捌拾話.下準備
「まず、私とメルトの目的を整理するんだよ!」
「そうだな。それは必須だろう。」
心の内を吐き出し切ったシャーノはまた、前の口調に戻ってこれからのことを考えてくれている。もうすっかり前の調子だ。......俺も、引きずらないように頑張ろう......。
「私は妹のファーノを助けるために、手がかりを探すために魔王城の中に入りたい。でも、魔王城の結界は肉体を持たない人物の侵入を阻害する結界が張ってあって、私は入れない。だから、メルトの助けを借りて、中で魔力を追いたい。」
「俺はフーカを助けるために......あと、ある事情でクローフィーに会うために“血の民”と戦う力が欲しい。だから、魔王の書庫にある“解放の書”を使いたい。」
「なんでクローフィーに会いたいの?」
「......端的に言うと、俺の昔からの知り合いかもしれないからだ。......記憶は消されていたけどな。」
「分かったんだよ!」
さっき、シャーノはすっかり元の調子と言ったが、訂正しよう。前よりも、少しだけ素のシャーノを出してくれている。
「で、シャーノ、俺たちは今から何をすればいいんだ?流石にこのまま魔王城に殴り込みに行くのはまずいだろ?」
「そうなんだよ!物資は私が揃えるからメルトは精霊術の練習をして欲しいんだよ!」
「精霊術?魔法とは違うのか?」
「違うんだよ!」
「そうなのか......っていうか練習って言ってもどうやって?」
「それは......こうするんだよ!」
シャーノはいきなり俺の手を取った。......そういえばなんでシャーノは俺に触れるんだ?俺以外には触れられないよな?......不思議だ。
「今から私のメルトを繋ぐ細い魔力線を作るから意識して探して欲しいんだよ!」
「分かった。」
細い魔力線......魔力線......あ、これかな?それっぽい細い魔力がある。
「見つけたぞ。」
「分かったんだよ!じゃあ次はそれをずっと意識し続けて欲しいんだよ!」
「......?」
シャーノがそう言うと、少しずつ俺と距離を取っていく。あ......ちょっとずつだが、魔力線を流れる魔力が少なくなっていっているのを感じる。そして、シャーノが部屋の隅に行ったあたりで......
「途切れたんだよ!」
「......そうだな。」
魔力線は感じられなくなってしまった。
「......で、これの何が練習なんだ?」
「魔力線は2人の魔力両方が少しずつ魔力を出し合って出来ているんだよ!そして、魔力線は2人とも認識できる......つまり2人を繋げる糸になるんだよ!」
「繋げる糸があると何か便利なのか?」
「糸だけだと、互いの居場所が分かるぐらいだけど、これは精霊術をするためには絶対必要なんだよ!メルトにはこの糸を1キロメートル以上維持する練習をして欲しいんだよ!」
「......ん?1キロメートル?」
「そうなんだよ!」
今5メートルも離れずに切れたのに?
「......無理じゃないか?」
「魔神戦争の時代はみんな出来たんだよ!」
「いやその基準絶対おかしいからどう考えてもおかしいから。」
とはいえ、シャーノがやる必要があるって判断したことだ。絶対に成功させよう。今までシャーノに頼りすぎていたしな。
「まぁでも、努力する。だから、シャーノは心置きなく他の準備をして欲しい。」
......これでいい。今度は俺も頑張らないと。
「......ありがとう、なんだよ!」
この笑顔も見れたことだし。
......俺って絶対シャーノが好きだよな。




