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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
戦乱
44/49

一騎打ち


 結衣達とジークベルト将軍が死闘を演じていた頃、アビラ砦へと向かっていた、ジェイ万人長の一行は、深い森の中で帝国軍から夜襲を受けていた。



 不意に漆黒の闇をひきさいて、数千の矢がジェイ万人長率いる帝国軍討伐隊を襲った。

 矢が地面に突き刺さると、ぼふっと湿ったような音を立てて、土埃のような粉をまき散らした。

「こ、これは、痺れ茸の粉だ、吸い込むな、布で口を押えるのだ」


     王国兵

     王国兵

     王国兵

     王国兵

帝国兵帝国兵→王国兵

帝国兵帝国兵→王国兵

     王国兵

     王国兵

     王国兵

     王国兵

     王国兵




「「「「うおおおおおおおおおー」」」」

 森の中から、数千の帝国兵が雄叫びを挙げながら、王国軍の長い隊列の脇腹をえぐるように突撃してきた。


「怯むなー、帝国軍の数は少ない! 殲滅してやれー」

 ジェイ万人長が馬上から兵を鼓舞すると、王国軍の兵は剣を握りしめ帝国兵を迎え撃つ、そこらじゅうで金属音が響き渡り、剣と剣が闇の中で火花を散らして交錯していた。


 ジェイ万人長が鬼神のごとく剣を振り降ろすと、骨を切る音が鈍く響いて、横に薙いだ剣の光が、うすやみをやぶってきらりと光る。

「一気に潰してしまえー」

「「「おおおお」」」


王国兵王国兵王国兵

   ↓

  帝国兵帝国兵→

  帝国兵帝国兵→

   ↑

王国兵王国兵王国兵



 隊列の前後の王国軍が帝国軍を囲うように、襲い掛かるが、帝国軍は足を止める事無く、目の前の王国軍を撃破し、そのまま闇を駆け抜けていった。


「ジェイ万人長、追撃いたしますか?」

「いや追撃は不要だ。それより負傷者を馬車に乗せろ、砦に急ぐぞ」

「はっ、痺れ茸の粉で動けない者が多く、馬車に積み込めません。」

「では、アビラ砦に早馬を出して、空の馬車をありったけ借りて来い」

「承知いたしました。」



 暫くすると、三十輛ほどの馬車がアビラ砦より到着、テイス将軍が自ら率いて来たのであった。

 ジェイ万人長はテイス将軍の姿を見ると、目を丸くして

「テイス将軍自らこの場に来るとは、危険ではないですか!」

「心配せんでいい、いつもの事じゃ」

「そ、そうですか……」

「ああ、ここ数カ月、お互い敵を見つければ夜襲を繰り返しておる。帝国の指揮官もなかなか辛抱強い男のようでな」

「テイス将軍の方からも夜襲ですか?」

「ああ、儂らの方が夜襲しておる、奴らは夜営しておるからな」




-----



 闇夜を切り裂くように一頭の馬が帝国軍の陣に入り、馬に跨っていた兵士が伸の天幕に通された。

 兵士は伸の前に跪くと

「頭を上げよ、儀礼的なことはいいから、作戦の成果を教えてくれ」

 兵士は伸に言われると、頭を上げて

「王国軍約二万の部隊を夜襲し、我が軍の被害は千程度になります。」

「うむ、それより例の件は上手く行ったのか?」

「はい、王国軍の鎧を纏った者を千名戦場に置いてきました。」

「解った、下がってよい。」

 伝令の兵が天幕を出て行くと、伸の側近の男が

「上手く行きますでしょうか? 王国軍に気が付かなければ良いのですか」

 伸は立ち上がり

「ここ数カ月、苦労して王国軍の装備を集めて来たのだ、どれだけの被害を出して来たことか……」

 側近の男も頷きながら

