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魔法使いメルトの物語  作者: 奈々宮 紬
夢再生の魔法使い
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陸拾捌話.ラマダ子爵

ラマダ子爵邸周辺の宿に泊まり、一夜明けた今日。


「ここ、だな。」


豪邸とまでは行かないが、普通の建物よりも豪勢な建物の裏側に暗く広がる森がある。おそらくここが、“シャナワース”のいる森だろう。


その森に近づいてみると、何やらロープが張ってある。そのロープには、


“この森の立ち入りを禁止する ラマダ”


と書いてあった。


「入るためにはラマダ子爵の許可がいるってことか?」

「多分そうなんだよ!」


ローシュ伯爵のせいで感覚が麻痺しかけているが、子爵でもれっきとした貴族だ。......会うのは気がひけるな。


「......と、いつまでも言ってても始まらない、か。」


とりあえず、俺は玄関のドアをノックする。


少しすると、髭をピンと伸ばした小柄な男が出てきた。


「ここは、ラマダ子爵邸で合ってますか?」

「いかにも、私がラマダだ。君はもしや、指名依頼を受けてくれた冒険者かな?」


子爵の身長は俺とさほど変わらない。150センチメートルもないんじゃないだろうか。


「そうです。“シャナワース”討伐の依頼を受けさせていただきました。森への進入許可を頂けませんか?」

「うむ、それくらいは出してやるが、立ち話もなんだ。少し上がって行きなさい。遠慮は不要だぞ。」

「......分かりました。」


こういう誘いは断らない方が良さそうだ。



「“シャナワース”がひと月ほど前に現れてから、私の家族が次々と眠らされていてね。」


子爵は俺を椅子に座らせると、“シャナワース”を討伐したい理由を話し始めた。


「まず、私の妻が眠らされた。そして、使用人が次々と眠らされていき、つい1週間ほど前に私の一人息子も......幸い、誰も死んでなどいないが、このままでは私もいつやられるか......」


......これって結構深刻な事態じゃないか?


「“シャナワース”は本来、気性が荒いんだよ!半端に眠らせるだけなんて聞いたことないんだよ!」


それを踏まえると、“シャナワース”は眠らせるだけじゃなくて、まだ何かするつもりの可能性もあるってことか?


「私もバカじゃない。なんとか自力で討伐しようとしたんだよ。使用人を3人、そして大柄の冒険者も引き連れて、森へ入ったんだ。しかし、結果は最悪でね。連れて行った使用人のうち、1人は眠らされて残りの2人も幻惑を見せられたせいで仕事が出来なくなってしまったんだ。あとで連れて行った冒険者が眠らされてしまった使用人の体だけは回収してくれたが......もう、この依頼は嫌だと帰ってしまったよ。」


この様子だと本当に深刻だな。俺も、負けないだろうか。......色々聞いてみるかな。


「それから色んな冒険者が受けにきた。だが、今までの4人はみんな失敗している。もし、君も失敗したら私は国に依頼しようと思ってるんだ。」


「あの、その“シャナワース”について分かってることが少しでもあれば教えてくれませんか?」


「うむ。分かっていることはそんなに多くない。普通の“シャナワース”と違って、状態異常の魔法しか使ってこないこと。そして、普通の“シャナワース”よりも臆病であるということ。最後に、全身が真っ白だということだ。」


あれ?確か、シャーノは......


「“シャナワース”は全身真っ黒のクロネコのはずなんだよ!白いなんて......おかしいんだよ!」


だよな。それってつまり......亜種的な何かってことか?


「私が掴めた情報はそんなもんだ。ちなみに仕掛けや罠なんかは無駄だったな。あとは......君に任せる。......そういえば、名前を聞いていなかったな。今更で悪いが、君の名前を教えてくれないか?」


「メルトです。」


「そうか、メルトか。......では、メルト、あとは頼んだ。」


「はい、頑張ります。」


せっかくのランクアップのチャンスだ。できる限りの手を尽くそう。



「私も頑張るんだよ!」

「あぁ、よろしくな、シャーノ。」

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