15羽:黒尽くめに迫られるウサギさん
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
僕達兎の仲間意識は非常に強い、家族や仲間は命を預け合う存在だからだ。
そんな大切な仲間であるアルメリアさんを傷付けた、その罪は重いぞっ!
殺意マシマシの僕とそれが《共有》された子供達による報復が始まろうとしていたが、流石に冒険者さん達に止められた。
ただ、魔法検証に協力してくれた冒険者さん達が「これでもかってくらい煽ってくるから、それで我慢してくれ」って言ったので、それで許してやることにした。
兎も怒れば怖いことを教えてやろうと思ったが、残念だ。
・・・訂正、やっぱり怒っても可愛いかもしれない。
ぶーぶー言いながら足ダンしてる姿しか見えん。
時間は夕方に差し掛かり、流石に街の子供達も帰る時間。
僕達はまたゾロゾロと街なかを進み、ある程度の所で十羽一組となって子供達を家まで送って行った。
ウチの子達は送った先で親御さんに沢山お礼を言って貰えたらしく、嬉しそうだ。
ちなみにあとでヘレンさんに聞いた話なんだけど、僕達の今までの行動が東門付近の住民や冒険者さん、ギルド職員さんによって宣伝されていて、住民達からかなり信頼を得ているとのこと。
どおりで簡単に子供を預けるわけだよ。
ちょっと安易過ぎる気もするけど、子供達は楽しんで親御さんも負担が減る。ウチの子達も色々経験が出来るから誰一人として損はなし。
僕が気を付ければ良いだけの話なので、まぁ良いかと気にしない事にした。
家に帰ると、アルメリアさんと子供達がお昼寝していた。アルメリアさんは白いもふもふに囲まれて幸せそうだ。
《共有》を通して見ていたから知ってるけど、アルメリアさんの顔色も回復してる。良かった良かった。
「ぅう〜ん・・・」
「うーん、アルメリアさんの寝姿がエッチだ」
やっぱりアルメリアさんは着痩せするタイプだな?
ウチの子達に乗っかられて引っ張られたワンピーススカートが彼女のスタイルを露わにする。
巨乳だ、しかもスレンダー巨乳だ、けしからん!(ガン見)
「ふぁれ? イナバさん、おかえりれす」
「ただいま、アルメリアさん。ほら、ヨダレ拭こうね」
僕は彼女の口元を拭いてあげたあと、手櫛で髪を整えてあげた。
アルメリアさんは低血圧なのか、されるがままな様子がまたエロくて良いなと思いました、まる。
「アルメリアさん、元気になったね」
「は、はい。ご心配をお掛けしましたっ。何だかこの子達と寝ていると、凄く疲れが取れて・・・心も凄く落ち着くんです」
「あ、それに関してなんだけどね、ちょっと分かったことがある」
色々な所で聞かれる『兎と居ると疲れが取れる』という話だが、実は「これが原因では?」というものが発見された。
その正体は・・・ウサニウム、では無い。月魔法《月光浴》だ。
まぁ名前はさっき付けたんだけど、この魔法は『月の光を身体に溜める』というもの。んで、月の光には元々魔法的に体と心を癒す効果がある。
僕は当然の事、子供達も月魔法を使う事が出来るので魔境での移動から今日に至るまで体に月の光を溜め続けていて、それを放出することでセラピー効果を齎しているんじゃないかって考えた。
《月光華》以降僕はいくつか検証を行なった。その結果見えてきたのが、月魔法は回復と支援の能力を持った魔法だってことだ。
回復は体力よりやや魔力回復寄り。支援は文字通り能力支援、足が速くなったりとかだね。
あとは状態異常回復とか、呪いを解くなんていうスピリチュアル的なことも出来そうな感じがあった。
ちなみに熟練度の差のせいか、ウチの子達が使えた月魔法は2つだけだった。もっと色々考えたら増えるかな。
「つ、月魔法、使えるようになったんですねっ」
「うん、冒険者ギルドでみんなが協力してくれたお陰だよ」
これを伝えたらまた体調を崩すんじゃないかって心配したんだけど、冒険者さん達が「月魔法の検証に付き合った事を魔術ギルドに自慢してくる」と言っていたことを伝えた。
皆アイツ等のプライドをボコボコにしてくるって息巻いていた事をアルメリアさんに話すと、彼女は腹を抱えて笑い始めた。
