11羽:筋肉と喋るウサギさん
ウサギ語の大味説明(会話内容は想像しましょう)
『ぷぅ、ぷぷぅ♪、きゅっ! きゅー♪ ごろごろ』
・・・嬉しい、楽しい、興奮、甘えたい、気持ちいい
『ぐぅ、ぐーっ!、ぶぅ ぶー だむだむっ!(足ダン)』
・・・不満、怒ってる、警戒、拗ねてる、羨ましい
『くー、くぅーん、きーっ! だんだんっ(足ダン)』
・・・怖い、危ない、痛い、悲しい、寂しい
ヘイル隊長さんの元を後にした僕達は、その足で冒険者ギルドに向かった。
ちなみに今日は非番だったらしいクレマチスさんが、付き添ってくれる。いや本当に助かります。
そのクレマチスさんは両手をウチの子達と繋ぎ、更に一羽背負って歩いていて見るからに大変そうなんだけど、凄く嬉しそうだ。
大丈夫? 重くない? 確かにウチの子達というか、僕含め僕達兎は確かに軽いとは思う。でも流石に『羽根のように軽い』とまではいかないと思うんだけど・・・。
その為に鍛えてるから大丈夫って? いや、その為に鍛えてる訳じゃないでしょっ!?
でもまぁ何か幸せそうなので気にしない事にした。
「はいっ、イナバさん。ここが冒険者ギルドです! ちなみに騎士の中にも個人的に登録している人が居るんですよ。人々がどんな事に困っているのか、それがよく分かる場所でもありますからね!」
「なるほど、そういう風に見ることも出来るんだね」
流石騎士、人を守る事に余念が無い人達である。
ちなみに騎士には騎士用の身分証明が貰えるそうで特に必要無いんだけど、何かとギルドは利用することがあるので、皆どこかのギルドには登録してるんだって。
僕達はクレマチスさんに連れられそのまま200羽揃ってギルドの中へ。ギルドはそれなりに広い場所だったけど、そこが一気に兎で溢れかえった。
「全員は入れないので、私は外で他の子達を観ていますね。イナバさんはご自分と、あとは順番に子供達を登録していってあげてください」
「うん分かった。子供達をお願いね」
流石に駄目か。
仕方ないので、僕はまず15羽ほどを連れてカウンターへやってきた。
先程のやり取りを見ていたんだろう、ギルド中から『いったい何が起こるんだ?』という視線が集まる。
そして受付のお姉さんも、ちょっと顔を引きつらせながらこっちを見ていた。
「こ、こんにちわぁ〜・・・今日は沢山でどうしたのかな、お嬢さん?」
「冒険者登録をしにきたんだけど、お願いしても良いですか?」
「あ、良かった・・・何かあったのかと思いましたよ。ご登録ですね、何か紹介状とか持ってたら見せてね」
紹介状? あぁ、あれかな?
