16羽:魔術ギルドの正体を知るウサギさん
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
全く、面倒な方達がやって来ました。
目の前にいるゴキb・・・全身黒尽くめの男達は魔術ギルドの魔法使い達。認めたくありませんが、6大ギルドに数えられる組織の方々です。
それもここに居るのは、ドスの魔術ギルドの中でも上位の実力と発言力を持つ、各派閥の幹部達。
あぁ面倒、非常に面倒です。時間的にそろそろイナバさんが子供達を連れてやって来る頃です。
早く彼らを追い返さないとイナバさん達と会ってしまう、それだけは阻止しないと。だってこの方々がイナバさんを見たらどんな反応をするか、火を見るよりも明らかなのですから。
私は心配になり、まさか彼女の家に行っていないか確認したところ「そんなことをしたら迷惑だろうっ!!」と返ってきた、なぜそんなところだけ常識人なのか・・・。
にしても、希少魔法も相まってか中々帰らない。
筋肉の覇気に晒されても居座るのですから、その執念は中々のものです。それをもっと世の為人の為ドスの為に使おうと思わないのでしょうか?
それにコイツ等、私のことをババアつったな? 私はまだピチピチの24歳だ。それにこれでも美人受付嬢って言われている、そんな私に向かってババア?
白い顔に真っ黒な格好しやがって陰険眼鏡もやしゴキブリがっ、白いのか黒いのかハッキリしろよ。それと、こちとらてめぇ等の事は嫌でもよく知ってるんだよ変態共が、吐いた唾は戻せねぇぞ?
あぁ早く帰ってくれないかな、帰って欲しい。そしてイナバさんの子供達に早く会いたい。
イナバさんも目が覚めるような美少女ですが、何より子供達が天使のように可愛いです。
すごく可愛いですし、言ったことはすぐに覚えてくれます。器用ですし賢いのでちょっとした仕事をお願いしても笑顔で応えてくれる、しかも魔法の力らしいのですが居るだけで疲れが取れる。
そんな心も体も癒してくれる天使たちに早く会いたい。
そんな私の願いが届いた・・・いや、届いてしまったのか、あの可愛らしい声が聞こえる。
『ちわーっ、今日は60羽で来たよー!』
『ぷぅ~』
『ぷっぷっぷぅー!』
あぁ、来てしまった・・・最悪のタイミングです。
だが冒険者さん達が取り囲んでいたせいもあってか、彼等はまだイナバさんの到着に気付いていない。
いや、自分達の声が大きすぎるせいで、イナバさんの声が掻き消されたみたい、つくづく馬鹿な男達です。
ですがお陰でカウンターからは可愛らしいウサ耳がちょこんと見えているだけ、それに冒険者さんがイナバさん達に帰るよう促してくれているみたい。
どうか気付かれる前に帰って欲しい、しかし願いも虚しく彼等が気付くのが早かった
「おいっ、あれがそうじゃないのかっ?」
「本当だっ、ウサギの耳が見えるぞ!」
「おい、そこのウサギっ。ちょっと待てっ!!」
私はズカズカとイナバさん達に近付く彼等を静止することが出来ず、接触を許してしまいます。
そこから突然挙動不審になる彼等。言葉も徐々に敬語になり、あの言っても直さなかった大声すらも控えるのですから余程のことです。
余程イナバさんの事が驚きだったようです。多分ですが、彼等はイナバさんの大まかな特徴のみを聞いたのみで直接見たことが無かったのでしょう。
彼等のことを知っている者からすれば、それまでの彼等の言動のほうが余程違和感があるというもの。しかしこうして見れば「あぁ、なる程な」と納得出来ます。
彼等は、結局いつも通りだったわけです。
それにしても受け答えするイナバさんの様子は実に堂々としています、その内受付嬢に誘ってみましょうか?
えっ、土下座っ!? コイツ等遂に土下座までし始めしたよっ、どれだけ必死なんですか!?
しかし子供達を守る為でしょう、彼女の冷静に対応する姿には感心してしまいます。そして彼女は立ち去り話は終了、あとは彼らを追い出し全てが終わる──そう思っていました。
「え、行く」
うえええええええっ!?
一体何を言われたんですかあああああっっっ!
