名も無き丘の戦
燃えるような夕陽が西のちぢれた雲のあいだから草原を赤く染め上げ始めた頃、王国軍は、騎兵隊を先頭に縦長の陣形で帝国軍へと突撃を開始した。
(帝国軍)
□■ ■ジークベルト
□□ □帝国歩兵
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騎騎
騎騎
盾盾
盾盾
剣剣
剣剣
弓弓
弓弓
(王国軍)
結衣を先頭にした騎兵隊は、大楯を持ちまち構える帝国軍と真正面からぶつかり潰すように蹴散らしたが、直ぐに二列目、三列目の兵に押し返されてしまう。
こう着状態になった頃、王国軍の歩兵隊が追いつき、騎兵隊は自軍の歩兵に押し出されるように左右に別れた。
(帝国軍)
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□■□
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□盾盾盾盾□
騎騎剣剣剣剣騎騎
弓弓弓弓
(王国軍)
最前線は大楯を持った兵士同士が、おしくらまんじゅうのようにぶつかり合い、王国軍は弓兵がその後方部隊に弓を放っていた。
数の力と後方からの圧力により、帝国軍が王国軍を押し込み始めた頃には、陽は完全に落ちてしまい。兵士達は目の前の敵兵と剣を交わす事しか出来なかった。
(帝国軍)
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□■□
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騎□□□□□□騎
騎□盾□□盾□騎
□剣□□剣□
弓弓
(王国軍)
両軍共に、相当数の犠牲者を出し、夜戦による乱戦状態となった頃、王国軍の歩兵部隊が陣形を立て直しながらじりじりと下がり始め、騎兵隊が両翼を押し上げると、帝国軍を挟み撃ちにする形になる。
これは結衣が思い描く通りの展開となった。
(帝国軍)
騎騎騎騎
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剣盾盾剣
弓
(王国軍)
(コンサ、ジークベルトは何処にいるの?)
(お前から見て左にいる、隙を見て逃げようとしておるぞ)
結衣が左に回り込むと、黒い集団が目に入る。
「あれだ! ジークベルト逃がすかー!」
すると、馬上のジークベルトは余裕の表情で
「またお前か……、ことごとく私の邪魔をするの、しかし、それも今日までだ、黒騎士団やってしまえ!」
ジークベルトの周囲にいた全身黒の甲冑を身に着けた十騎の騎兵は、意を決したように仮面を着けると、ランスを前面に突き出して結衣へと突進してきた。
先頭の黒騎士と剣を交えるが、後ろから来た黒騎士のランスに結衣の馬が貫かれてしまい、結衣は落馬してしまう。
「ユイ姉~~~」と奇声を上げながら突っ込んで来たイタカレが馬ごと黒騎兵に体当たりしふっとばし、自身も落馬し尻もちをついていると
「死ねーーーガキめ!」っとイタカレにランスを突き刺そうとしていた黒騎士の腕が胴体から切り離された。
「イタカレ下がりなさい。あんたじゃ無理!」
「ヨナ……」
右腕をヨナに斬り落とされた黒騎士が何事もなかったように左手でヨナの首を締めあげると、リナが黒騎士の喉元に薙刀を突き刺した。
そこへ迫りくる黒騎士に、結衣が信じられない高さに跳躍し回りながら薙刀を振り回すと黒騎士の二つの首が転げ落ちた。
しかし、結衣が着地した所を狙い突き出されたランスに結衣の体は宙を舞った。
「ユイ姉~~~」っとイタカレの悲鳴が戦場に響き渡る。
更に結衣に追い打ちをかけようと、突進した黒騎士の馬が弓矢で貫かれ悲鳴を上げて崩れるように転び、落馬した黒騎士の胸が槍で貫かれた。
結衣を抱きかかえている黒い影は
