13羽:お礼をするウサギさん
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
「ぷぃー!」
「ぷぅぅ〜♪」
「またなー、気を付けて帰れよー」
「また来てねぇ〜、お姉さん達いつでも大歓迎だからぁ〜」
「ぷぷぅ♪」
「あはは、どうもお世話になりましたー」
冒険者やギルドの職員さんに見送られて、僕達は冒険者ギルドを後にした。
今回、調べたり検証をした事で僕が気になっていた事が少し解明される。
まずウチの子達が異常に魔法が上手な理由、これは子供達が僕のイメージを読み取り使っていたから。
次に、群れに参加したばかりの子が土魔法をすぐに他の子と遜色ないレベルで使えた理由、これは他の子の経験値を共有したから。
じゃないと可怪しいもんな、普通の兎は戦う事を選ばない。なのに群れに参加して10日しか経ってない子がこの間普通に《土壁》使ってたし。
そう言えばこの子達よく「敬礼!」ってやってくれるけど、あれもきっと僕のイメージが伝わった結果なんだろう。
あの魔境でどうやって知ったんだ? とか思ってたけどそういう事か、いやぁースッキリ! 何か歯に挟まっていたものが取れた気分だ。
僕は色々分かって気分がルンルン、それが伝わって子供達も気分ルンルンだ。仲良く手を繋いで歩く。
街は夕方の光で赤く染まっていた。
「僕の住んでた国ではね、夕焼けの歌があったんだよ。『夕焼〜け小焼け〜の、赤トンボ〜♪』ってね。赤トンボ知ってる?」
「ぷぅ?」
「ぷぅぷぅ、きゅー!」
「そっか知らないか、まぁ確かにこの世界だと赤トンボって魔物になってる気がするなぁ・・・え、続き歌うの?」
『きゅー♪』
「えぇー、あんまり得意じゃ無いんだけど・・・仕方ないなぁ。でも皆も鼻唄で良いから歌ってね?」
《共有》で歌詞やリズムも分かるだろうし、いけるだろう。
僕達は手を繋ぎ皆で歌いながら、夕焼けに染まる街をちょっと遠回りして家に帰った。
「ただいま〜」
『くーっ、くぅーんっ!!』
「え、何。どうしたの──って、どああっ!?」
家に帰ると、僕はお留守番していた子供達に押しつぶされた。
え、何どしたん? え、歌がどうしたって・・・散歩? 待って、一斉に喋ると分かんないからー! Hey.マリアちゃん、今の状況説明してくれ!
「あ、おかえりー。何かね、子供達が突然聞いたこと無い曲をぷぅぷぅ歌い出してね、それが終わったらくぅんくぅん鳴きだしたり、ダンダンって床を蹴り始めたのー!」
「なな何だか怒ってるというかっ、拗ねてるというかっ、そんな感じでしてっ!」
「拗ねてる? あぁ、そういう事か!」
それを聞いて、お母さんすぐに分かっちゃいましたよ!
多分、幼年組が羨ましかったんだな。
今まで楽しく一緒に歌ったり散歩したりなんて絶対出来ない場所に住んでたから、さっきそれが伝わって「ズルいっ!」って思っちゃったんだろう。
でもこの子達は仲間内で「ズルいっ、羨ましいっ!」って言い合いを絶対しないから、僕に文句を言いに来たんだ。
つまり、僕に甘えに来たってこと。
もぉ~、仕方ないなぁ!
そんなに羨ましかったんか? ん? 可愛い奴らめ、可愛い奴らめ! ほれ、もふもふナデナデしてやろう!
