18羽:大掃除を開始するウサギさん
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
さて、皆に問おう。キッチンとはどうあるべきかな?
うんそうだね、綺麗であるべきだよね。
料理が終わればゴミは捨て、汚れた調理台を拭き、その際に出た物は洗う。普通のことだよね?
ご飯を食べたら食器は洗う、乾いたら片付ける。普通のことだよね?
男の一人暮らしなら、ついつい後片付けがおざなりになる事はあると思う。僕はその辺理解があるから別に何とも思わないよ、ちょとくらい片付けが遅くなるのも構わない。男って纏めてやっちゃいたい気質だから。
だから、明らかに男所帯だろう魔術ギルドの厨房が片付いていなくても気にはしない。
だからフライパンや鍋が片付いていないのも、仕方ないと考える。
調理台が拭かれてないのも、ちょっとなら許す。
洗い物が溜まっていても、まぁ少しイラッとするけど大目に見る。
そもそも今日は歓迎会を準備してくれていたんだもん、そこは僕がとやかく言うことじゃない。
片付いていなくても、綺麗じゃなくても、男所帯なんだし多少は大目に見よう。
でもさ、せめて清潔ではあるべきじゃない?
みんな、見たことある?
厨房のあちらこちらに、数センチの埃が積もってるの見たことある?
たぶん野菜の蔕や卵の殻みたいなのが調理台や流し台、床にこれでもかと散乱している状態を見たことがある?
明らかに食材じゃない物体で床も壁も天井さえも汚れてる厨房、見たことある?
僕はある、それが今目の前の光景。そして僕は今カンカンだっ!
「おい、さっきの幹部六人。ここに正座」
「「「はい・・・」」」
「ロリキョメデス、ここは何?」
「厨房だ、です」
「ケモロリオス、厨房は何をする所?」
「ちょ、調理をする所にゴザルっ!」
「メスガキウス、この厨房は何でこんなに汚れているの?」
「汚れて・・・おるか?」
「自分も汚れているようには・・・」
よぉ~し、戦争だな。お前等全員、沼に沈めてやるから覚悟しろよっ?
「まま、待つのでありますっ! イナバ様は何をそんなにお怒りなのでありますっ?」
「僕も全く分かりませんっ、どうかご教示願えないでしょうかっ!」
分からない?
これを見て、分からないと申すか?
実は僕、これでも結構綺麗好きなのだ。
魔境に居た時は中々水浴びが出来る状況じゃなかったんだけど、でも毎日の毛繕いは欠かさなかった。
街に来てからも毎日毛繕いはしているし、水で体を拭いている。だからウチは皆毛並みがモフモフさらさらだ。
ちなみに兎は汗をかかないから体臭がない。だからか僕達にもほぼ体臭がないんだけど、やっぱりお湯使わないと綺麗になった気がしないんだよね。
あー、お風呂入りたい・・・。
ちょっと脱線したが要は何が言いたいかと言うと、僕は今この状況が許せないのだ。
「スクミズトス、さっきの料理はどこで作ったの?」
「そ、それは勿論この厨房で・・・あ」
「僕の言いたいこと、分かる?」
「ままま待つのでありますっ! ほらっ、料理で使った所は綺麗であります!」
部屋の掃除じゃねーんだぞ、んなもん全体綺麗にしてないと意味ねぇでしょうがっ!
それより何より許せないのが、ここで作った料理を僕の子供達に食わせたな? もしポンポン痛くなったらどうすんだぁ、あぁっゴルゥアアアアアアッッッ!!!!!!
「ロリバメデスッ! 最後にここ使ったのはっ?」
「さ、さぁ? いつであろうか・・・」
「アリスメデスッ!」
「自分はコーヒーを飲むので、綺麗なのでありますっ。ほら、そことか!」
「扉の真横だけじゃねぇーかっっ!!」
しかもこれは綺麗なんじゃなくて、人の通りがあるから埃が溜まってないだけだ。よってアリスメデスはギルティー。
「それとこの際言うけど、君等臭いっ! 最後に体拭いたのいつ?」
「私は六日前かと・・・」
「ははっ我は三日前だ!」
「三日前でもアウトだバカ野郎!」
他四人というか、会場に居たほぼ全員が似たようなもんだった。
魔境に居た僕達でさえ気を使っていたというのに、こいつ等は何なんだっ!?