「ユイは大丈夫だ。不死身って噂は本当のようだな」
疾風のトロイカ三兄弟、剣の達人ガイア万人長、槍の達人サイヤ千人長、弓の名手ダイヤ千人長が助っ人として入ると結衣は
「ここで一気に蹴散らすよー!」
「おいおい本当に大丈夫なのかよ~今ランスで貫かれたばかりじゃねーか」
と、ダイヤが上機嫌な表情で呟く
(ユイ、ジークベルトが逃げ出そうとしているぞ)
(うん。わかった)とコンサに念じると結衣は大声を上げた。
「黒騎士は、私と疾風のトロイカ三兄弟で何とかするから、リナとイタカレは、ジークベルトを討って!」
リナは後ろにイタカレを乗せて、遠回りになるが一旦下がり弧を描くように馬を走らせ、ジークベルトを取り囲む集団に薙刀を振り回しながら突入し人垣を薙ぎ払うと、ジークベルトの姿が見えた。
「イタカレ行きなさい。ジークベルトを討つのよ!」
イタカレは馬上からジークベルトに向かって思いっきり飛び跳ね、薙刀を振り下ろすと、ジークベルトの剣に阻まれ真っ二つに折れて刃は真上に高く弾き飛ばされた。
「ガキが調子に乗るは早いんだよ、死んでから後悔してろ!」
ジークベルトがイタカレに剣を振り下ろすが、間一髪でその剣を躱すと
「ちっ! まだまだーー」
イタカレはジークベルトのみぞおちを蹴り上げ、思わず屈んだ背中に、弾き飛ばされた薙刀の刃を梟のコンサが少し軌道を変えるとジークベルトの背中に突き刺さった。
「うぐ、こんなガキに討たれるとは……ぐは……」
「はぁはぁはぁ……、やったか……」
イタカレは、両膝を手を付き呼吸が荒い
すると、リナが
「イタカレちゃん、やるじゃない。見直したわ」
「えへへ、もう認めてくれるかな?」
「まぁ運も実力の内って言うしね」
「運じゃねーよ」
「えっ? じゃ計算して背中に刃を落としたの?」
「……そうじゃないけど……」
「まぁいいわ、頑張ったねイタカレ、もう誰も半人前扱いはしないよ」
「ジークベルト将軍が討たれたぞー!!!!」
「黒騎士団も白い悪魔相手に全滅したぞー!!!」
「に、逃げろおおおおおおおおおおお」
「逃るんだあああああああああああ」
ジークベルトを警護していた兵士達が大声を挙げながら北へ向かって、逃げ始めると、それは徐々に伝播して行き帝国は大きな塊となって北へ撤収を始めた。
正面から帝国軍とやりあっていたボルディ万人長もその異変に気付いた。
「ふぅ……ユイ達がやってくれたようだな」
「ボルディ万人長! 追撃を始めますか?」
「いや、それは無理だ。我が軍も戦える兵は半分以下になっている。帝国もかなりの被害は出ているが、まだ我が軍より多い」
「それでは勝鬨を上げて、戦いを終わらせましょう」
「うむ、ユイ達に申し訳ないがやらせてもらう。」
ボルディ万人長は、剣を収め息を大きく吸ったあと
「王国軍の勝利だ! えい、えい、おー」
「「「えい、えい、おー」」」
「「「えい、えい、おー」」」
「「「えい、えい、おー」」」
「「「えい、えい、おー」」」
満天の星空の縁が、ほんのわずか白んできた平野に王国軍の雄叫びが鶏の鳴き声代わりに鳴り響いた。
丘の上の柵に囲われた陣の中で、戦いの様子を眺めていたダニエラとシーノは、王国軍の勝鬨が聞こえてくると
「終わったのかな?」
「うん。王国軍が勝ったみたいだね。」
「ユイ姉達大丈夫かな?」
「ユイ姉は、強いから大丈夫だと思うけど、イタカレが心配だな」
それを聞いたシーノは
「えーっ! イタカレ死んじゃってたらどうしよう……」
「ユイ姉が守ってくれてると思うよ」
そこへ来たサナが
「これからは、私達の戦いよ。無駄口叩いてないで、負傷者の手当てをしに行くよ。」
「「はーい」」
「今日はきっと寝られないからね。覚悟しなさいよー」
「……今晩だって、ご飯用意していて寝てないんですけど……」
「泣き言は言っても無駄よ」
「……、……」