◆◇◆◇
魔術ギルドなう。
というわけで、あの後即行で家に帰りお留守番している良い子達を連れて魔術ギルドへやって来ました!
ちなみに冒険者ギルドからヘレンさん、そして冒険者代表で子供達をみてくれていた龍の翼も一緒である。
彼等の誘いに乗ったのは僕の個人的な理由だし、ヘレンさん嫌そうだしアルメリアさんもいるから、当然最初は僕達だけでいいと断ったんだよ? でもそれを言ったら・・・。
「駄目です、絶対許しません」
「だだ、駄目ですっ! 特にイナバさんは絶対にだめなんですうううっ!」
って言って、着いてきてくれる事になった。
一体何なんだろうね? それを聞いたら二人ともモゴモゴして教えてくれなかった。
そんなわけで到着した我ら兎一行の目の前に現れたのは、思っていたよりも綺麗で大きな建物。そしてまず目に付くのが──。
「周り、何も無ぇ・・・」
周囲五件分程の敷地がさっぱりとしている。
理由は騒音問題。ギルドで普段から大きな音がする場所で暮らしていると言っていたけど、これ程か・・・。
なお、約束していた通り今は実験を中止してくれているらしく、とても静かだ。
あと理由は騒音だけじゃないだろう。臭いがね、かなり鼻につく。
僕達兎はかなり鼻が良い、確か人間の十倍くらいの嗅覚だったはず。でもそんなの関係無いくらいには臭い。
勿論吐き気を催す程じゃないけど、結構気になる。
しかしまぁ歓迎会の準備だろう音が聞こえるし、流石に「お前ら臭い」なんて言ったら失礼過ぎるから、ここは我慢だ。
「・・・臭いですね」
「ににに臭いが服に付きそうですぅ・・・」
「ウチそれなりに鼻が良いから辛いよー」
みんな・・・。
「ふんっ、我々としては貴様を呼んだ覚えは無いのだがな」
「そうだ、ババアなんぞ歓迎しておらん」
「イナバ様とその子供達、そしてアルメリア嬢のみで充分だ」
「魔法使いでもないババア二人と男は帰れ」
「おい、今またババアつったな。死にてぇのか?」
「私18歳なんだけど? 次同じ事言ったら大事な所を切り刻むよ?」
何なの、この人達っ!? 特にこの二人がこんなキレ方してるの、初めて見たんだけどっ!
二人の様子に、バーニィさんとリドは苦笑いだ。
アルメリアさん? アルメリアさんは彼等の視線が向いた瞬間「ひいいいいいいっ、私を見ないで下さいっ!」って、僕の陰に隠れた。そしてポヨポヨが気持ち良かったです。
このままじゃ入れそうにないので、彼らを促し案内してもらう。
こちとら彼等が準備してくれている物の為に態々来たんだ。今すぐ壁を全部ぶち抜いて行きたい欲望を抑えてんだから早く早く、ハリーハリー!
そして、魔術ギルドの説明を受けつつ進んだ先で、僕は、僕達は運命の出会いを果たす。
「に・・・ん、じん・・・」
それは円錐型の形をした、20センチほどの鮮やかなオレンジ色の食べ物。
頭に生えた黄緑の葉がオレンジ色を引き立てる神の食べ物。そうっ、『人参』!
僕はこの世界で、生まれて初めて人参に出会った。
「人参っ! ヘレンさんっ、人参! 人参!」
「え、えぇ人参ですね」
「人参っ! マリアちゃん、人参! 人参!」
「う、うん。そうだね、人参だね」
「にんじんっ! にんじんっ! にんじん、いっぱい、にんじんっ! にんじんっ!」
「ぷううっ♪」
「ぷっぷ♪ ぷっぷ♪」
「ぷぅぅぅいっ♪」
「どどどどうしようっ、イナバちゃん達が壊れたよー!?」
会場には黒いローブを纏った人が山ほど居て、正直言って悪魔召喚の儀式場にしか見えなかったけど、そんな人達も壁に掛かっている歓迎の横断幕も全く目に入らなかった。
僕達兎全員の目を釘付けにするのは、テーブルに並べられた人参料理の数々、そして中央に聳え立つ人参タワー。
魔術ギルドの人達がなんか言ってたけど、取り敢えず「食べて良い」の言葉だけ聞こえたので僕達は人参に群がり心ゆくまで堪能した。
気付いたら僕はマリアさんの膝のうえで、ヘレンさんとアルメリアさんに見守られながら、子供達に人参を食べさせて貰っていた。何この状況?