「きゅーん♪」
「ごろごろごろごろ・・・♪」
「ぷぅぷぅぷぅ」
「ぷぅー!」
「ぷぅぷぅぷぅ〜」
別に年齢気にせず甘えに来てええねんで、お母さんそういうのいつでもウェルカムだから。
でもそうだね、今日はお利口さんにお留守番してくれたから、年長さん優先で一緒にネンネしようねー。
僕の言葉を聞いて、みんな満足してくれたのか思い思いの場所に移動していった。
僕の周りに居るのは、再び幼年組だけである。
ちなみに僕はざっくりと子供達をこう分けている。
・幼年組(1歳未満)・・・約60羽
・年少組(1歳以上)・・・約80羽
・年中組(3歳以上)・・・約50羽
・年長組(5歳以上)・・・約10羽
僕達兎が5年も生き残る事は滅多にない。寿命は知らないけどその前に死んじゃうことが殆どだからだ。
だから必然的にこの年長組さんは僕の群れの初期メンバーということになる。ここ最近参加した子達は多分年少組以下かな。
この中で僕という存在がずっと付いてなきゃいけないのは幼年組だけ。離れられるのは数メートルだ、殆どカルガモ状態。
年少組はお留守番できるけど甘えん坊。
年中組はそこまで甘えてこないけど、ずっと僕を見てる。成長中かな。
年長組は僕を他の子に譲れるし、群れ全体をよく見てる。頼りになるお兄ちゃんお姉ちゃんだ。
だからこそ逆に僕がよく見るようにしてる、いつでも甘えられるようにね!
「いつもながら、イナバちゃんってお母さんしてるよねー。凄いっ、私も甘えて良い?」
「良いけど、マリアちゃんいくつ? 7歳に甘えるの?」
「ぅ゙っ!?」
まぁ全然甘えに来て構わんけどね! それよりも僕は龍の翼のみんなに用事があるのだ。
僕のウサ耳が他の階にバーニィさんとリドが居るのを確認してるので、全員に集まって貰った。
「子供達に引っ張られてきたのですが、俺達に何か御用ですか?」
「ちっす、イナバちゃん! なーんか会うの久し振りっすね」
「久しぶりー! 今日は皆の近況を聞こうと思ってね。帰ってきてから、皆どうなの?」
「あー、一応仕事は再開していますよ。ただその、装備がですね・・・」
ギルドで装備の貸し出し制度があるらしく、龍の翼の皆はそこで武器を借り、とりあえずは冒険者業を再開しているそうな。
ただ僕が魔境に捨てていった装備ってのが、何か結構お高めかつレア度の高いもんだったそうで、中々元の生活通りとは言っていないらしい。
「ウチは弓使いだから矢はが消耗品で高くつくし、何よりアルメリアがねー」
「・・・希少な魔法石だったので、ぐすん」
「マジか・・・」
聞くところによると龍の翼はなんとBランクのパーティー、しかもバーニィさんとアルメリアさんはBランク冒険者だそう。
そりゃあもう装備も良いもの使ってるよな。
「そっか、それ聞いたあとでこれ言うのも何か自信持って言えないんだけど、皆の武器を僕に作らせてくれない?」
「え、どういう事です?」
僕はギルドで魔法について学んだ時、色々考えたのさ。
そもそも魔法で作った土ってのは、アルメリアさんが言うように魔力が籠もっていてこそ効果を発揮するので、魔法を解けば魔力が抜けてただの土になる。
じゃあ何で僕達が作った《土壁》や《硬化》は効果を失わないのか、それは僕達が土を粒子レベルで操作してるからだと考えた。
土が脆いのは粒子の結合が弱いからだ、逆に僕達みたいに粒子の隙間が無くなるほどガッチリ固めてしまえば、それは金属にも勝るものになる。
僕はこれを使って、物が作れないか考えた。
僕は床に手を着く、床はまだ何も敷いていないので土のままだ。だからその中から粒子が細かい物だけを引っ張り、その中から砂鉄のような金属や硬いものを選ぶ。
「《粘土細工》!」
確かバーニィさんは大盾を使ってたな、まずはそれを作るか。
あの時捨てた盾のデザインを思い出して、土の中で形にしてギュッと粒子レベルで圧力をかける。
あれ? 結構難しいぞ。あれか、鉄分をメインに集めたからか? やっぱり土と地中の鉄分は違うものなのかなぁ・・・まぁそこは魔力でゴリ押ししよう、おらあああああああああっっっ!
