第14話 空想と合理
正妃が蟄居した翌日のこと。クラロはなんとか時間を作って妃教育に顔を出した。
「調子はどうだ?」
「あ、クラロ! 今ね、ラヴィーン谷問題について考えてたの」
イルシオンはニコニコ笑う。
「食料問題か。流通路の断絶による貧困だったか」
「そう。イル、いっぱい意見を出したんだ」
「へえ、どんな意見だ?」
彼女はニコニコ笑って手を広げた。
「風船で食べ物を飛ばす」
「君らしいな」
「そうかな。あとは、橋をかけるとか。ハングリー村で食料を作る、橋を軽い素材で作る、ロープで繋いじゃう、とか」
「ロープで繋ぐ?」
「うん。ロープで繋いで、籠を引っ掛けて、向こう側に押すの!」
クラロの動きがぴたりと止まった。
「……橋の代わりに、ロープ」
「そう。運べればいいんだから」
「……橋をどうかけるかというのを考えていたが、そもそも橋でなくてもいい、のか……」
「クラロ?」
「ああ、すまん。……ちょっと、迷っていることがあって」
「迷って?」
「……イスラという都市なんだが、小島群に都市が形成されていてな。魔石の鉱山が点在していることがわかったんだが……島同士の距離がまちまちだ。橋を架けるには数も距離も多すぎる」
「鳥さんに運んでもらうとか?」
「指示が難しそうだな」
「短いところだけ繋げたらいいのにね」
クラロの動きが止まる。
「短いところ、だけ……」
「そう。いろんな橋をかけたら面白そうね」
「……そうか。全ての島を繋ぐ必要はない。全て同じ橋である必要はない。……近い島同士だけを結び、流れを作ればいいのか。……すまない、紙とペンを借りてもいいか?」
紙を受け取ると、クラロは迷いなく線を引いた。島を点で置き、短い距離同士を繋いでいく。
「この海峡は風が強い。トラス橋が安定するか。……こっちは距離が長い。風が安定しているなら吊り橋も選択肢に入るか。こっちは桁橋で十分だろう」
輸送路が組み上がっていく。
「それ、蜘蛛の巣?」
「輸送ネットワーク、だな」
「蜘蛛さんが運んでくれるの?」
「運ぶのは人……いや、自動化するのも悪くはない。……動力は……魔石の屑が使えるか」
クラロの口角が上がる。
「……クラロ、楽しい?」
「……楽しい、のか……?」
「うん。楽しそう。小人さんも喜んでるよ」
脳裏に、いつぞや見た『考え事を運んでくる小人』たちが現れる。彼らは私を取り囲み、ぴょんぴょんと跳ね回る。中心にいる私は、生き生きと笑っていた。
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