我慢できなくなった僕は、魔術ギルドの大掃除を始めたのであった。
「汚物は全て消毒だっ!」
◆◇◆◇
あれから掃除道具を探してギルド中を捜索したところ、ほぼ全ての部屋が同じ状態であることが分かった。
ヘレンさんが彼らを虫と呼んでいたけど、失礼ながら虫のほうが余程清潔な場所に住んでいると思う。実は虫って結構綺麗好きなんだよね。
まぁそんなわけで、捕まえてきた魔術ギルド員約70名、兎軍団約200羽、ゲストに龍の翼とヘレンさんを加えての大掃除が始まった。
僕達は三角巾にマスクを着けていくつかの部屋に別れる。ちなみにマスクと三角巾は魔術ギルドにあった布を破って結んだだけの物だけど、それでも無いよりマシ。
さて、ここからはウチの子達から《共有》で送られてきた掃除の報告だ。
まず客間。最初に言っておくと、その部屋が客間だということを誰も気付かなかった。
当然埃があちらこちらで地層のように積み重なっていて、本がいくつも山のように積み重なり壁を作っている。だから壁が見えず、本来あるはずの窓の姿も無い。
ギルド員ですら「資料室?」って言ってたくらいだから、かなり長い間放置されていたことがわかる。
しかし驚きなのが、そこには最近(と言っても数週間前だろうけど)使われたらしきコーヒーカップが。
使うなら掃除すれば良いのに、一体誰が・・・。
それを聞いて、名探偵イナバさんはピーンッときました。すぐにアリスメデス及びその一派を呼び出し、尻を蹴飛ばして数名掃除に向かわせた。
次に浴室。そう、なんと魔術ギルドにはお風呂があったのだ!
この世界では下水こそ普及しているけど、一般家庭にお風呂設備まで備わっていないらしい。
そもそもお風呂に浸かるっていう習慣が無いのと、水を汲んだり沸かしたりするのに結構お金がかかる。
家に火と水を扱えるそこそこの腕を持った魔法使い達でも居ない限り、基本的には贅沢品とのこと。
まぁ、あってもコイツ等使ってないんだけどな。
くそぅ、何でウチには無くてコイツ等は持ってるんだっ、宝の持ち腐れじゃないかっ!
腹が立ったので、水魔法が得意なロリバメデス一派を呼び出して徹底的に洗わせた。
各研究室は危険な薬品とか道具がありそうだったので、掃除そのものは任せた。ウチの子達は龍の翼やヘレンさん監視の下、荷物運び出しの手伝いだ。
流石に僕もこの部屋まで綺麗にしろとは言わない、
でも最低限の清潔さは保つべきだ。ということで最低限の清掃と、その後派閥ごとに割り当てられているホールの掃除を行なった。
予想通り、集会を行う習慣のない彼らにとってホールとは即ち倉庫。物が乱雑に置かれているゴミ屋敷と化していた。
廊下や使用率の高い部屋は、散らかってこそいるが埃はさほど溜まっていない。
というか、基本的に人が生活していれば埃は溜まりにくいんだよね。なのに何故か溜まるこのギルド、コイツ等幽霊かなんかなのか?
とりあえず危険な物はなく単純な清掃ばかりだったので、ウチの子達を大量に派遣。人様に見せられる程度には綺麗に出来た。
そして一番問題だったのが、僕のいる厨房だ。
「何でこんなにジャガイモがいっぱいあるのっ、お前らは農家かなんかなのかっ!?」
「い、いえ。まとめ買いすると安かったもので、つい・・・」
「期限が長くてもまとめ買いすんなっ! 見ろっ、芽が育ち過ぎてジャングルになってるじゃんっ!!」
「え、そこも食べられるのでは?」
「死ぬ気かっ!?」
毒だぞっ!? と注意したが、今まで食べて体調を崩した者は居ないとのこと。
彼等はもしかしたら幽霊ではなくゾンビかもしれない。
「これは割れてる、危ないから捨てて」
「あぁそれはワザと割ってあるのです」
「何のためにっ!?」
という意味不明な事があったり。
「あっ、それはチーズなので捨てないで下さいっ!」
「これはチーズじゃなくて、牛乳が腐ってるだけだからっ!」
という彼らを人間か疑う事があったり。
「ぎゃああああああああっ!? ゴッ、ゴキ!」
「ステファン、こんな所に居たのか。心配したんだぜ?」
「ペットなのっ!?」
という信じられない事があったり。
本当、子供達をここに近付かせなくて良かったと思う。
そうして魔術ギルドは最低限、本当に最低限の清掃を終えた。特に厨房は徹底的にやりましたとも。
そして気付けば夕方、歓迎会が終了して5時間ほどが経過していた。
「・・・疲れた」
「本当に、ウチら何しに来たんだろうねー」
「俺もまさか大掃除をする事になろうとは・・・」
「俺っちも人生で、魔術ギルドを大掃除する日が来るとは思いもしなかったっすよ」
「みんな巻き込んでゴメンね」
龍の翼のみんなとヘレンさんには本当に悪いことをしてしまった。
今度何かお礼をすると伝えたんだけど、バーニィさんとリドは武器のお礼だと言ってくれて、他の女性陣には「もう貰ってますからー」と言われ断られた。僕、なんかしたっけ?