「あはっ、あははっ、あははははっ! そ、それは凄く悔しがるでしょうねっ。プライドの高い人達ですから、冒険者に先を越されたって知ったらストレスで失神するかもしれませんっ。本当にいい気味ですっ」
「少しはスッキリした?」
「はい、とってもっ! イナバさん、ありがとう御座いますっ」
アルメリアさんはとっても可愛い笑顔でそう答えた、見た目以上にフラストレーションが溜まっていたらしい。
その晩いつも通りお泊りしていったアルメリアさんの表情には険も無く、とてもに清々しかった。
翌日以降も僕達はのんびりと過ごしていた。
朝から冒険者ギルドへ行き僕は勉強、子供達はヘレンさん達のお手伝い。そして新たに訓練場に月光華を咲かせるというルーティーンを加えた穏やかな日々である。
ちなみにその月光華に関して、月魔法の熟練度のせいもあるけど、子供達と僕とではそもそも月魔法の出力が違うという事が分かった。
数字で調べたわけじゃないからハッキリとは言えないけど、僕が咲かせる規模の月光華の花畑を子供達が咲かせようとすると、大凡50羽が協力してドッコイと言った感じ。僕が本気を出せば100羽以上だろう。
僕と子供達のステータスは結構似ている。だから考えられるのは熟練度2と10にそれ程の差が存在するのか、それとも僕のクラスが『輝夜姫』だからなのか。こればっかりは調べても分からんかもしんない。
・・・いや、そもそも輝夜姫ってなんやねん。
それらはさておき、僕らは今日も冒険者ギルドへやって来た。ここは最早僕の中で託児所扱いだ。
「ちわーっ、今日は60羽で来たよー!」
「ぷぅ~」
「ぷっぷっぷぅー!」
勝手知ったる何とやら。僕はいつもの様に挨拶をし、冒険者ギルドの扉をくぐる。
いつもならここでヘレンさんか冒険者さんか、誰かしら声がかかるんだけど・・・あれぇ、なんか空気がギスギスしてる。どしたん?
パッと目に入ったのは受付で険しい表情をしているヘレンさん、それに詰め寄る数人の黒尽くめの男達、それを取り囲む冒険者さん。あ、ギルマスも降りてきた。
何してんだろ?
首を傾げる僕だが、それに気付いて冒険者さん達が声をかけてきてくれた。
「イナバちゃん、今日は帰ったほうが良いよ。面倒なのが来てる」
「俺らの方で片付けておくから、何日かは来ないほうが良い」
僕達を心から心配してくれてるんだろう。
すごく嬉しいけど、それよりヘレンさんが心配だ。
「あの人は大丈夫、まず口で勝てる人はいないから」
「荒事になったら俺等で何とかしとくから、今は帰ったほうが良い」
ヘレンさんへのその信頼はなんなの?
まぁ今は子供達も居るし、そう言うなら今日の所はさっさと帰るか。
冒険者さん達の助言に従い、僕達はギルドを去ろうとする・・・が、ちょっと遅かったみたいだ。
『おい、そこのウサギっ。ちょっと待てっ!!』
『イナバさんっ!? あっちゃぁぁ〜・・・』
僕と目が合ったヘレンさんは、「失敗したぁぁ」と額に手を当てて俯く。
『貴様っ、何故いつまで経っても来ないっ!!』
「いや、アンタ達誰よ。あと声うるさい」
「ぶぅ、ぶー!」
「ぐーぐー!」
ヘレンさん達の居るカウンターまでそれなりに離れているはずなのにこの声量。近くにいる人の耳は大丈夫なのかな? ほら、ウチの子達もご立腹だ。
聞けば彼等は魔術ギルドの人達で、僕の事を待っていたらしい。いや、知らんがな。
『貴様がいつまで経っても魔術ギルドに来ないから、忙しい我々が態々貴様を迎えに来てやったのだっ!!』
『魔法を使える者が魔術ギルドに登録するのは当然のことだろうっ!!』
『滅多にない希少魔法だっ。我々がどれほど心待ちにしていたと思っているっ!!」
『歓迎会の準備もしていたのだぞっ!!』
『だが来ないから、場所が分からなかったり道に迷っているのかもと考え、こうして迎えに来たのだっ!!』
いや、お前ら良いやつかよっ!
あと、声がうるせぇよっ、ウサギの耳はデリケートなんだぞっ!
「ねぇ皆、魔法使える人は魔術ギルドに入らなきゃいけないっていうルールあるの?」
「いやぁ、登録は自由意志だぞ。入れねぇ場合はあっても、入らなきゃいけないルールはない筈だ。だよな、ヘレンさーん?」
『無いですよー。普通に考えれば分かるんですけどね、この方たちは魔力と一緒に常識も抜け出てしまった可哀想な人たちなんです。優しく見守りつつ無視するのが良いと思いますよ』
へ、ヘレンさん?
