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JK戦記(前編)  作者: 石屋さん
運命
35/49

藤沢伸


 薄暗い部屋で計測機器のLEDが、星空のように輝いている大学の研究室で、藤沢伸は、量子テレポーテーションの実験をやらされていた。

 複雑な理論の検証ではあるが、やってる本人は単純作業の繰り返しである。

 眠気覚ましにコーヒーでも飲もうと、電気ケトルの電源を入れると


 バンッ!と、言う音と共に全ての機械の明かりが消えた。

「やべ! ブレーカー落としちゃっ……」

 と、言い切る前に、伸の体はそのままどこかに落下して、その意識は消えた。


「で、気が付いたら森の中だったんですよ。そこからたどり着いた村で小作人として働かせて貰ったんですが、隣村との争いに巻き込まれ武勲を上げてると、帝国軍からオファーが来たので、小作人よりはましな生活が出来ると思い入隊したんですよ。」


 伸の話を頷きながら聞いていた結衣

「私も生きて行く為に、国王軍に入ったから同じね。」

「結衣さんは、武道か何かやってたんでしょ?」

「はい。子供の時から古武道をやってました。」

「僕は、武道どころか運動もまともにやってなかったから、戦士じゃなくて、軍師としてやってます。」

「そうなんだ。」

「この世界の人は、あまり戦で情報を重要視してないじゃない?」

「そうですね。」

「だから僕は地形や天候、敵の編成や兵站まで調べて戦いを導いてたら、帝国のジークベルト将軍の目に留まり、抜擢されたんだ。」

「ジークベルト将軍……知ってます。もしかして、反乱軍の戦いに伸さん参加してました?」


「途中までね……一度失敗したら、更迭されたんだよ。」

「失敗したんですか?」


「……僕は、農民解放軍の立ち上げから参加してたんだ。」


 国境警備隊の隊長だった伸は、芋の不作で飢饉に陥っていた。王国西部の農民達を煽り蜂起させる事に成功すると共に、普段から良好な関係を保っていた王国の国境警備隊をそそのかし、農民解放軍を立ち上げた。


 その農民達の多くを国王軍に忍び込ませ、国王軍の動きを把握すると共に。時には内部から反乱を起こさせ、戦局を有利に進め支配地域を拡大していった。


 その手腕は非常に評価され、常勝の天才軍師ともてはやされるが、これが後から考えるとジークベルトの嫉妬心に火を灯していたようだ。


 国王軍で一番の脅威である騎兵隊を殲滅する為に、罠を仕込んだ場所へ騎兵隊を上手くおびき寄せ、火炙りにする予定であったが、逆に殲滅されてしまった。

 この作戦の失敗により、ジークベルトに王都へ帰還し元老院への報告を命じられ、伸は二度と国王軍との戦に戻ることはなかった。


「まぁ白い悪魔さんが出て来なかったら、全て上手く行ってたんですけどね。」

 と、伸は自嘲的な笑いを浮かべた。


 結衣は結衣で何か思う所があったようで

「それで最初の頃は、やることなすこと上手く行かなったのね……」

「そんな事はないでしょう。私の作戦は全て白い悪魔さんに阻まれましたから」


「……初陣で待ち伏せにあい、敵の裏をかいて奇襲すると逆に罠の中に入っていったりと、散々な目に合ったわよ。全部、伸さんのせいだったのね……」


 二人の間の微妙な空気を変えようと結衣が

「でも、伸さんは出世とか目指している訳じゃないんでしょ? 街の人達にそう聞いたわよ」

「そうですね。ある程度のお金を貯めてまったりと暮らしたいですが、そこまでの褒章は貰ってないので仕方なく国境警備隊をやってるですよ。皇帝直属軍だと、帝国内の争いにしょっちゅう駆り出させるので……」

「そうなんだ。伸さんは正当な評価を貰えなかったのね。」

「その点、結衣さんは、王国の英雄としてたっぷり褒章貰って優雅に暮らしているそうじゃないですか。」

「そんな情報が帝国まで行ってるのね。」

「そりゃそうですよ。でも、なんで帝国内の盗賊退治をしてるんですか?」

「縁あって頼まれて仕方なくですよ。これが終わったら王国へ戻ります。」

「そうなんですか、残念です。それじゃいつかまた戦うことになるかも知れないですね。」

「やっぱり、帝国と王国の戦いは避けられないの?」

「そうですね。戦場に出る事がない元老院の代表達は、威勢だけはいいので……」

「皇帝の命令じゃないんだ?」

「ええ、帝国は結構民主的なんですよ。各国の代表で構成される元老院で政治が動きますから、皇帝は飾りですよ」

「へー政治システムは帝国の方が進んでいるんですね。」


「まぁ良い言い方をすると、各国の多様性は尊重して経済的には自由を認め合うってとこです。その変わりに帝国内の国同士の内戦はしょっちゅうやってるけどね。」

「内戦が多いのは知ってました。」

「それでたまに、共通の敵である豊かな王国と戦争することでガス抜きして結束を高めているんですよ。」

「やっぱり帝国から見て王国は豊かなんですか?」

「面積や人口が多くても山間部の帝国と広大な平野の王国とじゃ天地の差がありますよ。」



 伸と結衣が色々な話をしているうちに、盗賊団の住処の近くまで着いていた。

 盗賊団の住処を見下ろした伸は

「生意気に堀まで作って砦のようにしているな」

「だからもっと兵隊さん多く必要だって言ったじゃないですかー」


 伸は、結衣に「大丈夫。大丈夫」と言ったあと、部下に自陣の作成と周辺の地形の偵察を指示した。



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