何かごっそり力を持っていかれた気がしたけど、上手く行った気がする。
僕は出来上がったそれをモコモコと土の中から取り出した。
出来上がったそれは、イメージ通り鈍い輝きを放つそれはそれは頑丈そうな盾になっていた。
「これはっ、俺の使っていた盾っ!? いや、素材が全然違う。見た目よりも重いですね、でも使いやすい。イナバ殿っ、これすご──『す、凄いですうううううっっっ!!』──ぃです、ね・・・」
アルメリアさん、嬉しいよ。嬉しいけど、ちょっとバーニィさんに最後まで言わせてあげよう? ほら、何か勢いを挫かれてバーニィさんが「スンッ」てなってるじゃん。
バーニィさん大丈夫、ちゃんと気持ち伝わってるよ。喜んでくれて良かっ──ちょ、アルメリアさん近い近いっ!
美少女に迫られるのは嬉しいけど、勢いが怖いっ。やめて、覆い被さらないでっ。この子力強いな、おいっ! あと、アルメリアさん着痩せするタイプか? 胸結構デケェな。
いろんな意味で動けなくなった僕はマリアちゃんに救助され、事無きを得る。
ちょっと勿体ないなと思ったのは内緒。
「改めて、イナバ殿の作って下さった盾は凄いですね。以前使っていたものと遜色ないというか、それ以上です」
「武器にうるさいアンタが言うんだから、本当に凄いのねー。流石イナバちゃん!」
「こんな感じで武器と防具を作ってお礼しようかなって思ってたんだけど・・・さっきの話を聞いて、ちょっと自信無くなってきた。前の、良い武器だったんだよね?」
「何をおっしゃってるんですかっ! これ凄いですよ、前のもの以上です!」
お、この感じは充分お礼になりそうか?
全然オッケーらしいので、じゃあちょっくら頑張っちゃうか!
それから僕はバーニィさんの片手剣、リドの槍、そして皆の防具を作り上げた。
防具には薄く軽く硬い硬板を作り、内側に衝撃吸収の素材を付けられるようにした。そうしないと衝撃が突き抜けてくるからね。
それを説明すると「そうなのかっ!」って驚かれたが・・・普通に考えるとそうじゃない?
前衛に対して困ったのが後衛二人の装備。
まずマリアちゃんだけど、当然土ではどう頑張っても弓矢は作れない。
そこで、限界まで軽く鋭くした鏃をプレゼントすると凄く喜ばれた。何でも矢って鏃が一番高いんだって。さもありなん。
ただそれだけだと何かアレなので、朧気に思い出したスプリング弓(金属板バネ弓)を渡した。クソ重かった。
そして一番困ったのがアルメリアさんの装備、だってあれ全部魔法素材じゃん? 土全く関係なさそう。
そこで聞いてみたところ、魔法杖と言うのは魔法石と魔杖で全く機能が違うらしい。
魔法石は魔力を増幅し、魔杖は持ち主と魔法石を繋ぐ血管の役割だ。
中には魔法石の無い杖もあるそうなんだけど、それは魔杖の素材がパスと増幅を兼用している。ただその分全体の機能が落ちちゃうんで、上級の魔術師は何か理由がない限り魔法杖を使ってるみたい。
そういった構造をしているから、特に重要なのは魔法石。魔杖の素材には選択肢が多い事もあるけど、まぁ魔法石そのものが希少なせいもある。
「だ、だから魔法石があれば6、いえ7割くらい力が戻ります!」
「にゃるほどねぇ〜」
魔法石。石ってことは泥でも作れるのか?
いや、そもそも魔法石ってなんだ? 前に見た杖に付いてたのは、何か宝石っぽかったけど。
「ま、魔法石と言うのは固形化した魔力の塊ですっ! 例えば魔石も魔法石になりますが純度が低過ぎて、余程ランクの高い魔物じゃないといけませんっ。あとは地面に埋まってたり、木に成っていたり、色々ですっ!」
魔石・・・はちょっと分かんないけど「琥珀みたいなものか!」と何となく理解した僕は、皆に作ったものを手渡しアルメリアさんにだけもうちょっと待ってもらうようお願いしてその場は解散となった。
なお、龍の翼の皆はそのまま我が家に泊まっていくことに。なんか、バーニィさんもリドもマリアちゃんが言うように子供達と寝たほうが次の日調子が良いらしい。
ええよええよ、いくらでも泊まっていきんしゃい。
僕は「ウサニウム」の存在を疑いつつ、そのまま年長組に埋まって眠るのだった。
アートクレイシルバーは楽しい。ただ、高い。