「あぁ、イナバちゃんが可愛い♪ 子供達は小動物的な可愛さだけど、イナバちゃんは妹的な可愛さだよねー」
「そうですね、普段がしっかりとしていますのでこのような姿は初めて見ます。控えめに言って最高ですね」
「イ、イナバさんに人参を分けに来る子供達も可愛いですっ」
やめてっ、こんな僕を見ないでっ!?
違うのっ、なんか抑えが効かなかっただけなの! もう正気に戻ったから大丈夫、ほら君達も自分で食べて良いんだよ。
え、僕に食べさせてる方が楽しいの? あぁ君は根じゃなくて葉っぱの方が好きなのか、これは根派と葉っぱ派で派閥が出来そうな予感だ。あ、いやそこは問題じゃない。
忘れてっ、今この瞬間の僕を忘れてええええええええっっっ!!!!!!
あまりのダメージにメンタルブレイクしそうになっていた所で、タイミングを見計らっていたのか一人の男が声を掛けてきた。
「イナバ様、それに子供様、お楽しみいただけましたか?」
楽しんだよ、えぇそれはもう楽しませてもらったさ。子供達も大喜びだ、そこはとても感謝する。
でも今は話し掛けないで、マジで恥ずか死しそう。あとイナバ様って言うな、さっきも言ってたろ。
「そうですか、それは良かった! ちなみにその御姿、魔写機で撮らせていただいても?」
「ぶっ殺すぞ」
「し、失礼しましたっ!」
許すわけがないでしょ、どうしてOK貰えると思った?
それにしても、随分と豪華な歓迎会だった。
少し前にヘレンさんに聞いたんだけど、この世界では人参が結構な高級品らしい。なんか美容に良いからって貴族が買い漁っちゃうんだってー。
そう言えば人参ってβカロテンが豊富で、肌の抗酸化作用があるって聞いたことがある。それの事かな?
いつの時代も美や健康に関係するものには金が動くみたい。きっと今回の歓迎会には大金貨が沢山動いたって事でしょう、人参はそれだけの高級品らしいですから。つまりこの人達はそれだけのお金を使ってでも僕を手に入れたいってことなんでしょう。
「これだけ歓迎してくれて嬉しいけど、入らないかもしれないよ?」
「ぐっ、確かにお約束は致しませんでした・・・で、では、頻繁に来て頂くというのは如何でしょうっ?」
「僕をここに来させるのが望みだったの?」
登録しなくても良いの? 来るだけで良い? 理由が分からないなー。
登録しない、研究もしない、ただ頻繁に来るだけ? マジで何が目的なんだろう?
「だ・か・らっ、イナバさんはこんな所に来ないって言ってるでしょうっ! 特にイナバさんのような方を来させるわけがないじゃないですかっ、貴方達がアルメリアさんに何をしたか知らないとでも思ってるんですか!?」
「魔法と全く関係ないウチですらアンタ達の事は知ってるんだからねー。アルメリアの事だって許すわけないよ、この犯罪者予備軍っ」
犯罪者予備軍っ!? え、マジでこのギルド何なのっ。
「イナバ様の前で不名誉な事を言うなっ!」
「そうだっ! 我々は一切犯罪など犯していないっ!」
「我々は、ちょっと女性の好みが若いだけだっ!」
・・・・・・うん?
「そうだそうだっ! ただ愛でているだけで手など出していない!」
「そこらの性犯罪者と一緒にされては困るっ!」
「我々は『YESロリータ・NOタッチ』を掲げ、幼く可愛いものを愛で、日々研究に明け暮れる善良な研究者である!」
「どこが善良なんだよっ!?」
え、コイツ等・・・もしかしてなの? ってことは僕達を取り入れたい理由って・・・。
「こ、ここここの人達っ、全員ロリコンなんですううううっっっ!! うええええええんっ!」
ババア呼ばわりの理由判明




