質拾捌話.最終章への橋渡し、もしくはサクシャの接触(1人目)
「やっと起きたか。」
「ブラッドも大概暇だなぁ。」
「減らず口を叩く余裕はあるんだな、56番さんよぉ!」
辺りを見渡す。ここは......牢屋かな。しかも、かなり強固っぽいね。
「あーやめて。私、戦うの好きじゃない。」
「舐めたこと言いやがってくそがっ!どうせ処刑なら今殺したって......」
あーやっぱり私、殺されるんだ。
「で、ブラッドさんはこんな所で何を?」
「お前が起こした爆発の責任を取らされてるんだろうがっ!」
「あー、ごめん。」
っていうか、なんで爆発したんだろ?
あれは私も想定外......。
こんなに不安定ならさっさとこんな場所、逃げた方がいいかな。
「やっと交代の時間だ。絶対殺してやるからな!」
ブラッドが出て行く。警備、ザルだなぁ。逃げちゃうよ?私。
あれ?
誰も来ない?
何で?
「僕が時間を止めたからだよ!」
「誰?」
気配が急に現れた。
「あなたは一体何者?」
「僕はサクシャだよ!あ、そうは言っても今の記憶は後で全部消させてもらうけどね!」
「記憶消去......?それは天啓?それとも、能力?」
「んー、その二択なら能力よりかな?」
「つまり、どっちでもないってこと。」
「ま、そゆことー!」
この人は本当に何者だろう。何も感じない。でも、確かに強いのだろう。この人によって本当に時が止められているのだから。
「で、サクシャさん、何の用?」
「まず、1つ。これ、君の石だよね!」
「それは......うん、私の“石”」
あれが壊されると、私も死ぬ。そういう契約をブラッドと交わした。......いや、交わされた。あれがある限り、私たちは逆らうことは出来ない。
「これ、僕が貰ってくね!」
「え?」
「ま、この記憶は残らないから後で君はびっくりするだろうけどね!」
この人......何が目的だろ?全く分からない。私をコントロールして何かいいことでも......。
「で、2つ目。別に僕は君の計画を邪魔するつもりはないよっていう情報。」
「......それはありがとう。」
「お、すぐにお礼が言える人、嫌いじゃないよ!」
なぜだろう、この人と話しているとすごくイライラする。......本当になぜだろう?
「でさ、最後だけど......“夢変化”!」
......これ、ヤバいやつ......意識............飛ぶ..................
「ごめんごめん!まぁ聞こえてないと思うけどさ!ってか聞こえてても今から記憶消すから意味ないけどね!さてさてー、僕は僕の仕事をやりますかー!」
「これでよしっと。僕の記憶は消えたね!あとは彼女の自己治癒力にかけるかなー、綺麗に記憶が戻ってくれるといいけど......あー、メルトとの関係を思い出した時、クローフィーはどんな顔するかな!想像しただけでゾクゾクしちゃうよね!」
「それにしても、僕の権利を少し削った人って誰なんだろ?今回の登場人物にそれっぽい人はいないし、外部からの侵入者でもないっぽいんだよねー!あ、そうだ!ねぇ、読者さんたち!それっぽい人見なかったー?変な登場人物とかー、物語の齟齬とかー、その他もろもろの変なこと起こってなかった?」
「教えてくれないんだね!まぁ、いっか。君たちの協力なんか無くても僕が解決してみせるよ。なってったって、僕はサクシャだからね!あー、こんなことになるからサクシャである僕が色んな人に“接触”しなきゃいけない事態になるんだよねー!あー、こういうことされると本当に困るなー。」
「メルト......?私と戦ってた、あの人がメルト?それとも、私自身が......。」
頭がクラクラする。この記憶は......?
「............なるほどね。なんで思い出したかは全く分からないけど、この記憶は計画に矛盾しちゃう。」
この計画は私がこの世の全てを壊すというもの。でも、私の中には研究所の命令よりも深く、メルトとの楽しい日々が刻まれている。
「おい!56番の“石”がないぞ!お前らちゃんと見張ってるんだろうな!」
その声に反応したのは檻の外にした“血の民”のメンバー。
「まさか......そんなはずは!確かに56番はここにいる!」
あー、そういう情報渡されると、私も逃げたくなるなぁ。もうここにいる意味は果たしたし、隙を見て裏切ろうかと思ってたけど......計画を果たすにしろ、果たさないにしろ、私は多分ここから逃げるべきだ。
この檻は硬さよりも壊れにくさを優先して、ある一定の伸縮が出来る金属で出来ている。......つまり、私の能力で脱出できる。
「“夢消滅”」
「あ!おいっ!待て!!」
檻を抜け出して私は走る。時には能力を使って逃げる。もう、こんなところに拘る必要はない。私は、地図を手に入れた。これさえあれば、計画が実行できる。......今は迷ってるけど。
「この辺でいいかな。」
ここは、魔王城やギルド本部にほど近い森。魔物なんかはウジャウジャいるけど、人はあまり入らない。つまり、私にとっては安全地帯。
さて、これからどうしよう?