まぁひとまず、今日の所は帰ることにした。
魔術ギルドの前には僕達を見送る為、魔術ギルド員が勢揃いしていた。
そして最前列には例の筆頭幹部(笑)が並ぶ。
「明日も来て掃除の続きするから」
「明日も来て戴けるのですかっ!?」
「これはまた人参を沢山用意せねばっ!」
掃除しに来るんだよバカッ!
僕は今日掃除中《共有》を通して彼らの様子を観察していた。そのうえで僕が抱いた感想は、彼等は決して悪い奴らではないということだ。
確かに彼等はロリコンだ、その時点で犯罪者予備軍という感想を持たれても仕方無いだろう。
それに性格も悪い。ただこれは性格がというより、学歴社会に置かれたことによるプライドの高さが原因だ。自由をモットーとする冒険者と反りが合わないのも仕方無いだろう。
さらに言うなら周りへの配慮も足りない。
これはまぁ、研究者にはありがちだろう。好きな事に没頭すると周りが見えなくなるし、それが判断基準になることも多い。
アニメ好きな人ならあるでしょ。何かを見た時「〇〇で出た場所に似てる」とか思う事、あれと一緒よ。
不衛生なのも不健全なのも・・・まぁ許せる範囲をオーバーしていたが、男所帯だということを考えると理解はできるし仕方ないかと思わなくもない。
僕、甘すぎだろうか?
とにかく、何度思い返してもダメ人間にしか思えない。思えないが、しかし彼等は気を許した相手の事ならばちゃんと言うことを聞いてくれる。
その人の為ならば、すれ違いはあっても相手のことを考て配慮してくれる。
街が危険な時には理性に従い冒険者と連携をとることだってする。
掃除中、気持ち悪い視線は向けてきたけど手は出してこなかったしね。気持ち悪かったけど!
そんなわけで、彼らをもう少し人間らしい生活に戻すお手伝いくらいはしても良いのではと思ったのだ。
それに掃除を途中で終わらせるとモヤモヤするしね!
ただ僕達も決して余裕があるわけじゃないから頻繁には来れない。さてどうしようかと考えていたら、ヘレンさんから提案があった。
「イナバさん宛に掃除の指名依頼を出しては如何です? 子供達のカードもそろそろ出来ますし、全員に貢献度が入りますよ。報酬はそうですね・・・家事洗濯で日当金貨五枚くらい出せるのでは? それを派閥別で依頼を出し、イナバさんが受けられる時に順繰り受けて行けばよいのです」
「成る程、派閥ごとに分ければ派閥の運営資金から出せるうえ、金を稼ごうと派閥の者もやる気を出す。実に良い方法だ! 流石は王立アカデミー出身だな、ババアにしておくのが勿体無いぞ!」
「またババアっつったな、次はねぇって言ったよな?」
学習しない奴だな。
ロリキョメデスはヘレンさんにアイアンクローで締め上げられていた。実はこの二人、仲がいいのかな?
「とにかく、さっき厨房に幾つか料理を作り置きしておいたから。話を聞く限り、ちゃんとしたご飯食べてないんでしょ? ダメだよ、ちゃんと食べないと。忙しいし、面倒なのは分かるけど、ちゃんと食べること! さっきも言ったけど、明日も来るから減ってなかったら怒るよ?」
「わ、分かった」
「それとお湯浴びるだけでも良いから、毎日絶対にお風呂入りなさい。お風呂に入れば頭がスッキリするんだから、研究に身が入るでしょ?」
「う、うむ。畏まったっ」
「あと、毎日寝ること! 寝れば頭と体がリセットされるから、決まった時間じゃ無くても良いから夜には絶対寝なさい」
「承知いたしたでゴザル!」
「あぁあと、洗濯物! どうせ洗濯なんてしてないんでしょ。派閥ごとで纏めておいてね、明日洗うから。毎日同じものなんて着ないで、臭いよ」
「分かったのであるっ」
「あとは・・・まぁとりあえずそんなものか。他にも色々あるけど一気に言われても分からないもんね。 ちょっとづつ普通の生活に戻そうね。僕も手伝うから、ね?」
それだけ伝え、僕達は魔術ギルドを後にした。
ちなみに僕は知らない事だけど、この日以降各派閥をサブとして、メインに『ロリママ統一派閥』なるものが出来たらしい。
サブ派閥って何だよ。
ロリママ教、亜人ロリ派みたいな感じ