僕はヘイル隊長さんから貰った証文とか言うのを渡した。するとお姉さんの表情が青褪める。
「200人分の登録ううううっ!?」
あ、叫んだ。まぁ当然っちゃあ当然か。
お姉さんもそこはプロ、すぐに持直し「す、少しお待ち下さいっ!」と言ってカウンター奥の階段から二階に上がって行った。
尚、その後の会話も僕のキュートなうさ耳にはしっかりと聞こえている。
『ギギギギルド長っ! 登録です、物凄い人数の登録が来ましたっ。200人です!』
『はぁっ、200人だっ!? 村人全員が移動でもしてきやがったのか! 一日十人ぐらいに絞って追い返せ!』
『それが紹介状もありまして・・・』
『誰だっ、そんな非常識な紹介状書いた奴ぁっ! ってヘイル、アイツかああああああっ!!』
ヘイル隊長さん、全然話通って無いじゃん・・・。
『アイツ、ここぞとばかりに無茶言いやがって・・・。で、どんな奴等だ?』
『全員を見たわけじゃありませんが、同じ種族の獣人というか凄く可愛い子供達です』
『じゃあ俺が行こう、お前も着いてこい』
『うぅ、何か貧乏くじを引いた気配がしますぅぅ』
ってな会話がありました。
まったく、化け物にでも会ったような反応じゃん。失礼な話だ。
僕はぷんぷん、子供達も真似してぷんぷん、たぶん外でも子供達が真似してぷんぷんしてるだろう。
何それ、ちょっと見たい。
そんな事を考えていたら、カウンターの奥からそれはそれはデカい男の人が出てきた。
「おう、お前ら冒険者登録したいんだって? ・・・思った以上にちっせぇな」
カウンターの奥から出てきたのは映画でも見ないような筋肉の大男。もうこれ、マッチョなんじゃなくて、人型の筋肉って言ったほうが正しい気がする。
「あのな、嬢ちゃん達。登録ってのは嬢ちゃん達が思ってる以上に面倒な手続きと作業が多いんだ、200人もいっぺんに登録しようとすると一日ギルドの作業が止まっちまうんだよ。紹介状があろうと、無理なもんは無理だ」
「き、筋肉が喋ってる・・・」
なんか真面目に説明してくれてるんだけど、脈動してる筋肉と血管に目がいって仕方ない。僕の位置からじゃ、胸筋で顔が見えない程だ。
これ、本当に人間か? 思わず思ったことが口に出ちゃった。
しまった、失礼な事言っちゃったかな。
しかし僕の思いに反して、それを聞いた筋肉は破顔させて上機嫌になった。
「おぉっ、この筋肉の良さが分かるかっ。中々話のできる嬢ちゃんじゃねぇか! よし、今日全員登録してやるよ。おいヘレン、200人分の登録準備だ!」
「無理に決まってるでしょっ、筋肉馬鹿ギルド長!」
「おぃおぃ、筋肉馬鹿とか好き勝手言ってくれるじゃねぇか・・・褒めても筋肉しか出ねぇぞ?」
「要らないですっ!」
あー、きっとこの人はアレだ。きっと「パワー!」とか言っちゃう感じの人だ、たぶん筋肉ルーレットとかも出来ちゃうんだろうね。
「あのー、流石に僕も200羽全員登録するのは大変だって分かりますし、一気にしようとは思っていません。だからまずやり方を教えて貰えませんか?」
「え、本当ですか!? 凄く助かります、この筋肉とは全然会話が出来なくて・・・」
「おいおい褒めるなって」
「褒めてないですっ!!」
大変だなぁ・・・。
僕はお姉さんに心の中でエールを送る事しか出来なかった。
それからお姉さん(ヘレンさんと言うらしい)にギルドについての色々、そして登録の際の手続きについて教えて貰う。
まずギルドと言うのは国家に関係なく存在する組織で、政治軍事に関わらない代わりに国も関与出来ない独立した機関だ。
一口にギルドと言ってもその種類は多く、冒険者ギルド、魔術ギルド、商業ギルド、治術ギルド、錬金術ギルド、従魔ギルドetc...。
本当にいっぱいあるらしいけど、基本的には最初に挙げた6つが一番大きなギルドで、似たような組織を傘下に持っている感じらしい。
まぁ詳細を聞いてもよく分かんなかったし、正直「魔術と錬金術って一緒じゃね?」とか思うので、必要になるまで覚えなくて良いと思う。
そして件の登録方法だけど、まずは簡易鑑定水晶でステータスを見た後、それに表示されない詳細情報を書類に記入。職員さんはそれをパソコン的な物(全然違うけど)でカードに情報を入力していく。
