運命の出会い
草地から跳ね返る日ざしが、かすかに陽炎のようにゆらめくなか、結衣はシーノと隣のビファ国に駐屯している、帝国と王国との国境を守る国境警備隊へと向かった。
ビファ国は、少し栄えているようで、街には屋台が並びもやもやと良い臭いの煙が立ち昇っているので、少し串焼きをつまんでから、街に一軒しかない宿に二人で泊まった。
「アルバド国と違って、随分と栄えてるのね。」
「お父さんが、昔はアルバド国にもお店もあったし、屋台も出てたって言ってたよ。シーノは知らないけど」
「へー、そうだったんだ」
「うん。人が減ってアルバド国で商売する商人がいなくなったからだって言ってた。」
「そうなんだ。なんで人が減ったの? 戦争とか?」
「解らないけど、今残っている人はあれでも地主なんだよ。昔は皆小作人を十人以上使ってたみたいだけど、小作人はみんな他に行っちゃったって」
「そっか、土地に縛られてる人だけが残ったんだ……」
「シーノは、アルバド国が好きだよ! でも、さっきの串焼き美味しかったな~」
「じゃ明日の朝も串焼き買って食べましょうね。」
「わーい。ユイ様は凄く優しい。」
翌朝、二人は串焼きを食べながら、国境警備隊に元へ向かった。
兵舎の門番に盗賊団のアジトを見つけたと伝えると、兵士は怪訝な顔をしたが、シーノの顔を見ると
「お前アルバド国の娘だよな。髪を短くしてるから、分からなかったよ」
「シーノを覚えてくれてたんだ。」
「ああ、良く働くいい子だと皆で話してたからな、じゃ隊長の所へ一緒に来て詳しい話をしてくれ」
兵舎の真ん中の粗末な小屋の前で兵士が
「シン隊長、盗賊のアジトを見つけたと言うアルバド国の者が来ております。」
「通せ」
「はい」
結衣の姿を見た国境警備隊の隊長は、固まってしまった。国王軍の白い悪魔と気付かれない為に、普通の服を着て、薙刀も持っていないのだが……
「スニーカー……」
「え!?」
異変を感じた兵士が
「隊長どうかしましたか?」
国境警備隊の隊長は、頭をブルブルっと震わせ
「何でもない。ちょっと寒気がしただけだ。風邪ひいちまったかな?」
と、ごまかすように言ったあと
「出てっていいよ。後は俺が話を聞く」
「承知しました。失礼します。」
兵士が出て行くと
「藤原伸です。」と、結衣に手を指し伸ばして来た。
結衣も戸惑いながらも、手を握り返し
「……宮島結衣……です。」
伸は、それ以上結衣に何か聞く事をせず、盗賊団のアジトに関して結衣から報告した。
「盗賊団は五百人程度で、深い堀に囲まれたアジトにいるってことか、それはなかなかやっかいだな。」
「はい。襲撃に来た時は、こちらが陣を作って追い返すことが出来たのですが、しっかりとしたアジトを作っていたので、帝国軍にお願いに参りました。」
「まぁ攻める側は、三倍の兵力が必要だが、ここには千人しか駐屯していないし、ここを空にする訳にもいかないので、出せるのは三百程度だな……」
「それでは少ないのではないですか?」
「盗賊だし、何とかなるでしょ、早速明日の朝出発しますので、道案内を頼みますよ。」
翌朝、シーノを駐屯地へ残し、結衣と伸は、国境警備隊三百名を率いて、盗賊団のアジトへと向かった。
結衣と伸が先頭となって進軍するなか、伸が結衣に話しかけて来た。
「やっと、ゆっくり話せるね。結衣さん」
「は、はい……」
「結衣さんは、どうしてこの世界に?」
(わしのことは言わんでいいぞ)
結衣は、コンサに言われ、少し考えたあと
「ん……、良く解りませんが、神様的な人に連れて来られたって感じですかね」
「ほう……、ラノベによくある。間違って死んじゃったから、別の世界に行くって感じ?」
「いえ、死ぬ前に助けて貰った感じかな~ 伸さんは?」
「僕は、大学で量子テレポーテーションの実験をしていたら、僕がテレポーテーションしたみたいだった。まぁ僕も良く解ってないんだ」
「へー神様的な関与は、なかったってことですか?」
「そうだね。逆に信じられないよね。」
「伸さんは、研究者だったのですか?」
「いや、教授の為に、単純な実験・観測を機械的にやらされてるだけのただの学生だったよ」
「あっ伸さんは、いつ日本からこの世界に来たんですか?」
「僕は、2015年の秋だったかな?」
「あー時期が全然違う……私は2019年の春です。」
「結衣さんは、何故兵士になって、国王軍の白い悪魔って言われるまでになったの?」
伸がやっと核心に迫る質問をしてきた。
「やっぱり、そこまで解ってたんですね。」
「僕は、前線には行ってないんだけど、軍師として参加してから、ヘンテコな服を着て薙刀を使う、異常な身体能力がある女と聞いたら、僕と同じ日本からの転生者だと解ってたよ。」
「そうですか……あの戦いに参加してたんですね」
「そこにスニーカーを履いた女の子が来たんだから、結衣さんが国王軍の白い悪魔だって解るさ。」
「私が国王軍に入ったのは、たまたまです。たまたま寄った集落で反乱軍が住民から最後の種いもを奪おうとしてたので……自分の身を守る為に倒しました。あとはもうこの世界で生きて行く為に流れに沿って感じです。」
「そうか残念だね。逆だったら、結衣さんは帝国軍に入っていたかもしれないね。」
「うーん。帝国軍には良いイメージを持ってませんが、それはお互いさまかな? どこにも悪い人も善い人もいますからね。」
「でも、結衣さんは、あっという間に国王軍の重責に上り詰めたよね。」
「たまたまです。巡り合わせですね。伸さんは、どうやって国境警備隊の隊長まで成られたのですか?」
「僕は、何年も掛かったよ。結衣さんと同じで生きて行く為に、必死だったんだ。最初この世界に来た時は…………」
伸は、自分のこの世界での顛末を結衣に、話し始めた。