『おのれ、女っ。我等を愚弄する気か!』
『する気じゃ無いです、してるんです。そんな事も分からないんですか? それと女って呼ばないでください、確かに私は女ですが貴方がたに女性であると認識されていると思うと虫唾が走ります。虫唾って分かります? 虫の事じゃないですよ。まぁ虫は目の前にも全身真っ黒なのが湧いてますけどね』
『我等がお前を女と見るわけがないだろう、このババアっ! それよりも我々を虫と呼んだことを謝罪しろっ、この低学歴め!!』
『低学歴? 私が低学歴? 貴方が私の何を知っているというのですか? いえ、何も知らないのでしょう。知っていれば、こんな事をする訳がないのですから。で、何でしたっけ? 私それなりに良い学校出ていまして、古代ヒューマン語、神代エルフ語、勇者文字、あと主要な獣人族の言葉も分かるのですが残念ながら虫の言葉は分からないんです。そう考えると確かに勉強不足だったかもしれませんね、反省です。近くに虫の巣があるわけですし、確かに受付嬢として虫の言葉も覚えるべきでした。ところで私は王国の最高位『王立アカデミー』を首席で卒業しているのですが、虫さんの最高学歴を後学までに教えて頂いても? ほらほら、早く鳴いてください。虫の言葉を広めるチャンスですよ?』
ヘレンさん、レスバ強くね? ていうか、怖っ。
一反撃したら十帰ってくるじゃん、口撃力高すぎるんだけどっ!?
ヘレンさんと罵り合っていた魔術ギルドの男達だったが、途中でそんなものに意味がないことに気付き、ヘレンさんを無視して僕に詰め寄ってきた。
ズカズカと近付く男達。冒険者さん達を掻き分け、僕の姿を間近に捉えた時、全員の動きが『ビシッ!』と止まる。何だ?
「な、なななななあああああっっっ!!!!!!」
「そんな馬鹿なあああっ!?」
「な、なんてことだっっっ!!!!!!」
「え? な、何?」
男達が突然ガタガタと壊れた洗濯機みたいに震え始め、僕を見て叫んだ。失礼な奴らだな。
なんか腹立つし、うるさいから子供達のキュートなウサ耳(ここ重要)に何かあっても困るからさっさと立ち去ろう。
僕達が踵を返すと、男達が必死な様子で僕達を引き止めた。
「どうかっ、どうか魔術ギルドに来て欲しいっ!!」
「ギルドで貴女方を御迎えする準備をしている! せめて貴女の御姿を皆の者に一度だけでもっ!!」
「我々は御嬢さん達全員を歓迎するっ。いや、奉迎するっ!!」
だから、煩ぇつってんだろうが!! 子供達のウサ耳が悪くなったらどうする!
何なんだお前らはっ! さっきと態度が全然ちがうじゃん、奉迎なんて前世含めて初めて言われたわ。何がお前らをそんなに必死にさせるんだ?
「す、すみません。普段から煩い場所で生活をしているものでして、大声で話すクセが・・・」
「ですが、貴女達を害する意図は全く無かったのです!」
「どうか我々の為と思って、どうかどうか・・・」
いや、行くわけないでしょ。
だって普段から大声で話さないといけないような場所なんでしょう? そんなところに行ったらウチの子達のお耳はどうなっちゃうのさ? 行かへん、行かへん。
僕は再び扉に向かう。
「そ、そんなっ!」
「貴女方がいらっしゃる間は全ての研究を止めますので、どうかっ」
なんぼ言われても行かへん、行かへん。
そもそも僕は、友達のアルメリアさんや仲の良い冒険者さん達をイジメたこの人達が嫌いなのだ。
「どうかっ、本当に我々は貴女方が来てくれるのを心待ちにしていたのです!」
「貴女方の為に特別に取り寄せた物もあるのですっ」
「ですからっ。どうか、どうか・・・」
遂には土下座し始めたぞ、コイツら。
ギルドのホールで、沢山の冒険者に囲まれ。
沢山の女性冒険者の軽蔑の視線に晒されながら。
土下座で僕の足元にすり寄る魔術ギルドの男達と。
戸惑う兎達。
ひどい光景だ。
もう無視して行った方が良いな。
僕が総判断した時、男達がある言葉を口にする
それを聞いた僕と子供達は本能的にこう答えてしまった。
「え、行く」
そりゃ全身真っ黒で、黒ローブ纏ってたらそう言われるわ




