでいく。
「さて、本日の『収穫』について報告を」
「うむ、今回はイナバ様と子供様方が分散して行動されておった故、大収穫であるぞ!」
「おぉ、これはっ」
ロリスキー2号がテーブルに広げたものを見て、全員が歓喜の声を上げる。
そこに出されたのはイナバや子兎達のリアルな絵が映し出された手のひらサイズの紙、地球で言うところの『写真』であった。
写真には箒をもって走る姿。籠いっぱいの洗濯物を2羽で仲良く運ぶ姿。鼻に泡を付けながら一生懸命洗濯する姿。肩車をして高い所に洗濯物を干す姿。何羽かが集まってお昼寝する姿などなど、先日の魔術ギルドでの可愛らしい活動風景が映し出されていた。
「かっ、かわわわわっ!? ごほんっ、素晴らしいです。これを見ただけで、貴方がたに撮影の許可を出して良かったと思えます」
「ご満足頂けて何よりであります! 此等はご挨拶代わりに、皆様に提供させて頂くのであります!」
「やったーっ!」
「おぉ、それはありがたい! 我々の所へイナバ殿が来る機会は少なくてね。皆寂しがっているんだよ」
「ウサギさん達、可愛いーっ! ママッ、アンナこれ欲しい!」
「アンナ、しーっ! 名前を言っちゃいけないのよ」
「そうなの?」
少女よ、これが様式美というものだ。
皆が写真を見て喜ぶのを見て「手応えあり!」と思ったのだろう、ロリスキー1号はとっておきを取り出した。
「こちらが本日の逸品、上物である。刺激が強いうえ気を付けるのだ」
そう言ってぺらりと机に出した写真には──膝のうえでセミロングボブの子兎をあやすイナバの姿が写っていた。
その表情には溢れんばかりの慈愛と母性が浮かんでおり、写真にも関わらず一目見ただけで心安らかになる。
「はうううううっっっ!?」
「くっ、我々の穢れた心にこの笑顔は眩しすぎるっ!」
「お母さんに会いたくなりましたぁー」
「そうでしょう、そうでしょう。私達はそれを直に見て罪もないのに自首したくなりました」
「ロロロ、ロリコンはっ、罪ではっ?」
いや、安らかになったのは一部だけで、大部分は胸を押さえて蹲った。
「ママー、あのお姉さん達どうして胸を押さえてるの?」
「あのお姉さん達はね、ウサギさん達が可愛すぎて苦しんでるのよ」
「そうなの? 変なのー」
「そうね、だからそっとしておいてあげてね」
「分かった!」
ウサギ大好きっ子強し。
その後ダメージを耐えきった受付嬢は、よろめきながらロリスキー達に手を差し出した。
「マーベラス! 期待以上でした、今後の撮影も許可致します。私達も彼女が依頼を受注する際、決して邪魔をしないと約束します」
「ありがたい、俺達も収穫は全て共有すると約束する」
同好の士に壁は無い、二人の間に熱い握手が交わされた。
「もう一件に関してですが、進捗は如何ですか?」
「うむ、魔写機であるな。そちらは錬金ギルドと話がつき、量産体制が整ったのである」
「量産でき次第、騎士団と冒険者ギルドにお届けするのでゴザル」
「ありがとう御座います、こちらの収穫も共有させて頂きますので安心して下さい」
「感謝します」
お互い目的通りに事が進み、満足そうに微笑み合う。
しかしそこへ静かに写真を見ていた魔女から悲鳴に近い声が上がった。
「ちょっ、何ですかこれはっ!?」
「「ん?」」
熱い握手を交わしていたロリスキー1号と受付嬢は、声に釣られ魔女が向けてきた1枚の写真に目を向ける。
そこに写っていたのは──。
ギリギリギリギリッ
「あぃだだだだだだっっっ!? 申し訳無いっ、申し訳無いっ!」
「「「「ロリスキー1号殿っ!?」」」」
「あれは何ですか? 私が提示したルールを逸脱しているように見えますが? どうなんだ、ん?」
写真に写っていたのは、かなり際どいアングルから撮られたイナバの姿だった。
正直なんでその位置から撮られて気付かないのか、皆イナバの無防備加減に呆れつつも男達に非難の目を向ける。
「ま、待って欲しいのでゴザル! これは偶然、偶然撮れたものなのでゴザル!」
「う、うむ。意図して撮ったものでは無いのである!」
「ですのでっ、どうかロリスキー1号殿の手を離して欲しいのでありますっ!」
「折れるっ、折れるううううっ!?」
