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魔法使いメルトの物語  作者: 奈々宮 紬
夢消滅の襲撃者
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質拾質話.予想外、そして懺悔

「それは本当か?」

「うん!」


寝て、起きたらギルドランクがAまで上がっていたなんてことはあるだろうか。


「ちなみにどうしてあげてくれたとか......」

「ギルドマスターが“シャナワース”亜種の討伐を称えてくれたんだよ!」

「それにしても上がりすぎだろう......。」


そもそもあの“シャナワース”には負けたし。一瞬で眠らされて......勝てるわけないだろう。


「ちなみに、それを誰に教えてもらったんだ?」

「ギルドマスターが直接伝えにきたんだよ!」

「えぇ......。」


どういうことだ......全く分からない。


「多分、私たちには分からないところで大きな力が動いたんだよ!」

「まぁ、それしかないだろうな。」


俺のギルドランクが上がって得する人物?......ダメだ、1人も思い浮かばない。


「っていうか、その口調に戻すんだな。」

「メルトが知ってる私はこっちの私のはずなんだよ!」

「それはそうだが。」


まぁ、急に口調を変えられても違和感しかないからこれでいいか。俺としてもこっちの方が慣れてるし。


「......って、Aランクあればギルドの転移魔法陣を使わせてもらえるんじゃないか?」

「んー......微妙なところなんだよ!」


ギリギリいけるかいけないかってラインなのか。......それなら、俺の答えは決まっている。


「とりあえず、ギルドに行って聞いてみようか。もし、ギルドマスターがいれば俺のランクアップの件も聞きたいしな。」

「うん!そうするんだよ!」

「じゃあ、今から......っていう時間ではなさそうだな。」


空は既に夕焼けも終わり始めている。......俺ってどれくらい寝ていたんだろう?


「魔王の書庫に行くなら準備も必要なんだよ!だからギルド行きはもう少し先にするんだよ!」

「あぁ、分かった。」


さて、食堂でゲイルさんたちに晩御飯を食べさせてもらいに行くか。


「あ、あの、メルト......」

「何だ?」


食堂に行こうと、ドアノブに手をかけたあたりでシャーノに呼び止められる。


「実は私、まだメルトに隠してることがあるの......」


......口調がいつものシャーノではない。シャーノの本心からの言葉が出るのだろう。


「言いたくないなら無理に言う必要は無いと......」

「それでも、私はメルトに言っておきたい。」


シャーノの目はとても真剣だ。こんな目をされたら、なぁ......


「......分かった。聞かせてほしい。」

「うん、ありがとう。」


俺と向かい合っていたシャーノは俺の横に座りなおした。


「実は、私も異世界人なんだ。」

「......え?」

「私は、妹と一緒にこの世界に来たの。」

「......。」

「私たちはこの世界に来た時、何らかの力を受けたみたいで、私には治癒の力、妹には破壊の力が宿ったの。」


「ある時、魔神戦争......魔王を崇める種族と、神を崇める種族の戦争が始まったんだ。主には魔族対人族になったけどね。」


「考えなしに能力を使いまくっていた私たちは、もちろんこの戦争に参加した。能力の関係で、私は人族の営地で治癒を、妹は最前線で戦闘をしたの。」


「最初、私たちがいれば負けることなんて絶対にないと信じていた。......おそらく、人族の中では私たちが最強だったから。でも、予想外に魔族は強かった。最初は推していた人族もすぐに反撃を受け、敗走してしまったの。」


「最前線で戦っていた私の妹はついに帰らなかった。死体すら持ち帰られることは無かった。話によると、どうやらいつのまにか消えていたらしいんだ。」


「森に迷ったか、魔族に殺されたか、洗脳されたか、理由は分からなかったけどただ1つの事実だけが残った。......私の妹は帰らなかったという事実が、ね。」


「妹が居なくなった私は意識を手放した。もう、どうにでもなればいい、そう思ったの。その結果、私の治癒の力は暴走し......人族の体力を永遠と回復し続ける機械になったんだ。」


