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魔法使いメルトの物語  作者: 奈々宮 紬
夢消滅の襲撃者
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捌拾壱話.再会

『うん、もう大丈夫だと思うんだよ!』

「わかった。」


俺はシャーノに魔力線を繋げるテストの最終チェックをしてもらっている。最初は1キロメートルどころか100メートルも無理なんじゃないかと思っていたが、今となっては1.5キロメートルぐらいならなんとか届くようになった。


「......で、この通信が出来ている理由を教えて欲しいんだが?」

『そんなの簡単なんだよ!』


ある時から俺とシャーノは魔力線をつなげているときに限り、このように離れていても会話できるようになった。声に出す必要があるからいわゆる心話とかではないと思うが......。


『精霊術のために私がメルトの魔力を受け入れたからなんだよ!』

「受け入れた......?それってどういうことだ?」

『簡単に言うと、私の体にもメルトの魔力の一部が流れているってことなんだよ!』


ふむ、つまり、俺の魔力が俺とシャーノの体の両方に流れてるから謎の魔力パワーで便利機能が使えてるってことだな。もうこれ以上考えても無駄のような気がするし、これくらいで納得しておこう。


「で、チェックも完了したし、今からでも転移魔法陣を使わせてもらいに行くか?」


今は朝の8時ぐらい。時間としては十分だろう。

ちなみに、昨日、Aランクでも転移魔法陣が使えることをギルドで確認済みだ。


『うん、そうするんだよ!今から戻るんだよ!』

「了解。」



しばらくするとシャーノが宿に戻ってきた。


「じゃあ、行こうか。」

「うん!」


俺とシャーノはギルドへと向かう。別に魔王に喧嘩を売りに行くわけではないのに、なぜか緊張してきた。......書庫の本を見せてもらうだけ、ついでに魔王城に入れてもらうだけ............いや、“だけ”じゃない。よくよく考えれば十分横暴な願いなのでは?......いや、今更?って感じだけど。


そうこうしているうちにギルドへ着いた。


「では、こちらになります。」


説明するとすぐにメイさんが奥の部屋に案内してくれた。部屋の中には魔方陣があり、おそらくこれが転移魔法陣なのだろう。


「帰りはあちら側のギルドで“ギルドH”と書いてある魔方陣を起動すれば問題ありません。では、良い旅を。」

「ありがとうございます。」


メイさんが部屋を出て行ったあと、シャーノの指示で魔方陣に魔力を込めて行く。そして、気がつくと......



さっきまでいたギルドとは違う魔方陣がたくさんある部屋にいた。俺とシャーノが立っている魔方陣の横には“ギルドH”と書いてある。あぁ、メイさんが帰る時に使えと言っていた魔方陣が今いるこれか。


辺りを見渡すと、魔方陣の横には“ギルドA”とか“ギルドP”とか“ギルドU”とか色々なアルファベットが付いている看板があった。......もう少しネーミングはなんとかならなかったのだろうか。


「早く行くんだよ!」


シャーノは既に部屋に1つしかないドアの前に立っていた。


「分かった。」


俺もその前へ行き、ドアを開ける。


その先はメイさんがいたギルド......ギルドHと同じようにたくさんの人で賑わっていた。1つ違いをあげるというなら、その広さだ。ギルドHも結構な広さだったが、ここのギルドはその10倍はあるだろうという広大すぎる広さを持っている。......下手したら迷いそうだな。



「こっちなんだよ!」


ギルドを出た後、シャーノの案内で俺は魔王城へと向かった。......と言ってもギルドを出てすぐの森の中をまっすぐ進んでいるだけなんだが。


しばらく歩くと明らかに怪しい空気が漂い出す。そして、次の瞬間、魔物が襲ってくる。


「......弱いな。」

「魔王城周辺の魔物は高密度の魔力が行くあてを無くして動物の姿をかたどっただけのものだから、生物としてはものすごく欠陥が多いんだよ!」


つまり、普通は進化につれて最適の生き方へ近づいて行くのに、こいつらは進化なんか経験していないから力を使いこなせてない、と。......確かにそれは生物として色々問題だな。


「よし、じゃあこのまま魔王城へ......」

「メルト?」


なんか声が聞こえた気がする。


「シャーノ、呼んだか?」

「呼んでないんだよ!」

「その女の子じゃなくて、私が呼んだの。」


また声が聞こえた。


「誰だ?」

「私は......」


声の主は俺たちが進んでいた方向にある大木の影から現れた。


「私は............クローフィー。あなたはメルト、だよね?」

「......うん。」


......会いたかった人が急に出てくるとか聞いてない。なんかあの記憶が戻ってから会うと、なんとなく気恥ずかしい......でも、相手はまだ俺のことを敵だと思ってるかもしれない。


「何の用?メルトに危害を加えるなら......私が許さない。」


シャーノが口調を崩してクローフィー......いや、もう1人のメルトと対峙する。


「シャーノ?安心してほしい。私はメルトと戦うつもりはない。というか思い出しちゃったから、戦いたくないの。」


え?


「信用出来ない。あなたは一度、メルトを爆発に巻き込んだ。」


今、このメルトは......


「あれの原因は私にない。私も巻き込まれたの。」

「......思い出したって言ったよな?」

「うん......!」


シャーノに向けていた目を俺に向けた瞬間、2人のメルトは分かった。お互いがお互いを思い出して、あんなことがあっても、まだ信じ合ってることが。


「え......メルト......?」


シャーノの驚きの声は涙を流す俺たちには聞こえない。


「ごめん、メルト、本当にごめんなさい!」

「俺も、ごめん。気づけなくて。思い出せなくて、ごめん!」


つい、抱きしめたくなって一歩を踏み出しかけた。


「だめ、メルト。私たちが触れあったら......」


また爆発が起きるかもしれない。


でも、それでも、俺たちは2人で1つだった。実験体だった時、ずっとそうだった。


何かの拍子でまた爆発が起きてしまうかもしれない。


せっかく本当の意味で再会できたのに......一緒にいたいのに......


一緒いたらシャーノや、もしかしたらこの世界のたくさんの人に迷惑をかけてしまうかもしれない。


「なぁ、メルト、俺は、どうしたらいいんだ?」


この思考は言葉にしていない。でも、メルトには伝わっている。


「分からない、よ......どっちがいいかなんて......分からない。」


どちらかが勇気を出して選択しないと絶対に平行線だ。......俺たちは2人で1つだったから。


「メルト、俺は......

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