あまりの痛みにロリスキー1号が泡を吹いて倒れたところで、受付嬢は彼を解放し2号から6号を睨みつけた。
「私、言いましたよね? 『この子達のセンシティブな写真は絶対撮らないように』と、『偶然撮れたら、すぐに提出するように』と。何故あの中に? 撮られてからそれなりに時間が経っている筈ですが、報告はありませんでしたよね?」
「そ、その・・・そこに入っていたのも偶然で・・・」
「ほぅ、では見つからなかった場合どうするつもりで?」
「それは当然拙者たちギルドの共有財産に──しまった、誘導尋問でありますっ!?」
ロリスキー達に冷たい視線が突き刺さる。
「皆さん、判決を」
「「「「ギルティー(だねー)(ですっ)!」」」」
「有罪で、ロリスキー達には二ヶ月間の写真提供無しということで」
「「「「「「そんなっ!?」」」」」」
ロリスキー達は揃って膝から崩れ落ちた。
この魔写機はデジカメに似た機能を持っており、写真をネガではなくデータとして本体に保存している。ただし保存できる量がかなりシビアなうえ、USBのような保存する為の道具も無い。新しく写真を撮る為には古い写真を消す必要があり、印刷して保存しておく以外の方法が無い。そして印刷時に複数枚印刷する以外に焼き増しをする方法も無い。
つまり一度印刷したものは二度と手に入らない可能性が高く、それは推しの写真が手にはいらない状況が二ヶ月間続く事を意味する。
これはロリスキー達にとって死をも超える苦痛であった。
「ぬぅおおおおおおおっっっ!!!!!!」
「なんて、なんてことであるか・・・」
「拙者、切腹するのでゴザル・・・」
「生きる意味を失った」
「しくしく・・・」
「夢も希望もないのであります・・・」
泣き崩れるロリスキー達、自業自得だと女性陣が視線を向ける。
だが男であれば理解できるのではないだろうか? 男はエロには逆らえないのだ、彼等の行動は本能に準じたものであると言えるだろう。
とはいえルールはルール、そもそも幼い少女に下心を持つのがアウトなのだから観念した方が良い。
そんな彼等を見て哀れに思ったのか、大人の男がガチ泣きする姿が珍しかったのか、ウサギ大好きっ子がトコトコと近寄っていく。
「女将さん、子供さん放っておいて良いのかい?」
「そそそそうですよっ、危ないですよっ!?」
「んー、たぶん大丈夫ですよ。あの子って凄く強かですから」
どういう意味だろうかと、騎士一号と魔女が首を傾げて様子を見守る。
「おじさん達大丈夫?」
「ウサギ大好きっ子殿・・・」
「我等はもうだめかも知れぬ」
「僕も立ち直れそうにありません・・・」
「そっかぁ、ウサギさん達可愛いもんね」
腕を組みうんうんと頷くウサギ大好きっ子は、ロリスキー達の様子を見てある提案をする。
「じゃあ可哀想だから、アンナのやつ1枚あげるね!」
「──っ!」
「誠でゴザルか!?」
「貴女は神でありますかっ」
「大好きなのに貰えないの嫌だもんね! 次の時もまた1枚だけあげる。だからその次とその次、皆アンナに1枚づつ頂戴!」
「次もであるかっ! おぉ、感謝に堪えんのであるっ」
「そのくらいの事、お任せ下さい! 皆さんもそれで良いですね?」
「「「勿論!」」」
「ぅわぁぁぁ〜、一瞬でレートが6倍になったよー・・・」
「ウウウウサギ大好きっ子さん、凄いですっ!」
「ね、『強かだ』って言ったでしょう? 本当に誰に似たのか・・・」
気付いていないロリスキー達に呆れるべきなのか、一瞬で値を吊り上げたウサギ大好きっ子を称賛すべきなのか。
しかしこれの驚くべきは別の所にある。
「ママ、今度いっぱい貰えるよ!」
「そ、そうね。でもせっかく貰った写真が減っちゃったけど良かったの?」
女将の言う通り、同じ感じ写真は二度と手にはいらない。
「良いよ。だって、ママが同じの持ってるもん」
「・・・なるほどね。本当に誰に似たのかしら」
結局ウサギ大好きっ子は何一つ失うことなく12枚の写真を手に入れる事が出来たのであった。
幼女の手のひらで転がされるロリスキー達、ある意味彼等も本望であろう。
こうしてドスの夜は今日も平和に過ぎていくのであった。
『お母さんのもの=自分のもの』
つまりジャイアニズム