手書きの方は書きたいものだけ書く感じで良いらしく、人によっては出身地や年齢、場合によっては名前やクラスも書かない人も居るらしい。
ただ、ギルドではパーティーのマッチングもしているので、いっぱい書いたほうが有利との事。
カードが出来たら、持ち主はカードに魔力を流す。
流すと、カードに詳細が表示されるようになって、内容は都度魔力から情報を得て自動更新される。
ギルド証とはそういった、超ハイテクなアイテムらしい。
そこまで聞いた僕は、ヘレンさんにある提案をする。
「ヘレンさん、僕達ウサギは僕以外群れ全員が同じステータスなんです、違うのは年齢ぐらいでして。そういう時って同じものを200枚複製したりできます?」
「はい、紛失の際に再発行することもあるので出来ますが・・・それ凄いですね。種族特性みたいなものですか?」
「はい、たぶん。じゃあ今日は200羽全員同じステータスか見て貰って、同じなら書類内容も同じにして複製。何日後かに手続きを進めるってどうですか? その方がヘレンさん達の負担が少なくなると思うんですが・・・」
僕達は《共有》でお互いを認識するから名前が無いし、無くても困らない。
子供達もそれで良いと思ってるから、何かの際にちょっとづつ決めていこうと思ってたんだ。
だから今回書類の記入するのを種族と出身地、クラスだけに絞れば全員一緒だ。
複製できるならヘレンさんの負担も減ると考えた。
今日必要なのは僕の身分証明書だけだしね。
「良いんですかっ、それすごく助かります!」
「ほぉ〜、確かにそれならかなり手間が省ける。嬢ちゃん頭が良いな」
感心してるなよ、これアンタが考える事でしょうに・・・。
僕が半目で筋肉を睨んでいると、目の前で『ベキッ!』とカウンターが砕ける。
理由? 言うまでも無いでしょう。
僕の目の前には笑顔のヘレンさんが居た。
この二人、力関係どうなってるんだろ? ヘレンさんの方が上か? いやでも筋肉が怯んでる様子無いし、何なら「がははははー!」とか言って超余裕だし。
コレたぶんヘレンさんが我慢して終わるな、可哀想に。今度子供達をデリバリーしてアニマルセラピーでもさせてあげよう。
「じゃあヘレンはガキ共のステータスに違いが無いかチェックしていけ、パパっとでいいぞ。俺はこっちの嬢ちゃんの登録をしておく」
「カシコマリマシタ」
うわぁっ、めっちゃ怒ってる!?
ほら、ヘレンさん。笑顔笑顔! 美人さんは笑顔の方が素敵だとウサギさんは思います!
その後ウチの子達200羽が入れ代わりで鑑定水晶に手を置いてステータスを表示していく横で、僕の登録が完了する。
冒険者は実力がランクで分かれていて最初は『F』、そこからE〜Sへと上がっていく、だいたい何処のギルドも『B』が最高ランクなんだってー。
『A』はそこそこ居るらしいんだけど、皆あちこちフラフラしていて当てにならないらしい。
そして『S』になると片手で数えるほど。名誉ランクのなんじゃないかって言われているが、実際は本当に人間離れして強いとのこと。
さて、そんな僕はというと、何といきなり『E』からスタート!
これはヘイル隊長さんの紹介状に、魔獣騒ぎでの僕の貢献について書かれていたかららしい。
理由があって、立場のある人が紹介すれば、新人でもある程度ランクが上がった状態から初められるんだって。
ちなみに冒険者は、1人は『ソロ』、2人は『ペア』と呼ばれていて、3人〜6人揃えば『パーティー』として登録できる。
同盟含め合計10人を超えると『クラン』として登録もできるとのこと。
同盟ってのは協力関係にあるパーティー同士のことね。
クランは一緒に行動できる人数の上限はパーティーと一緒だけど、クランとしてギルドから色々援助して貰えるんだって。色々あるんだねぇ。
僕達はたぶん家族でしかパーティー組まないし、全員で200羽居るから追々クランを発足することになるだろう。
尚、クランリーダーは最低限Cランクじゃないとダメらしい。
頑張ってランクあーげよっ。クラン名も考えておかないと!
読み返せば、ただのギルド説明回でした