「何度も何度も夜襲を受けて、そのたびに少なくない被害が出ました……この作戦を成功させなければいけませんね。」

「そうだ、最後の仕上げが必要だ、夜が明ける前に、王国軍を再度襲撃するぞ、撤収を急がせるだけだから無理はしなくて良いと、兵達に伝えてくれ」

「承知いたしました。」

 と、側近の男は、天幕を出て部隊編成を始めた。



------



 満天の星空から小さい順に、その光が消え始めた頃、帝国軍が再び王国軍に襲い掛かろうとしていた。


 慌てた様子でジェイ万人長のもとへ報告に来た兵士が

「ジェイ万人長、帝国軍と思られる集団が西からこちらに向かっていると、斥候から報告がありました。」

 ジェイ万人長は慌てるそぶりもみせず

「テイス将軍、私の直轄部隊が殿を務めますので、負傷者を率いてアビラ砦までお願いします。」

「うむ、承知した、無理するでないぞ」


 ジェイ万人長が部隊を編成し、西へ向かうとテイス将軍は周囲に負傷者の回収を急がせた。

「死んでいても生きていてもどちらでもいい、王国軍の鎧を着ている者は、馬車に乗せて行け、一刻も早くここを離れるぞ!」


 ジェイ万人長が目を凝らして闇を見つめていると、小さな人影が蟻のように沸いて来た。

「帝国軍のクソ共が性懲りも無く来たようだ、我に続けこちらから仕掛けるぞ!」

 と、ジェイ万人長が剣を高く掲げ単身帝国軍へ向かうと、兵達もそれに続いた。


 ジェイ万人長が馬上から槍を振り回し鬼神のごとく帝国軍に突っ込むと、帝国兵達は怯み、ジェイ万人長の周りは潮が引くように兵が少なくなり、目指す一点へと、あっという間に到着した。


「シン隊長、お下がりください。やり手の強者が迫っております。」

「もう遅いんじゃないかな?」

 伸はひょうひょうとした感じで危機を察知すると、ジェイ万人長は目の前まで迫っており、その槍を伸に向かって振り下ろした。

 伸が思いっきり地面を蹴り上げ、後ろ向きに宙がえりすると、ジェイ万人長はニヤリと笑い。

「ほう、剣術のできぬ軍師様と聞いていたが、身のこなしは王国軍の白い悪魔なみではないか」

「剣は好きではないが、死なない程度には嗜んでますよ」

 と、言いながらサーベルを抜いた。


 馬から降りた全身金属の鎧を纏ったジェイ万人長は、槍のリーチを活かし伸を一方的に攻め立てた。

 突きを繰り出すと、伸は右へ左へと身をかわし、水平に槍を振りまわせば、宙に舞いその刃をかわした。


 うあああっと雄叫びを上げてジェイ万人長に斬りかかった帝国兵を槍で突き刺すと、帝国兵は自らの体を貫いている槍を両手でしっかりと押さえつけた。

 そのチャンスに伸は一気に間合いを詰めサーベルを突き出すと、「甘いな」っとジェイ万人長は、槍を捨て剣に持ち替え伸に斬りかかる。

 ジェイ万人長の剣は伸の左腕を斬り落とし、伸のサーベルはジェイ万人長の顔を覆うバイザーの僅かな隙から眼球越しに頭を貫いた。


 ジェイ万人長が討たれたことを知った王国軍は撤収を始め、大怪我を負った伸のもとには帝国兵が集まっていた。

「シン隊長! 大丈夫ですか!」

「大丈夫なわけねーだろ、早く手当てしてくれ」


 伸の横で薪を焚き剣を熱していた兵が目配せすると、兵士達が伸の四肢を押さえつけた。

「シン隊長! 恨まないで下さいよ、後で懲罰とか言うのならこのまま放置しますよ。」

「そんな事はしない、早くやってくれ。」

 兵は赤く熱せられた剣をゆっくりと、斬りおとされた腕の傷跡に押し付けた。

「ぎゃあああああああああ! てめーぶっ殺す、う、う、うぎゃああああああああ!」


 朝の平原に伸の叫び声が響き渡った。



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