第6話 一緒に遊ぼう
お茶会の後、書斎に戻ったクラロは書類を手に取った。
(……A案とB案か……。……B案が効率がいいな。A案も悪くはないが……)
彼は小さく息を吐く。
(……私は、B案がいいと思う)
クラロは印を押した。書類が一枚進んだ。
一枚、また一枚とクラロは選んでいく。
「……式典会場の装花か……。……赤と青なら……青が好き……だな。よし、青にしよう」
ものによっては自分の感覚で選ぶ。少しずつ書類の山が消えていく。日が傾いた頃、あれほど高い山を築いていた書類がなくなっていた。
「……終わった?」
ここ最近全く進まなかった仕事が終わっていた。
◇
ディーア王国を訪ねていた時からのスランプがなかったように、何事もなく日々が進む。そうしてまた、交流のためのお茶会が近づいてきた。
「クラロ殿下。今回のお菓子はどういたしましょうか?」
城のパティシエが問いかける。クラロはしばらく考えた。
(イルシオンは、どんなのが好きだろうか……。彼女の嘘には、お菓子の動物たちが登場していたな……)
「動物を」
「動物?」
「ああ。お菓子で動物を模せないか?」
パティシエは一瞬だけ目を見開く。そして、こくりと頷いた。
「承知いたしました」
「頼んだ」
パティシエは「では、試作をしてきます」と厨房へ戻っていった。
数日後のお茶会でのこと。ケーキスタンドには白鳥のシュークリーム、ウサギの耳がついたカップケーキ、猫の顔が描かれたマカロンなどが並んだ。イルシオンはお菓子を覗き込み、笑顔をこぼす。
「あら? 今日のお菓子、かわいいのね」
「……気に入ってくれたのなら、よかった」
クラロはそう言いながら、椅子に手をかける。しばらく動きを止め、そして、おずおずと口を開いた。
「……ババロアの湖を、シュークリームの白鳥が、泳いでる」
「……えっ?」
イルシオンは瞬きをした。顔を上げる。彼は視線を逸らして頬をかいた。
「……君の真似をしてみたんだ。……どう、だろうか」
「……クラロの嘘、とっても素敵」
彼女は満面の笑みを浮かべてそう答える。そして、少し視線を上に向け、クラロを見た。
「ねえ、クラロ。一緒に遊ぼう? イル、クラロの嘘、聞きたい」
イルシオンは無邪気に笑う。クラロは顎に手を当て、視線を緩めて口を開いた。
「……分かった」
彼は小さく頷いた。
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