「でも、そんな力の使い方をしてまともに生きていられるはずがない。永遠の体力を手に入れた人族が魔族に勝ち始めたころ、私は死んでしまったの。」


「そして、次に目覚めたのが400年後。種族が精霊に書き換わっていたけど、手放したはずの意識はあった。そして、精霊には1つだけ能力があったんだ。」


「精霊は特定の人物の魔力を追うことが出来ると知った。精霊は私が生きていた時は未知の種族だったから私は精霊になって初めて知ったけど、ね。」


「私は早速妹の魔力を追った。400年経っていたからなかなか追えなかったけど、やっと魔力が途切れる場所を突き止めた。」


「私の妹......ファーノの魔力が途切れたのは、魔王城。でも、魔王城には侵入対策として思念体は絶対に入らない結界が張られているの。だから、私にはどうしようもなかった。」


「......だから、私は魔王城に入れる代役を立てようとした。でも、誰も私の話なんて聞いてくれない。そもそも、誰にも私は見えてなかった。」


「それでも、諦めきれずに探し続けた。いつしか私は、同族である異世界人を探すことにした。魔力の違いで異世界人かどうかは判別出来るから。どうせ、騙すのならよく分かっていない異世界人の方が適任だ、って思ったから。」


「そして、ある日、1人の男の子が私の姿を確認した。それが......メルト。だから私はメルトを騙して魔王城へ連れて行こうと思った。」


「でも、少し調べると、絶望的なことがわかった。今、人族の力はかなり衰退していて魔王城に行く方法はギルドの転移魔法しかない、と分かったから。......だから私はメルトを強くしようと思った。特別冒険者になってもらって、転移魔法陣が使えるようになってもらうために。」


「私はメルトを最速で強くしようとした。それでも、かなりの時間がかかることが分かり、少しだけイライラしていた。」


「その時、ある人に会った。会ってしまったの。彼女はこう言った。“復讐なんか、何も生まないのに”って。多分それは私に向けた言葉じゃない。私がだいぶ離れてから独り言みたいに呟かれた言葉だったから。でも、それでも、私の心に深く刺さった。私はメルトを使って何をしようとしていた?そんなこと、ファーノが望んだの?って。」


「そして、私は罪悪感がこみ上げた。メルトを道具としか見てなかった私に恐怖すら感じた。だから、全部、やめにしよう、これからはメルトのためを思って生きようと、そう思ったんだ。」


「でも、そんな時、メルトが魔王の書庫に行く理由が出来てしまった。計画をやめた途端、また計画の筋書き通りに進んでしまった。そして、私は......そのことを心のどこかで嬉しく思ってしまった。」


「私は私を嫌った。どうしようもない自己嫌悪に陥ってしまったの。そして、心を入れ替えたのはいいけど、何もメルトに話してないことに気づいた。日に日に、その想いは強まっていった。」


「そして、メルトが“シャナワース”に眠らされた。メルトが死んでしまったような気がした。取り返しのつかないことをしてしまったって思ったの。だから、メルトの目が覚めた時は本当に嬉しかった。本当に嬉しかったの。」


「これで伝えられる。これで苦しみが終わる。そう思った。でも、私はもう一歩のところで勇気が出なかった。私は逃げてしまった。伝えることが怖かったの。......卑怯な言い方で許しを得てしまった。何も説明しないまま、私は許されてしまった。」


「でも、今になってやっぱり苦しくなって、こうして全部話した。私は卑怯で、絶対に許されるべき人物じゃないって分かっていながら、やっぱりメルトの本心から許されたかった。」


「......これが私の言葉。これが私の想い。」



正直、驚きすぎて、頭の整理がついていなかった。でも、こういう時、どうすればいいかは察しがついた。


「......へ?」


俺はシャーノを抱きしめた。


「さっき抱きつかれた分のお返しだ。」


「私を軽蔑しないの......?」


「軽蔑なんかするもんか。どんな想いだったかは知らないが、結果的に俺はシャーノに強くしてもらって、今、シャーノは俺を思って行動してくれている。それで十分だよ。」


「本当に軽蔑してない?無理してない?私のこと、本当は......」


「じゃあ聞くけど、魔王がフランクだって俺を安心させようとしてくれたのは嘘の言葉か?」


「あれは......本当だよ。戦場で会った魔王様は本当に優しい人だった。」


「ほら、俺のために正しいことを教えてくれてるじゃないか。」


「言葉を1つだけ取り出されても、納得なんて......私はメルトに例えばこんな嘘を......」


「今は言わなくていい。今は、もう無理しなくていいから。だから俺を導いてくれないか?フーカを助けるために。クローフィーを調べるために。」

「......ありがとう。」


今度のシャーノは泣かなかった。


「うん!分かったんだよ!」

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